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» 2016年05月12日 10時00分 UPDATE

「技術が好き」だけでいいの?仕事に誇りと責任感を持ててる?:ITアーキテクトの第一人者に聞くエンタープライズITエンジニアの「本当の価値」とは

グロースエクスパートナーズ 執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長を努め、日本Javaユーザーグループ会長、日本Springユーザーグループ幹事などのコミュニティ活動でも知られる鈴木雄介氏にインタビュー。「市場に求められる」「本当の価値を持つ」エンジニアであるために必要な視点やスキルを聞いた。

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 クラウドによって誰しもが大量のコンピューティングリソースをすぐに使える時代になり、開発・運用エンジニアにおいても「技術を実際のビジネスサイクルの中でどう効率良く、かつスピーディに生かすか」が重要視されている。そのために必要な技術や手法にも目を向けることによって、エンタープライズにおける、あるべきアーキテクチャ設計が見えてくる。

 本稿では、グロースエクスパートナーズ 執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長を努め、日本Javaユーザーグループ会長、日本Springユーザーグループ幹事などのコミュニティ活動でも知られる鈴木雄介氏にインタビュー。「市場に求められる」「本当の価値を持つ」エンジニアであるために必要な視点やスキルを聞いた。

クラウドにより分業化が加速した今、エンジニアに必要な視点とは

 昨今のクラウドの普及は、企業ネットワークの設計に大きな影響を与えた。同時に、エンジニアに求められる要件も大きく変わりつつある。

 これまでは、さまざまな基幹業務をITシステムに置き換える「業務アプリケーション」を開発することが重視されていたため、エンタープライズITエンジニアの分業化が加速化した。「どのように分業して効率的に作るか」「そのためにはフレームワークを何にするべきか、プログラミング言語は何がいいのか」などを考えることばかりが重視されてきた。いわば、専門的な知識を擁するエンジニアが市場に求められてきたといえるだろう。

 だが、クラウドが登場し、業務要件を満たすコンポーネントがクラウドのオプションとして用意される現在、システムをスクラッチから開発することは少なくなった。むしろ、「現状のシステムに対してクラウドのどのコンポーネントを組み合わせるのが最適なのか」「今の課題を解決するために必要な組み合わせはどれか」など、業務やシステム全体の総合的な知識をベースに最適化できる力が求められ始めている。

 鈴木氏は次のように指摘する。「クラウドは特別な技術ではない。さまざまな技術の1つとして扱えばいい。効果的に活用するには、技術と業務に関する幅広い知識を持ち、次に何をするべきか自分で考えられるITアーキテクトの視点が必要だ」。

グロースエクスパートナーズ 執行役員 アーキテクチャ事業本部長 兼 ビジネスソリューション事業副本部長 鈴木雄介氏

 1つのシステムを分業して開発してきたここ10〜20年、企業向け業務アプリケーションの開発ノウハウは蓄積、モデル化されてきた。しかし、これらの分業された技術的知見だけでは、エンジニアが生き残るのは難しくなってきている。もちろん、分業された技術領域それぞれを専門的に扱う役割も重要だが、それを専門家として突き詰めていくには相当レベルが高くないといけない。また、特にフロントエンドにいえることだが、技術の淘汰(とうた)が激しく、追い続けるだけでも大変なことだ。

 同社のフロントエンド開発を担当するあるエンジニアは、ずっと技術のことだけを追い続けていたが、あるとき突然、「ユーザーとのインタラクションにおいて、どのような技術が最適か」を考えたいと、ユーザーエクスペリエンスの勉強を始めたという。「今では画面のインタラクションを突き詰めているようだ」と笑う鈴木氏は、専門性を持ちながらユーザー目線で考えられる、市場価値のあるエンジニアと評価する。

「市場に求められる」「本当の価値を持つ」エンジニアであるために必要なスキル

 では、クラウドが普及した現在、「市場に求められる」「本当の価値を持つ」エンジニアであるために必要なスキルは何なのだろうか。

業務要件を理解し、課題を技術でどう解決できるかを考える

 まずは「エンタープライズのシステムを作る上で、ごく当たり前のこと」と鈴木氏は言う。

 具体的には、業務分析をきちんと行い、「どんな機能が必要なのか」を洗い出し、セキュリティや性能、信頼性、ユーザーエクスペリエンス、保守性といった非機能要件を整理し、クラウドとオンプレミスのハイブリッド環境システムを設計・開発、モデル化する。特に、「業務要件を理解し、課題を技術でどう解決できるかを考えるスキルが必要だ」と鈴木氏は言う。

