@IT編集部で実施したデータ管理に関する読者アンケートでは、「事業継続・災害対策」に関する読者の悩みが浮き彫りとなった。
ここでは「事業継続・災害対策」に関する課題を前後編の2回に分け、@IT編集部が掘り下げる。
“ITの災害対策、 「コストを圧縮せよ」に応えるための手段はある”
後編:@IT編集部が解説 最新技術を活用した 簡単、確実、低コストな災害復旧を考える 2012/10/15 |
事業継続/災害復旧で忘れてはならないことは、重要な業務システムについてはデータだけでなく、アプリケーションも保護する必要があるということです。データのバックアップを取得することは大前提です。そのうえで、業務システムを迅速かつ確実に再稼働させるためには、いわゆるシステムバックアップが必要です。今回は、重要なIAサーバアプリケーションを迅速・確実に復旧するために必要なシステムバックアップ、およびそのデータバックアップとの関係について考えます。
システム保全の仕方はどんどん進化している
災害に限らず、サーバ機の故障などにより、これまでのシステムハードウェアが使えなくなることはあり得ます。復旧作業では、代替のサーバ機を調達して、それまでの業務システムを再現しなければなりません。アプリケーションデータしかバックアップしていなかった場合、代替サーバ機(およびストレージ装置)の環境設定を行い、OSをインストールしてその基本設定を行い、その後にアプリケーションソフトウェアをインストールして設定を行う必要があります。
これだけでもかなりの時間がかかりますが、OSおよびアプリケーションソフトウェアに関しては、システムパッチやセキュリティパッチ、チューニングなどのための設定までを再現しなければなりません。これらすべての作業を確実に実行するのは、適切なドキュメントが残されていたとしても非常に困難です。ましてや、短時間で行うのは至難の技です。
このため、「システムバックアップ」「システムイメージバックアップ」、あるいは「イメージバックアップ」と呼ばれるようなバックアップソフトウェアが使われるようになってきました。アプリケーションデータとは別に、OSやアプリケーションのバックアップが取得できるというものです。こうしたソフトウェアのなかには、故障したサーバ機とは別のサーバ機種に、システムを復旧できるものがあります。つまり、復旧時に、新サーバ用のドライバを適用し直すことができる製品です。この作業さえうまくいけば、アプリケーションまでを一気に復旧させることも可能です。
サーバ仮想化のメリットは集約だけでない
しかし、障害からの迅速で確実な復旧という点では、さらに注目すべき技術が数年前に登場しました。サーバ仮想化です。サーバ仮想化というと、サーバ集約、すなわち少数のサーバ機にアプリケーションを集約するための技術として知られています。しかし、単なるサーバ集約よりも大きなメリットが、たくさんあります。こうしたメリットの1つに、より容易で、確実で、迅速で、コスト効率の良いシステム復旧を可能にしてくれることがあります。サーバ仮想化のこのメリットは、災害にまで至らないような、単純な機器障害などにも適用できます。サーバ集約によるコスト削減効果よりも、障害からの復旧における有用性に着目して、そのためだけにサーバ仮想化を導入してもいいぐらいです。
ご存知のように、サーバ仮想化では、システム、つまりOSやアプリケーション、パッチがインストールされたサーバ機そのものが、ファイルとして扱えるようになります。ですから、システムのバックアップは、このファイルの複製をとっておけばいいということになります。
サーバ機の機種の違いは、サーバ仮想化では関係なくなります。そのため、復旧時にドライバを適用し直すような作業も不要です。言い替えれば、同一のサーバ仮想化ソフトウェアを使ってさえいれば、機種が異なっても、CPUのスピードやメインメモリの搭載量に違いがあっても、復旧できます。しかも、復旧時に必要な作業は、基本的にはバックアップしておいたシステムのファイルを、仮想化ソフトウェア上で起動するだけです。専用のサーバ機すら必要はありません。
このことは、システム復旧の考え方にはかりしれないメリットをもたらします。
例えば、サーバ機の故障は、仮想化された環境にとってはそれほど大きな問題にはなりません。サーバ仮想化環境で、データもアプリケーションも、共用ストレージ装置に置いている場合は、故障したサーバ機で動かしていた仮想サーバ(アプリケーション)を、別のサーバ機で再起動するだけでいいのです。このため、代替サーバ機の調達で、一刻を争う必要はありません。災害復旧の場合もそうですが、とりあえずは小規模な環境で「縮退運転」、つまりより少ないCPUやメモリ量で動かすという対策が可能です。
大規模地震などへの備えでは、別拠点にバックアップセンターを構築するということが行われてきました。この場合、メインフレームの世界でも、必ずしも本番システムと同一の構成のハードウェアを使わずに、それこそ仮想化によって、単一のメインフレーム機を複数の「仮想メインフレーム」に分割したものの1つを、待機システムとして使うことがあります。サーバ仮想化では、本番システムと待機システムの構成も、機種も揃っていなくてかまいません。ファイルとなっている仮想サーバを待機拠点に送っておけば、いざというときにこれを起動することで、本番拠点とまったく同じシステムが再現できるのです。
