Loading
|
@IT > PR:「SPSS Open House 2005」イベントレポート後編 |
|
SPSS Japan Inc.上級副社長の村田氏からは、「SPSSが産学の橋である理由」をテーマに最近のSPSSの企業活動についての報告が行われた。同社では、2000年からインターンシップ制度を導入、現在は、法政大学、立教大学、大阪府立大学の3校からインターン生を受け入れているという。今年は、3チーム(各7名)に分かれて、SPSSのWebサイトのログ分析を行い、同社マーケティング部門に対して改善提案をするという課題に取り組んだそうだ。現在は上記3校だけの交流だが、今後はより高い目標を掲げ、世界に交流を広げていきたいとのことだ。
「SPSS Open House 研究奨励賞」は今年で5回目。株式会社インテージの協賛を受けて、大学でSPSS製品を利用する学生の研究論文を募集、優れた論文を表彰するもので、今年も受賞論文のポスターセッション、すなわち展示論文のコーナーが設けられている。また、受賞者による論文発表と表彰式が開催2日目の9日午後に行われた。 JACS-SPSS論文プロポーザル賞も今年で5回目だそうだ。これは、日本消費者行動研究学会(通称:JACS)にSPSSがスポンサーとして提供しているもので、若手研究者の支援を目的としている。過去の受賞者を見ると、優れた研究を行い、活躍している若手研究者が誕生しており、SPSS Open House研究奨励賞、およびJACS-SPSS論文プロポーザル賞のどちらも、今後とも継続していきたいと、同氏は考えているそうだ。 これまで、同社はコンサルティングサービスの一貫として、さまざまな学会支援活動を通じて培った人脈を活用し、問題解決を支援してくれる先生を企業に紹介するなど、産学協同プロジェクトの架け橋となってきた。そうした活動から生まれたプロジェクトは数多く、2004年にはワールドワイドのユーザー会である「SPSS Directions 2004 User Conference」で5部門中3部門の受賞を日本ユーザーが占めたという。
「弊社が主催する『マーケティングエグゼクティブセミナー』の受講料は、そのまま講師である先生方の研究活動にお役立ていただいております。ですから、参加していただくことがそのままアカデミックへの寄与であるといっても過言ではないと考えております。1999年からこれまでに18回のセミナーを開催してまいりましたが、昨年までにセミナーに参加していただいた方はすでに991名に上っております」(村田氏) 同氏は、SPSSの産学架橋活動のポイントは「継続性」にあると述べ、今後もアカデミックへの支援を続けることを約束するとともに、そうした活動を通じて企業ユーザーに何らかの形で貢献していくことを視野に入れ、今後の産学支援活動の企画を立てていくという決意を新たに、プレゼンテーションを締めくくった。 続いて、SPSS 多川真康氏が、SPSS製品のデモを交えながら、SPSSが描く顧客接点でのデータ活用方法について紹介した。 多川氏は、まず「データ分析」立脚主義から脱皮し、「分析結果に基づくアクション」立脚主義へと移行することを提唱した。具体的には、「Predictive Analytics」によって、得られた効果や仕組みを日々の業務に組み込むことで、企業の意思決定を統制化し、ビジネスゴールへと到達することが必要であると紹介。SPSSではこれを実現している企業を「Predictive Enterprise」と呼び、そこでは「(1)Understand(理解)→(2)Predict(予測)→(3)Act(アクション)」という業務フローが構築されている、と事例を挙げながら紹介した。 ただし、多川氏によれば、実際に企業が「Predictive Enterprise」を目指す道のりには、以下に示すような3段階の障害が存在するという。
不完全なデータ環境の克服のためは、ERPやWebサイトなどから生み出され、自動的に蓄積されるデータや顧客の声など意図的に入手する必要のあるデータを統合化されたデータ環境で保持し、分析することが求められるという。また、構築したモデル・ワークフローを効率的に管理するためには、数多くのモデルを目的別、商品サービス別、チャネル別などの組み合わせでうまく管理していくこと、またデータ分析を業務フローとしてきちんと管理する必要性があると指摘した。 そして、分析結果の効果的な活用法として、業務システムに分析結果を簡単に共有できる仕組みを組み込み、モデルの作成やレポーティング、さらにはオペレーショナルな業務を自動化することで、分析結果を分析担当者だけでなく、経営者から現場のオペレーターまで幅広く活用できるようになると説明した。 続いてこれらを実現するために必要なSPSSが提供する製品のデモが行われた。今年5月のData Mining Dayにおいて寸劇形式で行われ好評を博した架空のカード会社「SPカード社の事例」を再度取り上げ、同社の一連の分析業務の裏側を掘り下げた。 今回の多川氏のプレゼンテーションでは、「Predictive Enterprise Platform」の全体像が浮き彫りになっていた。特に目新しいところでは、顧客の生の声などの収集に有効なWeb上でのアンケートシステムの構築を実現する「Dimensions」のデモが行われた。このソフトウェアを使えば、Webブラウザベースで顧客アンケートフォームが簡単に設計、展開できる。
