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SPSS製品 導入事例探求 第21回 大地編
会員ビジネスには欠かせない“顧客を知る”ための極意
〜豊富な購買履歴データを臨機応変に分析〜

株式会社大地 前川隆文氏

  「農薬公害の完全追放と安全な農畜産物の安定供給」を目指して、「大地を守る会」が設立されたのは1975年。以来、同会は、食や農、環境問題に関する市民活動にも積極的に取り組みながら、順調な発展を続けてきた。現在の消費者会員は約8万人、生産者会員は約2500人。消費者会員は、毎年1万人の新規入会があるという。

 「株式会社大地」は、同会の流通を担当する法人会員であり、安全な農産物、畜産物、水産物、加工食品、雑貨等を消費者会員に届けることを役割としている。今回は、同社における「Clementine」を活用したデータマイニングの取り組みについてご報告する。取材にご協力いただいたのは、株式会社大地 営業本部 販売企画グループ 販売促進チームの前川隆文氏である。

 
大地の生い立ち
 
   

 「大地を守る会」は、農薬を使わない安全な農産物を作ったものの、なかなか売れなくて困っていた生産農家と、安全な農産物を求める消費者をつなぐ活動が発端となっている。当初は、行商に近い形で消費者のところまで出向き、農産物を消費者に届けていたそうだ。そのうち、これが生協と同様の購入方法、すなわち、消費者がグループで一括注文を行う「共同購入」に発展していった。ただ、時代の変化に伴い、働きに出る女性が増加、昼間は不在がちとなったため、各消費者宅への個人宅配ニーズが高まっていく。

 その結果、現在は、共同購入は1割足らず、個人宅配(同社では、「大地宅配」と呼ぶ)が9割以上を占めているそうだ。また、個人宅配事業以外に、大手スーパーへの大地ブランドの卸売や、レストラン事業なども手がけている。

 「取扱商品も、立ち上げの経緯もあって最初は農産物が大半でしたが、“安全”を基本に置きながら、畜産物、水産物、加工食品、雑貨へと取扱カテゴリーを広げてきています。現在の取扱品目のうち、農産物が占める割合は3割程度です」(前川氏)

 
大地宅配の仕組み
 
   

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商品情報誌「PROCESS」

 同社の主力事業である「大地宅配」の基本的な仕組みについて説明しよう。消費者が同会に入会<預託金(退却時に返却):5000円、年会費:1000円>すると、毎週、取扱アイテムが掲載された商品情報誌「PROCESS」が注文書とともに届けられる。

 消費者は、その情報誌を見ながら、購入したい商品と数を注文書に記入して次回宅配時に担当者に渡すと、その翌週に注文した品が届けられるという仕組みである。インターネットでも注文は可能だが、現在は圧倒的にカタログによる注文システムの方が浸透しているという。

 「弊社の取扱商品アイテム数は、年間を通じて約3500品目です。このうち、情報誌に掲載されるのは約700品目程度ですが、それでも毎週約3万5000件もの注文が入ります。レコード数にして約50万レコード、年間合計では約3000万レコードのデータが発生していることになります」(前川氏)

 つまり、8万人の大地宅配会員の豊富な購買履歴データが、同社の基幹システム上に蓄積されているというわけだ。

 
データ分析の課題
 
   

 これまで同社は、宝の山ともいえる購買データを十分に分析することができていなかったという。もちろん、基本的な購買データなどは基幹システムから帳票としてアウトプットされていた。しかし、既存の帳票には組み込まれていない分析データを取り寄せるためには、システム担当者に分析依頼を行い、その都度分析プログラムを書いてもらうという面倒な手続きが必要であった。しかも、結果が出てくるまでに時間がかかる。このため、基本帳票以上の分析は、めったに行うことがなかったという。

 「販売促進を担当する販売企画部門では、分析ツールとして“Excel”や“Access”を使用していましたが、もっと膨大なデータを短時間で分析したいというニーズや、一方ではもっと臨機応変に手軽な分析を行いたいというニーズが高まってきていました」(前川氏)

 そこで、2005年の末に、販売企画部門から2名、経営政策部門から1名、システム部門から1名の合計4名からなるプロジェクトチームが発足、同社の分析システム構築に向けて導入ツールの検討が開始されたのである。

 プロジェクトチームでは当初、データウェアハウスの構築も考えたそうだが、導入コスト面で検討した結果、データウェアハウスより安価に導入が可能な「Clementine」の採用を決定した。2006年5月末には「Clementine」が同社のデスクトップPCにインストールされた。前川氏によれば、比較検討した競合他社商品との違いを次のように語っている。

 「“どんな人がどんな商品を購入してくれているのか”という基本的な視点に立って、膨大なデータを臨機応変にさまざまな切り口で手軽に分析できるツールであること、というのが選定の条件でした。したがって、デスクトップPC上で気軽に動かせ、統計学などの専門的な知識がない人間でも、直感的な操作で扱うことができる『Clementine』は、非常に魅力的だと感じました」(前川氏)

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図1 「Clementine」による分析ストリーム画面
(資料提供:大地)

 実際、導入後のトレーニングでは、モデルを構築する際のストリーム(分析プロセスの流れ)に戸惑ったものの、1週間ほどでストリームを理解できるようになったそうだ。また、正式運用後も、不明点はその都度SPSSのユーザーサポートに連絡して教えを請い、半年もすれば基本的な操作で悩むことはなくなったという。

