生き残るには自社内データの活用が必須SASとアクセンチュアCEOが対談

» 2010年10月29日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 米SASは10月27日(現地時間)、米国ラスベガスで年次イベント「THE PREMIER BUSINESS LEADERSHIP SERIES」を開幕。基調講演では、米SAS CEOのジム・グッドナイト(Jim Goodnight)氏と、SASと2月にパートナーシップを締結した米アクセンチュア 会長兼CEOのウィリアム・グリーン(William D. Green)氏が、ビジネス分析の重要性や教育について対談した。

 SASとアクセンチュアは、予測分析ソリューションの開発や実装の分野におけるワールドワイドのパートナーシップを2010年2月に締結。両社で共同投資を行い、金融業・ヘルスケア・公共向けサービスを皮切りに、業種特化型の予測分析ソリューションの開発などを行っていく予定だ。パートナーシップ締結後、両氏が公の場で対談するのは初めてだという。

両者の写真 米SAS CEO ジム・グッドナイト氏(左、米アクセンチュア 会長兼CEO ウィリアム・グリーン氏(右

 SASは1976年の創業以来34年連続で増収増益を達成中で、2009年の売上高は前年比2.2%増の23億1000万ドルに上る。ユーザー企業は約4万8000社。一方のアクセンチュアは、2010年8月期の売上高が216億ドルで、従業員約20万4000人を擁する世界有数のコンサルティングファームだ。

 このような世界有数の大企業を率いるアクセンチュアのグリーン氏は、現在の経済情勢下における企業環境について「現在の企業における重要な課題の1つは国際競争の激化だ。その中で、競争優位を保ちつつ差別化を明確にすることが経営者に求められている」と指摘した。また、グッドナイト氏は「競業他社よりも優位になるためには、事実に基づいて行動できる企業文化が重要。企業内にはさまざまなデータが存在しているが、それを分析することで戦略的な資産として使っていくことが非常に重要だ」とコメントした。

 しかし、現在のところ、企業が自社内のデータを戦略的な資産として認識しているケースは少ない。その点についてグッドナイト氏は、銀行や流通業のケースを例示。「例えば銀行は、古くからデータを、分析して活用する有効性に気付いていた。現在多くの銀行では、データを基に将来予測している。流通業においてはPOSが導入され始めたころから、POSデータを活用し始めている」と回答。

 一方のグリーン氏は、「しかし、このような事実/データに基づいて分析し、行動を起こすことは企業文化としてこれを定着させることが重要だ。そして、定着させるためにはファクト(事実)ベースに行動できる優秀な人材とそれを実現できるような仕組みがカギとなる。その際、ITは技術トレンドを追うのではなく、ビジネスに貢献できるアウトプットを考える必要が出てきている」と説明した。

 そして、ファクトベースに行動し、分析力を活用できる組織になるためには、部門ごとに変革を進めていくアプローチや、世代交代が必要だという。例えば、マーケティング部門は、以前からさまざまなセグメントデータを分析して事実を発見し、施策を生み出している。このような従来からの役割を拡大し、データ分析の活用例を部門ごとに増やしていくことが重要なのだ。また、企業文化を変化させるために、データを活用できる若い世代への交代も重要だと両氏は訴える。

 実際にSASでは、ビジネスオポチュニティとパイプライン分析に基づく売上予測を実施しており、経営陣はこれらの情報をいつでもダッシュボードで見ることができるという。一方のアクセンチュアは、世界中にある支社の状況について「ローカルでの活動はどうか、レバレッジが効いているか」といった視点でビジネスが見えるようにしているという。

 では、分析結果を生かして、事実に基づく行動ができるような組織はどのように作っていけば良いのだろうか。この点についてグッドナイト氏は、「今日、想像力のある人材はアメリカではなく、インドをはじめとするアジアから創出されている。これは現在のアメリカの教育システムの重大な問題だ。アメリカの産業において、重要になっているのは正しい意思決定をできる能力、そしてそれを養う教育だ。分析を活用できる能力は、優良企業を、さらに素晴らしい企業にしていくためにとても重要なスキルだ」と答える。

 また、グリーン氏も「現在のアメリカの大学においては、学科ごとに専門化・細分化がされすぎていて、意思決定能力を磨くような横断的な教育プログラムが存在していない。今後、分析能力をトレーニングするアナリティクスアカデミーのような教育プログラムが重要になってくるだろう」と答え、大学の教育プログラムを変更する必要があると両者が強く訴えた。

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