
e-ビジネスに最適なデータセンター選びのポイントを紹介
【特集】データセンター活用術
鈴木淳也=取材・文
アットマーク・アイティ 編集局
2000/12/14
| Part.3 データセンター活用事例 |
これまでの章で、データセンターが提供するサービスの概要や選択の際のポイントについて解説してきた。本章では、実際にデータセンターを活用してビジネスを実践する企業の事例を紹介していくことにしよう。
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「ビット・バレー」の呼称で名をはせる渋谷のベンチャー企業群の中で、その先鋭として注目を集める企業の1つが「オン・ザ・エッヂ」だ。同社は、ホームページの受託制作を主業務としており、音楽プロデューサー小室哲哉氏のTK56や、WebメディアのHot Wiredなど、これまで数多くの著名なホームページの制作を手がけてきている。また、広告代理店のサイバーエージェントとの共同開発プロジェクトである、クリック保証型バナー広告配信システム「CyberClick」やメールマガジンポータル「melma!」にみられるように、システム開発面でも高い技術力をもっている。
今回紹介するオン・ザ・エッジのデータセンターサービス「データホテル」は、同社がホームページ制作を手がける中で、「成果物を載せるための器を自前で用意する」という考えをもとに生まれた事業だ。
■HP制作から運用・保守まで、ワンストップで提供
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| 「コンテンツ制作から運用・保守まで一連のサービスを提供できます」と同社の強みを語る取締役管理本部長 和井内修司氏 |
いま盛り上がりを見せるデータセンター事業では、その参入事業者の多くがキャリアやISPといった基礎インフラを提供する企業なのに対し、オン・ザ・エッヂはその上で動作するコンテンツの制作を得意とする企業である。
「足回りは提供するので、あとのシステムの構築はご自由にお任せします」というのではなく、自社で作成したホームページ(サイト)を「我々のデータセンターにサイトを置いていただければ、運用・保守まで面倒をみますよ」という、逆のアプローチを提供するのが同社のユニークな点だ。つまり、ホームページを制作して、そのデータを自社のデータセンター内に置き、運用・保守まで、一連のサービスをワンストップで提供するのである。
同社のデータホテル内には、計20名のエンジニアがつめている。内訳は、15名が24時間3交代のシフト制でシステムの管理にあたり、残りの5名がシステムの設計や構築作業を担当する。データホテル事業本部 マネージャー 山崎徳之氏は、「キャリア系のデータセンターはネットワーク系のエンジニアが多く、SI業者が運営するデータセンターは、いわゆるDBなどのアプリケーション系のエンジニアが充実しています。我々の場合、サーバ運用系のノウハウをもつエンジニアが多いのですが、これは業界でもめずらしいほうだと思います」と、同社のデータホテルがサイトの運用・保守面にフォーカスし、単にマシンの再起動や定期レポートだけではない、顧客のきめ細かい要求に対応できることを強調する。
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| データホテルのロビー風景 |
また、付加サービスとして、ユーザーがサイト上で広告配信を行いたいと思った場合、「Ad 4 Portal」という広告配信サービスを受けることも可能だ。Ad 4 Portalはデータホテル内で運用されており、データホテルを利用する顧客はもちろんのこと、他の場所にサイトがある場合でも利用できる。
山崎氏は「Ad 4 Portalなどのサービスの実現に、しっかりとした足回りが必要だった」と言う。同社では、バックボーン直結のメリットを活かして、顧客のサイト運営以外にも、自社のサービス運営にデータホテルを活用しているのだ。
■「しっかりしたインフラが提供されるか」が選択の基準
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| データホテルの運営を統括する、データホテル事業本部 マネージャー 山崎徳之氏 |
データホテルは、電源や設備、インターネット・バックボーンへの直結など、UUNETのデータセンターを利用する形で運営されている。つまり、基本的なインフラの提供を受ける形で、その上にさらに付加サービスを加えたデータセンター事業を顧客企業に対して提供しているのだ。同社が、数あるデータセンター事業者の中から、この基礎インフラ提供で協業先を選んだ基準はどこにあるのだろう? 前出の山崎氏によれば、融通が利くこと、そして“タイミング”の問題が大きかったのだという。
同社では、データホテルのコンセプトを今年の2月に発表し、4月からサービスを開始している。実質2カ月に満たない準備期間でコンセプトを実現するには多少“ムリ”が利くほうがいい。そのうえで、しっかりした足回りや体力を有しており、必要な要件を満たしてくれること。これらを条件に選んだ結果、タイミング的にUUNETとの協業が決まった。