 「やはり、ストリームによって分析プロセスが可視化できるのは分かりやすいですね。ストリームさえ見れば、どんな手順で分析が行われているかを後からでも追うことができます」(前川氏)

 
併売分析からみえてきた購買傾向
 
   

商品情報誌「PROCESS」を
見せながら、誌面単位での
購買分析について説明する前川氏

 同社が行ってきたさまざまな分析から「併売分析(バスケット分析)」の例を紹介しよう。前川氏によれば、併売分析の結果から面白い傾向が見えてきたという。

 「情報誌では、同じカテゴリーの複数の商品を並べて掲載することがあります。例えば、赤ワインと白ワインのような類似アイテムを情報誌に並べて掲載した場合に、両方が同時に購入されることが多いカテゴリーとそうではないカテゴリー、つまり、並べた商品のうちどれか1つしか売れない、といったことの多いカテゴリーがあることが分かりました」(前川氏)

 こうした分析結果から、同時に購入されやすいカテゴリーの商品は並列したまま掲載を続け、どれか1つしか売れないようなカテゴリーの商品は掲載アイテム数そのものを減らすといった掲載アイテムの選定に活用しているそうだ。また、「納豆」と「納豆のたれ」を同時購入すれば割引が適用されるといった「仲良し割引」という名称のセット販売の効果検証にも併売分析を活用している。

 
クラスター分析が明らかにした一定の購買傾向を持つ層の存在
 
   

 クラスター分析の主な対象は消費者会員である。例えば、肉、魚、野菜といった商品カテゴリーごとにどんな人たちが買っているか、また逆に買っていないかをグループ分けしている。これによって、肉をまったく注文しない会員や、特定の商品しか注文しない層、あるいは特売品に反応しやすい層などの存在が明らかになってきたそうだ。前川氏は、この分析結果を基に、一定の購買傾向を持つ層をターゲットとした商品企画の立案が可能になったという。

 また、大地ならではの分析として「夏休み期間中のお休みパターン」に着目した会員のクラスタリングも行っている。この結果を見ると、夏休みの前半、あるいは後半に、計画的に集中して休みを取る(=注文がない)層などが見えてきたという。

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図2 夏休み期間中のお休みパターンによる会員のグループ分け
(資料提供:大地)

 「今週届いた注文書には、来週に注文する商品を記入しますが、その商品が届くのはその翌週になります。つまり、注文するときには2週間先の予定を考えて注文しなくてはならいので、ある程度慣れが必要となります。夏休みなどでいったん注文サイクルが狂ってしまうと、なかなか元に戻すのが大変なようです」(前川氏)

 同社では、注文サイクルの乱れからくる退会率を低下させ、再び定期的な注文を行いやすくするような施策立案のために、こうしたクラスター分析を役立てているそうだ。

 
予測分析にも着手
 
   

 同社が現在着手したばかりの分析方法としては「予測分析」がある。例えば、大地宅配では最初の1カ月間をお試し入会期間としているが、その期間を過ぎて正式に入会した人と入会しなかった人のデータを比較してみると、入会しなかった人の中には生年月日を記入していない人が多いことが分かったという。つまり、お試し入会の時点で、すでに前向きに入会を考えているかどうかが、生年月日の記入の有無によってある程度推測することができるというわけだ。

 「注文経路別分析」といった基本的な分析からも興味深い結果が得られている。会員全体としてみれば、インターネット注文よりも、紙の注文書を利用する会員の方が客単価は高い。ところが、20代、30代といった年代別に区切って分析してみると、インターネット注文を利用する会員の客単価の方が高い。その理由を分析したところ、実は客単価が極めて高い昔からの会員層というのが存在し、その多くが紙の注文書を利用するユーザーであったため、会員全体としては紙の注文書を利用する会員の客単価が押し上げられていたというのである。

 こうした新たな発見も、「どんな会員がどんな商品を購入しているか」という視点から、自由な切り口でデータを見ることができるようになったおかげで得られたものと言える。

 
今後の展望
 
   

 同社が「Clementine」を導入して約1年が経過した。これまで多様な分析に取り組んできたが、すでに「この分析結果は使えるね」と社内の評判も高く、導入効果を実感しているそうだ。

 現在、分析は前川氏が一手に引き受けており、毎週、基幹システムからデータを取り込み、「Clementine」で主要な分析を10種類ほど行っている。それらの分析結果は、表にまとめたり、グラフ化したりして共用サーバにアップし、社内のユーザーが自由に閲覧できるようにしているそうだが、現在、こうした一連の分析手順を自動化していくことを検討しているという。また、ますます注目が高まっているテキストマイニングについても「インターネットを通じた顧客の生の声の収集などを含め、積極的に取り組んでみたい」とのことだった。

 「現在行っている定常分析を自動化できれば、新たな分析のためのストリーム作成に私の作業時間をより多く使うことができるようになりますので、PESのようなツールには大いに期待しています」(前川氏)

 取材の翌日は、分析システムを基幹システムと連動させ、自動処理を可能にするツール「PES」(Predictive Enterprise Services)を紹介するため、SPSSの同社担当が前川氏を訪問予定とのことで、同社の分析システムも近い将来さらなる発展が見込めそうだ。


提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業局
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2007年9月27日
 
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