基幹系などの各種業務アプリケーションは、現代の企業活動を支える情報システムとして不可欠な存在となっている。しかし今日、業務アプリケーションをめぐる環境は、ダウンサイジング/オープン化やパッケージの台頭など大きく変化しつつある。ではシステム構築の前線に立つエンジニアは、今後の業務アプリケーション導入について、どのような意識を持っているのだろうか? Business Computingフォーラムが実施した第4回読者調査から、その概要を報告しよう。
まず読者のかかわるシステムにおける、業務アプリケーションの導入状況から見ていこう。現在導入が進んでいる分野としては、「財務/会計管理」を筆頭に「人事/給与管理」「販売/在庫/サプライチェーン管理」などの基幹系アプリケーションが上位に挙げられた(グラフ1 青棒)。また今後の導入予定を見ると、「CRM/顧客管理」や「SFA/営業支援」といった、フロント業務系アプリケーションの検討も進められているようだ(同 黄棒)。
では企業が業務アプリケーションを導入する背景には、どのような理由/動機があるのだろうか? 読者のかかわるシステムで現在重点が置かれているものを3つまで聞いたところ、「全社的な情報共有の推進」の重視度が最も高く、「BPR/業務プロセス改善」がそれに続く結果となった(グラフ2)。一方で「セグメント情報/リアルタイム決算などの管理会計対応」や「国際会計基準(IAS)や事業のグローバル化対応」といった項目のポイントが低いことも併せて考えると、現在は外的な環境変化よりも、社内改革の必要に迫られて業務アプリケーション導入が進められる機会が多いようだ。
ところでこれからの業務アプリケーションは、どのような開発/導入形態が主流となるのだろうか? 読者の意見を聞いたところ、「単一ベンダの統合業務パッケージを導入する」と「業務ごとに最適なベンダ/パッケージを選択して導入する」 を併せた“パッケージ導入派”が、全体の過半数を占めた(グラフ3)。ただし「システム連携などにより、極力既存アプリケーションを活用する」「パッケージは導入せず、独自に開発する」という意見もそれぞれ2割弱程度挙がっており、パッケージ活用が進む中でも状況に応じてスクラッチ開発/システム連携が使い分けられていくもようだ。
続いて、今後注目される業務パッケージのベンダ/製品導入状況を見てみよう。この分野は、導入先のシステム規模によって利用されるベンダ/製品が大きく異なると予想されたため、今回はユーザー数1000人以上の“大規模システム”と、1000人未満の“中小規模システム”に分けて集計した。
まず読者がかかわるシステムで現在導入済みのパッケージを聞いたところ、大規模システム層では「SAPジャパン(SAP R/3、mySAP.com)」の導入率が他社を大きく引き離しており、エンタープライズクラスのパッケージ市場をリードしていることが明らかとなった(グラフ4 黄棒)。一方中小規模システム層では、“奉行シリーズ”の「オービックビジネスコンサルタント(OBC)」が首位の座にある(同 青棒)。このようにSAPとOBCがシステム規模別にその勢力をすみ分ける中、「日本オラクル(Oracle E-Business Suite)」は、大規模/中小規模ともに一定の導入率を獲得している点が特徴的だ。ただし一口に「中小規模」といっても、この層は非常に幅広いため、回答における想定規模が相当に異なるであろうことも付け加えておく。
次に、読者のかかわるシステムで今後導入を予定/検討しているパッケージを尋ねたところ、大規模システム層ではSAPとオラクルのポイントが並んでトップに立った(グラフ5 黄棒)。オラクルはコンサルティングファームやSIerとの提携、認定コンサルタント育成など、近年この分野の強化にリソースを投入しているが、その効果が大規模層にも浸透し始めているようだ。片や中小規模層を見ると、SAPの導入検討率がわずかながら他社を抑えてトップになった(同 青棒)。“SAPといえば大企業”という印象も強いが、同社は顧客層を拡大すべく、2003年2月に中堅企業向けのソリューション・テンプレート販売を発表するなど、中堅以下の企業へ販売の力点を移してきている。もちろんこのデータどおりに導入が進む保証はないが、いずれにせよ業務パッケージをめぐる市場競争は、今後ますます激化しそうだ。
次に業務アプリケーションの稼働プラットフォームについて、読者の利用状況を見てみよう。まず現在利用しているプラットフォームでは、「Windowsサーバ」の利用率が全体の7割を超え、最も普及していることが分かった(グラフ6 青棒)。しかし続いて“今後最も利用が進むと思うプラットフォーム”を尋ねたところ、「Linuxサーバ」を挙げる読者がWindowsを上回る結果となった(同 黄棒)。Linuxプラットフォームはコストメリットが高い半面、対応業務アプリケーションの少なさが欠点といわれてきたが、オラクルが2003年1月にE-Business SuiteのLinux対応版を出荷するなど、その環境は急速に改善している。経済停滞下の業務アプリケーション導入を考えるうえで、Linuxの存在は今後大きなものとなりそうだ。
最後に、業務アプリケーションを導入するうえで、読者が現在どんな課題を感じているのか、紹介しておこう。グラフ7で見られるように、課題の上位に挙げられたのは「ユーザー要求に合わせたカスタマイズに手間がかかる」 「導入効果を測定/証明することが難しい」 「ユーザーの要求/ビジネスニーズが明確ではない」といった項目だった。これらのデータを裏付けるような、読者のコメントを引用しよう。
業務アプリケーションをスムーズに導入するためには、スクラッチ開発/パッケージを問わず、適切な要求管理と現実的なROIの提示が欠かせないようだ。
■調査概要
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