このように、より容易で、迅速で、コスト効率の高い復旧が可能なため、以前は最重要なシステムだけを、膨大なコストをかけて守ることしかできなかったものが、多数の業務システムを幅広く保護できるようになったともいえるでしょう。
最後の焦点は「どこまで新しいデータを」確実に戻せるか
こうした技術進化を前提として、災害対策ではデータおよびシステムの、遠隔拠点間の複製を考えることになります。
いまだに、テープへのバックアップで十分な災害対策になると信じている方がいます。テープは最終的なデータ保全の手段として、重要な存在であり続けるでしょう。しかし、機器障害や、災害復旧への対策という点では、残念ながら機能不足になってきています。迅速で確実なバックアップおよび復旧(リストア)を考えると、やはりハードディスクへのバックアップに軍配が上がります。
サーバ仮想化では、共用のストレージ装置が使われます。こうしたストレージ装置のなかには、「スナップショット」と呼ばれる機能を備えたものがあります。これは、ストレージ上にあるデータのある時点での複製をとる機能で、前回のスナップショット取得以降の変化の差分だけを複製するので、所要時間は短く、ほとんどの場合システムを止めることなく実施できます。すなわちサーバ仮想化用の共用ストレージに一次ストレージの役割と、バックアップスレージの役割を兼ねさせるわけです。
バックアップ専用のストレージ装置も、ここ数年で選択肢が増えてきました。バックアップストレージでは、これまでバックアップソフトウェアにより、従来型のバックアップを行ってきたような場合、そのバックアップ運用を変えずにバックアップデータを集約することもできます。仮想サーバだけでなく、物理サーバのシステムのバックアップも可能です。主要バックアップソフトウェアも、最近は物理サーバのシステムを、仮想サーバ形式でバックアップできるようになってきたので、これまではアプリケーションデータだけをバックアップしていた方も、システムバックアップの併用をお勧めします。
バックアップデータ/システムは、重要度に合わせて遠隔地に転送します。重要なシステムであり、さらに頻繁に更新や追加が発生するものであるほど、バックアップの頻度を増す必要があります。
以前は同期転送といって、本番システムのデータをリアルタイムで遠隔転送する選択肢しかありませんでした。このため、「災害対策は高価」というイメージが定着してしまっています。しかし最近では、非同期転送(リアルタイム性は保証されない)で、コスト効率よく転送することもできるようになってきました。こうした技術進化を踏まえて、災害対策を考えることが重要です。
“ITの災害対策、 「コストを圧縮せよ」に応えるための手段はある”
事業継続/災害対策、結局何をすべきなのか
―― 富士通の回答(@IT Special)
「データ管理のお悩み解決コーナー 〜事業継続/災害対策編〜」では、前編と後編の2回に分けて、@IT編集部が事業継続対策(IT関連)および災害対策につき、検討の際の指針としてのヒントを提示している。これはベンダ中立的な立場で、一般的に十分認識されていないと思われる重要な点を述べたものだ。では、実際に製品やサービスを提供している富士通のような企業はどう考えているのか。富士通におけるストレージ関連ソリューションのキーマンである、プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部シニアディレクターの荒木純隆氏に聞いた。
爆発的に増加するデータ量、ますます重要となる事業継続、急務となっているコンプライアンスとセキュリティ。そして深刻化する環境問題への取り組み―。
これら、時代が要請するさまざまな課題に対応していくなかで、どのようなシステムが求められ、ストレージに何が期待できるのでしょうか。富士通のストレージソリューションがその課題にお応えします。
事業継続(バックアップ/リカバリー)
ストレージシステムは、事業継続に欠かせないICT基盤「データ保護」「災害からのデータ復旧」の2つの視点で、事業継続を支援します。
セキュリティ/コンプライアンス
外部からの攻撃と内部からの持ち出しに対処。情報の信頼性を確保し、長期間にわたって情報を保持します。
情報ライフサイクル・マネジメント(ILM)
情報の生成、活用、保管という利用周期の観点から情報を管理。ライフサイクルを通してICT投資への最適化を実現します。
情報連携
ソフトウェアベンダーとの密接な連携。スマートなストレージ運用とパフォーマンス向上を推進します。
グリーン
環境に配慮した人にやさしいグリーン製品の開発。環境問題へ積極的に取り組んでいます。
クラウド基盤
クラウド・コンピューティングを支える最適なストレージ仮想化の提供により、柔軟なICT環境を提供します。
提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2012年12月31日
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