もちろんコストの問題もあるだろう。だが、サービス開始当初は魅力的だった価格体系も、各社間での熾烈な価格競争により、むしろ現在では同社が望む水準より高めな印象さえ受けるという。単にホスティングサービスを利用するだけとは異なり、こういったデータセンター事業を運営する同社の場合、価格に応じてすぐにインフラ提供事業者を変更するようなことは難しい。つまり、コスト面ももちろんだが、きちんと足回りが提供され、こまめに要求を満たしてくれる業者を選ぶということが、1つのポイントなのかもしれない。
これに関して、1つ面白い話を聞いた。データホテルとUUNETのバックボーンとは155Mbps×2=310Mbpsという広帯域で接続されているが、ピアリングの問題もあり(ISPのバックボーン同士を接続して特定箇所へのトラフィックの集中を防ぎ、アクセスの高速化を図ること)、実際には一部サイトによって遅延が発生してしまうことがあった。多くの場合、こういった類の遅延はすぐに解決できるものではない。要望だけ伝えて半ばあきらめていたところ、1カ月後にUUNET側から突然「改善しました」旨の連絡をもらえたのだという。サービス要項で保証されるようなことではないが、こういったこまめな対応は、スピードが命の業界にとって重要なポイントかもしれない。
■いかにサービス品質を向上するか? 今後の課題
同社がデータホテルを運用してきたことで分かったのは、安定したインフラ確保の難しさだ。中でも、熱処理と電源の確保が悩みの種なのだという。Webサイトのダウンタイム=営業損失ととらえれば、安定したサーバの運用はデータセンターの至上命題でもある。今後も引き続き、この部分には注意を払っていくことになるだろう。
インターネット普及と拡大にあわせ、今後データセンター事業への参入組も増え、確実に競争は激化していく。そういった状況で、同社が今後の目標に掲げるのは、当然ながらコストの削減と、それによる売り上げの向上である。だがそれだけでは、スケールメリットを武器に参入してくる既存の大手事業者に立ち向かうのは難しいだろう。同社では、サイトの開発から運用・保守までをワンストップで提供できることをメリットに、人員増強でサーバ管理のクオリティの維持や、サポートセンターを設置していくことも目標に掲げる。この部分で、他社との差別化を図ろうというのだ。
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また同社はこれらの事業とは別に、オープンソースコミュニティなどに無償でサーバやインフラを提供する活動も行っている。今年夏に発表したRing Server Projectへの参加とサーバの無償提供は、その活動の一環だ。事業に直接貢献するものではないが、「インターネット発展への貢献」という観点から、将来的には同社のブランドイメージの向上につながるものだと考える。
新サービスの展開も積極的に行っている。同社では、9月よりIPv6試験サービスとVPN試験サービスの運用をデータホテル上にて開始した。今後のサービスメニューの拡充に向けて、データホテルを新技術の実験場として利用していこうというのだ。
このように、オン・ザ・エッヂにとってのデータセンターとは、制作した顧客のサイトの受け皿であると同時に、同社が提供するサービスの拠点であり、新しいサービスを提供していくための実験場(開発室)なのである。ネットベンチャーである同社にとって、データホテルはまさに基幹インフラなのだといえる。
今回は、データセンターの基礎インフラを使い、その上でさらに付加サービスを提供するデータセンター事業を展開するというユニークな活用事例を紹介した。次回のPart.4では、ASPをはじめ、データセンターを活用したビジネスの将来の可能性を探っていこう。
| Index | |
| 【特集】 データセンター活用術 | |
| Part.1 データセンター最新トレンド データセンターは情報発信向けのサービス 特徴とメリット サービスの提供形態 [コラム] Webアプリケーション構築環境のホスティング |
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| Part.2 データセンター選択のポイント ネットワーク性能で選ぶ? 運用体制で選ぶ? 場所で選ぶ? [コラム] データセンターは本当に必要? |
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| Part.3 データセンター活用事例 「データホテル」(株式会社オン・ザ・エッヂ) |
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| Part.4 データセンターのこれから (近日公開) |
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| 「Master of IP Network総合インデックス」 |
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