IDEALモデル(あいでぃーいーえいえるもでる)情報マネジメント用語辞典

IDEAL model

» 2007年11月06日 00時00分 公開

 組織におけるプロセス改善を推進する際、具体的な活動内容を計画・定義できるよう、改善活動の典型的なライフサイクルを示したリファレンスモデル。「開始」「診断」「確立」「行動」「学習」の5つのフェイズで構成されており、各フェイズの頭文字から「IDEAL」と呼ばれる。

 もともとはソフトウェアプロセス改善(SPI:software process improvement)プログラムにおける改善活動の計画・実行を支援するためのモデルで、カーネギーメロン大学 ソフトウェアエンジニアリング研究所(CMU/SEI)によって定められた。現在では、組織変革のモデルと位置付けられる。

ALT IDEALモデル(CMU/SEI資料を参考に作成)

開始フェイズ( I −initiating)

 プロセス改善の実施に先立って、改善活動の背景を明らかにして改善の動機付けを行い、主催者の態度を固め、支援体制・活動体制を確立する。IDEALモデルでは、各フェイズを繰り返し行うことが前提となるが、開始フェイズだけは原則として改善活動に着手する最初に1回だけ実施する。

診断フェイズ( D − diagnosing)

 評定や診断などを実施して改善活動の対象である組織/プロジェクトの現状を評価するとともに改善後の状態(ゴール)と比較して、ギャップや改善ポイントを明らかにする。

確立フェイズ( E − establishing)

 診断フェイズで得られた結果に基づいて、プロセス改善活動の優先順位と取り組み方を策定し、具体的な改善計画を作成する。

行動フェイズ( A − acting)

 確立フェイズで作成された改善計画に従って解決策を作り、その先行評価・試行・パッケージ化・展開・長期支援移行を実施する。プロセス中心アプローチと問題中心アプローチの2つがある。

学習フェイズ( L − learning)※

 行動フェイズの結果を受けて、これまでの活動を分析してその妥当性を確認し、次のサイクルの準備を行う。ここでプロセス改善活動のレベル向上を計画したり、より効果的・効率的な方法を整理・提案するなど、継続的改善を定着させる。


※:初期の段階では“leveraging phase”だった。



 IDEALモデルは、CMU/SEIが発行している「IDEAL: A User's Guide for Software Process Improvement」というハンドブックで、詳細に活動内容が解説されているが、これらは参考であって具体的な改善活動は利用者が実情に合わせて定めていくことになる。

 また同じくCMU/SEIが開発したCMMIに基づくプロセス改善活動を行う場合、IDEALモデルが具体的な活動計画・手順策定の参照モデルとして標準的に活用される。ただし、必ずしもCMMIに取り組む際にはIDEALモデルを使用しなければならないというわけではない。逆に、IDEALモデルをISOなどの他モデルを利用した改善活動に適用することもできる。

 一方、米国国家サイバーセキュリティ・パートナーシップ(NCSP)が公表した情報セキュリティガバナンス構築のためのフレームワークでは、情報セキュリティプログラムを構築する際に、IDEALモデルは非常に有効であると推奨している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