さらには、Clementineのオプションである「SPSS Predictive Enterprise Services」の優れたモデル・ワークフローの管理機能を通じて、高度な分析を手動あるいは自動的に行い、レポートを作成、社内で共有できる仕組みも紹介された。最後に、これらデータ収集と分析プロセスの顧客接点での活用方法として、分析した顧客データの結果に応じて、コールセンターのオペレーターが見ている顧客情報の画面に最適なレコメンデーションが表示されるといったように、分析業務から現場業務までを完全に一体化できるという「PredictiveCallCenter」の実例を示してデモを終えた。
当講演では、まず倉持氏が、ぐるなびの事業概要を説明してくれた。同社が運営するWebサイト「ぐるなび」は日本初の「食」のポータルサイトで、2005年9月時点で4万6000件もの飲食店、レストラン情報が掲載されているという。利用者のアクセス数は月間3億8000万ページビュー、登録会員数は350万人に達する。利用者の性別構成比率は、女性53%、男性47%であり、女性の利用者が男性を若干ながら上回っているという。また、飲食店向けの情報誌「ぐるなび通信」は月10万部発行しているそうだ。
同社がSPSSの「Web Mining for Clementine」を導入した背景や目的については、磯崎氏がプレゼンテーションを行ってくれた。まず1つには、加盟店やメーカー向けに同社が提供しているマーケティングデータ「GON」の強化が目的であったという。次に挙げられたのは、サービスの多様化/利用者ニーズの多様化に対応するため、提供しているサービスが本当に使われているのか、などサービスの評価や新たなサービス立案の基礎資料として利用するということであった。そして3つ目にはネットリサーチやブランド調査といった付加価値事業の強化だったという。
「ツールの選択にあたっては、弊社の事業環境に合うかどうかという点とマーケティング情報として活用しやすいかどうか、という2つの点で評価しました」(磯崎氏) 「Web Mining for Clementine」を選択した理由については次のポイントが挙げられた。
「Web Mining for Clementine」を活用した同社の分析業務は、ユーザー履歴を利用したパターン分類やデシジョンツリーによる要因分析であったり、ぐるなびDBを活用した商圏分析であったりと、かなり広範な印象を受けたが、プレゼンテーションでは、実際に分析を行っている画面を提示しながら1つ1つ手際よく説明が続けられた。
「“Web Mining for Clementine”には既存のログ分析ツールにはない良さがあります。例えば、用意されているモジュールが豊富なことなどです。それらをうまく組み合わせれば、多様な分析アプローチが可能になります。今後力を入れていきたいサービスとしては、アドホック分析、つまり顧客のニーズに応じた個別分析を行っていきたいと考えています」(磯崎氏) 高度な分析としては、従来行ってきた「コンテンツ単位」での分析だけでなく、ユーザーの閲覧履歴を効果的な最小単位に分けて、行動ベースでのユーザーのクラスタリング(グループ化)を行っているという。そして、同じような閲覧行動をとっている人それぞれの目的などを想定し、サイトのナビゲーションの変更に役立てているそうだ。また、店舗の特徴(個室の有無や価格帯など)ごとにグループ化することにも活用しているとのことであった。
同氏は、より効果的な分析成果を得るためには、コンテンツ企画・デザイン部門との連携、つまりコンテンツを企画する担当者の意図や狙いを十分に理解すること、また、リサーチを通じて得られるユーザー・インサイトとの連携、マーケティング・データベースとの連携などをさらに強化することが課題であると述べた。そして、こうした課題への取り組みを通じて、ユーザーセグメントにあったサービスの提供/効果的なマーケティング活動の発見・改善/マーケティング事業への活用といった3つの領域で分析業務を展開していきたいと豊富を語り、プレゼンテーションを締めくくった。
学術的な研究に基づく澁谷氏の講演では、「口コミ」が大きな影響力を持つ、インターネット上における情報探索プロセスについて興味深い議論が展開された。 澁谷氏によれば、“従来の口コミ”では「限られた交友関係」「直接会話する間柄」といったパーソナルなコミュニケーションが前提になっていたのに対し、“インターネット上の口コミ”には「交友関係がない」「会話しない」「見ているだけ(ROM:Read Only Member)」といった正反対とも思える特徴があるという。
