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» 2018年08月27日 05時00分 公開

ワタシハ人間デス:「火の鳥」の「ロビタ」を、2018年のテクノロジーで解説しよう (3/5)

[米持幸寿(Honda Research Institute Japan),@IT]

複製されたロビタ

ロビタ(手塚プロダクション公式YouTubeチャンネル「火の鳥」より引用)

 AD2917、最初のロビタはロボット業者に引き取られ、記憶中枢ごと複製された。その数は増え続け、AD3009には1日当たり520体も生産されている(漫画では「520人誕生して」と人間のように表現されている)。

ロビタはコネクテッドロボットである。

 コネクテッドロボットとは、ネットワークによって別の何かと常に接続されている状態で稼働するロボットを意味する。

 ロビタにはたくさんの機体があり、何らかのネットワークでお互いが接続されていることが分かる。なぜならば、アイソトープ農場で働くロビタ全員が死刑となる際に、世界中のロビタが同調して自殺するからである。この行動は、ロビタがお互いに通信していなければ実現しない。

 現代のコネクテッドロボットの多くは、機能をクラウドに実装する。その方が多くの計算資源を使えるし、たくさんの開発者が参加して機能を向上することが容易だからである。しかしロビタは、クラウドのような母体がどこかにあるような設計にはなっていなさそうだ。

 現代のロボットがコネクテッドにする際に課題となるのは、「ネットワーク技術の選定」である。ロボットはPCのような小型コンピュータシステムであり、コンピュータ用のネットワークで相互接続できる。今なら「コンピュータ同士を相互接続させるのなんて簡単」だと思うかもしれないが、意外とそうでもないのである。

 Wi- Fiを使って接続する場合は、ロボットが移動するたびにWi- Fiの基地局に登録しなければいけない。Bluetoothなら、ホストとなるスマホか何かが必要になる。simカードを挿す場合には、ロボットごとに通信契約が必要だ。

 最初のロビタは1体(人?)だけなので、コネクテッドロボットとして設計されたわけではない。その後複製化される課程で、何らかの手段を使ってコネクトできるようになったと思われる。

ロビタは、コネクテッドロボットとして設計されたわけではないが、コネクテッドロボットとして振る舞っている

ワタシハ人間デス

 AD3030、ロビタは人間の子どもを死なせた嫌疑をかけられて処刑される。その際、全世界の3万6200体ものロビタが一斉に集団自殺を図る。ここで手塚先生は、ロボットに「死」という概念があると示している。

 通常、ほぼ全ての動物は、死から逃れ、死から自分を守ろうとする本能を持っている。では、動物は自殺しないのだろうか?

 動物が自殺するかしないかは、学術的にはまだグレーだ。観察上は自傷行為や自滅行為は確認されているが、人間の自殺とは違うという確証が得られていないそうだ。

 人間が自殺する理由の多くは「終わりにすること」ではないだろうか。非常に悲しい、つらいことが継続して、それに耐えられなくなったときに自殺という選択をするのだ。しかしロビタの自殺は、それとは少し違う。

 ロビタが集団自殺をした意味は「ロビタは一つである」という主張である。

 3万6200体にコピーされたとはいえ、元のロビタは一つである。3万超のロビタは一つなのである。ワンロビタが処刑されるのであれば、オールロビタが破壊されるべきなのである。

 もう一つは「自分は人間である」という主張である。

 繰り返しになるが、ロビタの中身は、AD2484にレオナとチヒロ(ロボット)の心が移植されたロボットである。つまりレオナという「人間」の記憶と意識が移植されている。ロビタは自分が人間であることを主張するために、ロボットは行わない自殺をする。

ロビタは自殺することで、自分がロボットではないと主張した。

 次ページからは、ロビタ以外のコンピュータやロボットも見て行こう。

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