各技術の最適な使いどころを把握する目利き力

 また、各技術の強みと弱みを把握した上で、最適な使いどころを把握する目利き力も必要となる。例えば、著名なパブリッククラウドサービスについて鈴木氏は次のように分析する。

 「Amazon Web Service(AWS)は、Linuxのカルチャーを引き継いでいて、素の部品をそろえており、自由度が高いところがエンジニアには楽しいが、インフラにかなり詳しくないと使いこなせない。コスト計算の難易度がやや高い。Microsoft Azureは、エンタープライズを良く理解しているマイクロソフトのクラウドという安心感がある。『ソリューションに近いパッケージ製品』というイメージで使いやすいが、カスタマイズしにくい点もある」

 このように、「同じIaaSやPaaSを含む総合的なクラウド」と見られがちなサービスでも、それぞれに特性があり、エンジニアのスキルや目的に応じて、選択する際に重視すべき観点は変わるのである。

 また、一見「同じPaaSレイヤーのサービス」でも、その使いどころは異なるものだ。例えば、HerokuとForce.comについて、鈴木氏はどう見ているのだろうか。

 「Herokuは、AWSのインフラの難しさをうまく隠していて、アプリケーションエンジニア向け。Force.comは伝統的なアーキテクチャをコア部分に据え、シンプルな価格体系で使いやすい。『カスタマイズできるSaaS』といえる。あとはバージョン管理ツールやDevOpsへの対応が早く進んでくれるといい」

 パブリッククラウド全体を見渡し、それぞれの強みと弱みを理解することで、ユーザーに最も必要な機能の選定やオンプレミスとの組み合わせを考えることができる。

専門知識を持ったエンジニアや企業と連携できること

 ただし、詳細な機能含めて全て掌握することはエンジニア1人、または1社で賄える話ではない。

 「例えば、AWSの設定全てを把握するのは、細かい専門知識が必要となる。基本知識として全体を知っていることは、業務に合った要件定義をする際にとても大切だが、さらに細かい機能を詰めていくときは、専門知識を持った企業なりエンジニアなりと連携できることが大切だ」

顧客対応の向上を目的にエムアイカードが導入したクラウドサービスとは

 これらのスキルに加えて、エンタープライズITにもビジネスの拡大が求められている現在は、顧客との接点を増やすB2CなITサービスを早期にスモールスタートで稼働させることも求められている。しかも、既存の基幹システムと連携もしなければならない。その良い例として、鈴木氏はエムアイカードでの開発案件を紹介した。

 三越伊勢丹グループのクレジットカードの発行やポイント管理を行うエムアイカードは、百貨店でしか決済できないハウスカードを発行してきたが、2008年にはVisa、2011年にはアメリカン・エキスプレスとの提携カードの発行を開始し、百貨店以外でもカード決済できる汎用クレジットカードに進化した。その結果、これまでは両百貨店内のサービスカウンターで顧客対応できたが、汎用クレジットカードの場合、必ずしも百貨店でカードを使うわけではない。顧客サポートをより厚く、充実させたいというニーズがあった。

 こうしたニーズに応えるために、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウド型顧客エンゲージメントシステム「Salesforce Service Cloud(以降 Service Cloud)」と「Force.com」が導入された。モバイルなど最新技術に対応し、コンタクトセンター業務に必要な機能を網羅、急激な受電数の増加にも即座に環境を整えられる拡張性、そしてワールドワイドでの実績が豊富な点などが評価された。

エムアイカードで「Service Cloud」「Force.com」を導入したシステムの構成

基幹システムと連携しながら、早期にスモールスタートで稼働させる

 Service CloudとForce.comの採用が決定してから本格稼働までにかかったのは、わずか半年だった。「Force.comは、とにかく開発スピードが速く、スモールスタートにも最適」と述べる鈴木氏は、同事例では当初、基幹システムからファイルを受け渡すという1つの連携に限定して運用していた。というのも、連携するには基幹システムの改修が必要で、それには数カ月など時間がかかるからだ。