口コミサイトといえば、「価格.com」「@cosme(アットコスメ)」などが人気を博しているが、ネット上の口コミ情報で高く評価されている商品であっても、自分が実際に購入してみると、必ずしも満足の行く経験ばかりではないという。これは、口コミ情報を発信している人と自分との価値観の相違が背景にあると、同氏は指摘する。 「価格.comを見ていたら、どうしても欲しくなって3種類もの電動歯ブラシを購入しました。ところが、そのうちの1台はジェット水流式のもので、使うときに水が飛び散ってしまい、結局使わなくなってしまいました。サイト上の口コミにはこんな評価は書かれていなかったのですが……」(澁谷氏) 自らの口コミによるネットショッピング経験を披露したうえで、同氏はインターネット上の口コミが持つ特徴として「趣味や価値観の合う人から影響を受ける」という点を追加する。そして、この特徴を裏付ける根拠として、社会心理学の「Social Comparison理論」(図2)に基づく説明が適切だと考えているそうだ。この理論は、自分と他人の関連属性(*)が似ていると認知した場合には、その相手の意見内容に意識的に、あるいは多くの場合は無意識のうちに影響を受けるというものである。 * 口コミで伝わる意見の内容に関連する何らかの属性、例えば趣味・趣向、所属しているコミュニティ、肌質・年齢など、あるいは単純に性別や人種、血液型などが関連属性として認識される場合もある。この点に関しては、同氏が講演の中で言及した『知識への選択的アクセシビリティ・メカニズム』が関連するという。
同氏は、インターネット上の口コミがこの理論で説明できるかを検証するための実験調査を行ったという。実験では、架空の映画紹介サイトを立ち上げ、映画に対する評価を同サイト上で行ってもらうというものであった。ただし、その評価を行う際、ある特定の人の関連属性と評価を見ながら自らの評価を行うような仕掛けが施されていた。 この実験によって得られた結果は、まさに「Social Comparison理論」がインターネット上でのユーザー行動においても妥当性を持つことを裏付けるものであった。つまり、この実験において、意図的に表示されたほかの評価者の関連属性が自分と似ている時、評価は明らかにプラス方向へと変化し、その逆の場合にはむしろマイナス方向へ変化したという。特に映画への関与度が高い人ほど、関連属性が類似している人の評価をみて、自分の意見を補強するような態度が見られたそうだ。こうしたことから、インターネット上でのユーザー行動は、自分と似た属性を持つ人の意見に影響を受けやすく、特にそのカテゴリにおいて関与度が高い人ほど大きく影響を受けるものだと考えられるという。 さらに、同氏はインターネット上でのユーザー行動における情報探索プロセスにも注目しており、通常インターネットユーザーは目当ての情報を検索する場合、企業が発信する「企業情報」だけでなく「個人意見ルート」「集団意見ルート」という2つのルートからも情報を得ている、と指摘した。
「“個人意見ルート”においては、まず口コミ情報を発信する人と自分との意見の一致性の判断を行い、次いで、関連属性が似ていれば、自分の意見を補強するという流れになります。一方、“複数意見ルート”の場合、まず複数の意見の分布(どんな意見が多いか、少ないか)を見て、自分の意見が多数派に属していた場合には、自分の意見を補強するわけです」(澁谷氏) こうした研究やモデルを踏まえ、マーケティングへの適用については、次のように示唆した。
「口コミサイトといわれるような個人意見ルートの場合、口コミ情報の発信元に関して、関連属性情報を提示することがより情報源としての有効性を高められると考えられます。また、コミュニティサイトといわれるような複数意見ルートの場合は、まずコミュニティ全体に関連属性による絞り込みをかけることが有効になってくるでしょう」(澁谷氏) 同氏は、コミュニティサイトの成功例として自動車メーカーのホンダが運営する「熱烈愛犬愛車図鑑」を挙げた。このコミュニティは犬好き、車好きで、愛犬と一緒にドライブにいくような人々が集まるコミュニティである。つまり、コミュニティ全体に、犬と車が好きという共通する関連属性のフィルターがかかっている状態といえる。このように、うまく関連属性を組み合わせて間口が絞り込まれたコミュニティは活性化した良質なコミュニティになるというのだ。そして、テキストマイニングの有効性について、次のように述べ、講演を終えた。
「現在は、発売元である企業が思いもよらないような関連属性と結び付けられて製品が消費されるような時代です。自社の製品が、消費者によってどのような関連属性と結び付けられているのかを知ることはマーケティング活動においては非常に重要なことです。そのための施策として、ネット上の口コミ情報をテキストマイニングしてみるというのもたいへん興味深いのではないでしょうか」(澁谷氏)
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年1月20日 |
|