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おむつとビール

diapers and beer


 「おむつを買った人はビールを買う傾向がある」という米国におけるマーケットバスケット分析の事例。1990年代半ばから2000年代初めにかけてメディアや講演などでよく語られ、データマイニングという言葉と概念を一躍有名にした。

 一般に「米国の大手スーパーマーケット・チェーンで販売データを分析した結果、顧客はおむつとビールを一緒に買う傾向があることが分かった。調査の結果、子供のいる家庭では母親はかさばる紙おむつを買うように父親に頼み、店に来た父親はついでに缶ビールを購入していた。そこでこの2つを並べて陳列したところ、売り上げが上昇した」という内容で知られる。

 直接的には、1992年12月23日の「ウォールストリートジャーナル」に掲載された「Supercomputer Manage Holiday Stock」という記事が発端だとされる。この記事では「米国中西部の都市でこの店は、ある人が午後5時に紙おむつを買ったとすると、次にビールを半ダース買う可能性が大きいことを発見した」と報じていたが、伝えられるうちに店の名前がウォルマートになったり、セブン-イレブンになったり、あるいは日時が木曜日になったり、週末になったりといろいろなバリエーションが登場した。このため、実際にあった事例かどうか疑問視されるようになり、しばしば“伝説”と呼ばれていた。

 2002年にコンサルティング会社MindMeldの社長兼CEOのトーマス・A・ブリスコック(Dr. Thomas A. Blischok)氏が語ったところによると、同氏がNCRのビジネスコンサルティング担当の副社長だった1992年ごろ、Osco Drugsという小売ストア・チェーンの25店舗のレジスタからトランザクションデータ(120万以上のマーケットバスケット・データ)を得て分析を行ったのがオリジナルだという。

 この結果、「午後5時から7時の間、消費者がおむつとビールを買うということを発見した」という。これは一度も検討されたことがない洞察を得られたという意味でデータマイニングの最初の事例だといえるが、この知見に基づいてOscoが同じ売り場におむつとビールを並べたといった事実はないという。

 ブリスコックらの活動はアソシエーション分析の最初のアルゴリズム(Apriori)が実用化される以前の話で、実際の分析ではSQL技術者がトランザクションデータ内に存在するかもしれないと思われる“相性”を定義してクエリーを作成したという。

 この研究では同時に「ジュースとせき止め薬」「化粧品とグリーティングガード」「キャンディとグリーティングカード」など、30の異なる組み合わせを特定しているという。ただし、このときにおむつとビールの相関は実はサポートされなかったとする説もある。

 1990年代前半はデータマイニングという言葉はまだ知られておらず、技術的にも未熟でビジネスへの適用方法もまったく理解されていなかった。その中で「おむつとビール」のストーリーはデータマイニングの意義と可能性について、うまく説明した優れた“伝説”だったといえるだろう。

 
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