 「最も中核的な機能連携を構築してから、基幹システムの改修を進めつつ、Force.com側の調整も行いながら、少しずつ連携業務を増やしていく。大きく始めなくてもいいというのがクラウドの魅力であり、それを最大限に生かした設計プランで進めた」

ビジネス部門の強い意志を手助けする

 この結果、基幹側の与信やカード発行システムの情報をService Cloudで抽出、参照できるようになり、コールセンターのオペレーターの対応を記録して一元管理、見える化して対応品質および生産性をコントロールできるようになった。今では、コールセンターのスーパーバイザーは顧客の問い合わせ傾向や日々の動向を集計、自分が見やすいようにForce.comでレポート化するところまで行っている。

 「特に使い方を教えたわけではなく、独自に工夫されている。業務をより効率的に、便利にしたいと能動的に動くユーザー企業にとって、Force.comはとても使いやすいと思う」

 また、基幹システムや既存業務にクラウドといった新しい技術を連携させていく際に、非常に重要なポイントとして鈴木氏は、「この事例のとても良いところは、ユーザー企業が業務分析をしっかり行い、やりたいことを明確に示し、技術的な面も説明を求め、きちんと理解する姿勢を見せてくれたこと」と述べる。

 「クラウドの導入は、ユーザー企業が主導するのがベストだと考える。ベンダー側やIT部門の発想や思考で主導してしまうと、本来は不要な部分まで盛り込もうとしたり、既存のルールを変えないで導入しようとしたりする。エムアイカードは、半年以内に立ち上げて改善していくという強い意志で臨んでおり、ビジネス部門主導で既存ルールの変更もトップの理解を取り付けながら確実に進めてくれた。私たちの方でも、機能要件と同社のセキュリティガイドラインなどとの詰めの作業や落とし込みを条項ベースで実施し、より良いシステム作りが実現できた」

「エンタープライズITのエンジニアは社会に貢献し、生活を豊かにする」という誇りと責任感を

 鈴木氏は、これからのエンジニアに求められる素質として、「いろいろな組み合わせを考えることができ、問題を探して解決できること」と言う。

 そして、エンタープライズITを好きになるエンジニアが増えてほしいとも願う。「エンタープライズITは、例えばゲーム業界やWeb業界など派手な印象よりも泥臭くて面倒くさい印象が強く、実際にそういった部分も多い」と認める鈴木氏だが、「エンタープライズITは社会のインフラを担う重要な役割があり、例えば金融機関や航空会社などでIT関連の不具合が発生すると、大きな社会問題に発展する可能性がある。そんな重大なインフラを自分たちが支えていると考えれば、誇りと責任感が湧いてくる。そして、トラブルなく正常稼働している現場を見れば、苦労が報われて感動することもある」と熱く語る。

 そのためにも、「例えば建築分野のように、ITがどれだけ私たちの生活を豊かにしているかを語る必要がある」と鈴木氏は述べる。

 「会議室1つをとっても、窓を設置することで閉鎖感がなくなる。ドアをすりガラスにすることで解放感を生み出す。結果的に精神的な余裕が生まれて生産的な議論ができるようになり、社会に貢献することになる。建築では、そういったストーリーを描ける人材を育てている。ITも同様だ。業務プロセスからサービス展開、カスタマーエクスペリエンスまでの全体を意識して設計されたシステムは、社会に貢献し、人々の生活を豊かにする基盤となる」



 このように、鈴木氏のインタビューを通じて、現在の「市場に求められる」「本当の価値を持つ」エンジニアであるためには、何が必要なのかを考察してきたが、いかがだっただろうか。本稿で述べられた話を意識することで、“技術”と“業務”に対する考え方、そして開発への取り組み方も変わってくるはずだ。エンタープライズITの誇りと責任感を持ち、自分が携わるITシステムが社会に貢献するというストーリーまで描けるエンジニア――そういったストーリーを描けるエンジニアこそが今の市場に求められ、本当の価値を持つのではないだろうか。

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提供:株式会社セールスフォース・ドットコム
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月11日

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