
第3回 FIPS 140-2認定がもたらすユーザーへの恩恵
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)
暗号モジュール評価基準WG
2005/2/23
第1回「暗号モジュールの安全性について考える」および第2回「各国で採用されるFIPS 140-2の重要性」を通じて、FIPS 140-2(連邦情報処理規格140-2:暗号モジュールのセキュリティ要件)とは何か、なぜ重要なのかを説明しました。今回はユーザーの視点に立ち、FIPS 140-2認定製品を使うメリットは何なのかについてお話しします。
2005年2月1日現在FIPS 140-2(FIPS 140-1を含む)の適合認定を取得した製品は506あります。その内訳はPKIに欠かせない暗号用のセキュアボードからSSLアクセラレータ、スマートカードにUSBトークン、暗号化ソフトまでさまざまです。暗号が使用されている製品であれば、各カテゴリにおいて少なくとも1つはFIPS 140-2の認定を取得している製品があるでしょう。
何に対して安心するのか |
第1回「暗号モジュールの安全性について考える」で、暗号製品はさまざまあり、また各国の政府でも推奨している暗号があることをお話ししました。例えばAES(Advanced Encryption Standard)は米国政府推奨の暗号の1つです。しかし、ある製品が「この製品は次世代標準暗号のAESを使用しているので安全です!」とうたっていた場合に、どのような問題が考えられるかをお話しします。
最初の問題は「そもそもAESを使用しているか」です。インターネットで「aes.c」で検索してみると山ほどヒットすることがお分かりになるでしょう。それではすべてがAESなのでしょうか?
例えば、とある製品では使用可能な暗号方式としてAESとAES FIPSという2つを列挙しています。しかし、AESはFIPS 197として規定されているものしかありません。つまり、仮に一方がFIPS 197に準拠しているものだとすると、もう一方は一体何なのかという疑問がわきます。
米国政府が推奨し、安全性が評価されている AESは唯一であり、1bitでも独自の処理を加えたものはAESとは呼べません(いわばオレオレAESです)。このオレオレAESは何の安全性評価も受けていないので、使用するのは大変危険といえるでしょう。
次の問題は、ある製品が実際にAESを実装していたとしても、その使用方法に問題があるかもしれないということです。例えば、鍵はどのように生成し、どのように保存されているのでしょうか? 誰が問題ないことを確認したのでしょうか?
よく見掛ける「XXX暗号を使っているから安全です!」という表現は、実はとても根拠のない主張なのです。
第三者評価による安全性の証明 |
さて、FIPS 140-2認定を取得した製品が同様に「この製品は次世代標準暗号のAESを使用しているので安全です!」とうたった際にはどうなるでしょうか。
まず、FIPSで規定されている暗号に対しては規格どおりに実装されているかのテストが行われます。ですからAESのようにFIPSで規定された暗号は規格に準拠していることがテストを通して証明され、NIST(National Institute of Standards and Technology:国立標準技術研究所)がそれを認定します。
次に、AESを実装した製品に対してもソースコードを含めてのレビューテストが行われます。FIPS 140-2の規定する各分野に対して膨大なドキュメント、およびそれを証明するための各種ソースコードが評価機関によってレビューされます。ハードウェア製品の場合は回路図、組み立て図を含めてレビューが行われます。
実際にNISTが発行しているCMVP(暗号モジュール認定制度:Cryptographic Module Validation Program)FAQには、アルゴリズムテストを受けた製品のうち約4分の1の製品に不適合が見つかり、また暗号モジュールのテストでは約半数に不適合が見つかったと記されています。ドキュメントでは95%以上の不適合が見つかったことが報告されていて、いかにベンダによる「自称」安全の根拠が信じにくいかが分かります。
「一定」のセキュリティの保証 |
FIPS 140-2認定製品を使うことによって「一定」のセキュリティレベルがユーザーにはもたらされます。ここでの「一定」というのは、最低限FIPSで規定されているアルゴリズムが規格どおりに実装されていて安全に使用できる環境がある、という意味です。
FIPS 140-2は各分野においてセキュリティレベルが1から4まで規定されていますので、特定の分野だけにおいてより高いレベルのセキュリティを提供する製品から、全分野において高いレベルのセキュリティを提供する製品があります。
ユーザーはFIPS 140-2認定製品を使用することによって「一定」のセキュリティを最低限入手でき、また必要であれば「より高い」レベルのセキュリティを入手できます。米国の政府機関は法律によってFIPS 140-2認定製品を使用することが定められていて例外は認められていません。政府機関によっても環境はさまざまですので最低限のセキュリティでよい部署もあれば、高レベルのセキュリティが必要な部署もあります。重要なのはFIPS 140-2認定製品を使用することによって最低限のセキュリティが最初から保証されていることです。
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| Index | |
| FIPS 140-2認定がもたらすユーザーへの恩恵 | |
| Page1 何に対して安心するのか 第三者評価による安全性の証明 「一定」のセキュリティの保証 |
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| Page2 暗号モジュールのテストラボに聞く FIPS 140-2の今後 |
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暗号モジュール評価の基礎知識 バックナンバー
- 第1回 暗号モジュールの安全性について考える
- 第2回 各国で採用されるFIPS 140-2の重要性
- 最終回 FIPS 140-2認定がもたらすユーザーへの恩恵
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