システム管理者のための.NET入門

第1回 なぜ.NETが必要なのか?

デジタルアドバンテージ 小川 誉久
2006/11/17

 マイクロソフトが“.NET”(ドットネット)と呼ばれる新しいコンセプトを発表したのは、2000年6月のことだった。いまから6年以上も前のことである。実はこれから数カ月後の2000年11月、筆者はInsider.NETフォーラムの開設に合わせて.NETの紹介記事を書いている。遠い過去の記事を紹介するのはお恥ずかしいのだが、ここにリンクを記しておこう。

Microsoft .NETのコンセプトを発表する、スティーブ・バルマーとビル・ゲイツ
.NETのコンセプトは、2000年6月に発表された。

 この当時.NETを知るための情報は、マイクロソフトがインターネットに公開したドキュメントくらいで、かろうじてVisual Studio(開発環境)の初期アルファ版が公開されていた程度だった。上記記事の冒頭で述べているとおり、情報は未整理で錯綜していた。記事執筆時の私の仕事は、錯綜(さくそう)する情報を整理して、新出用語などを説明しながら、何とかしてそれらを一本の筋道に乗せることだったと記憶している。

開発者には浸透した“.NET”

 あれから6年。.NET対応アプリケーション開発を強力にサポートする開発環境のVisual Studioは第三世代製品が(Visual Studio .NET → Visual Studio .NET 2003 → Visual Studio 2005)、.NET対応アプリケーションを実行可能にするランタイム(実行用ライブラリ&実行環境)の.NET Frameworkは第四世代製品が登場している(.NET Framework 1.0 → 1.1 → 2.0 → 3.0)。

 .NET対応アリケーションの実行に不可欠なランタイムの.NET Frameworkは、当初はWindowsに追加インストールする必要があったが、Windows Server 2003には当初からコンポーネントとして組み込まれて出荷されているし、Windows XPについても、大手PCベンダが現時点でプレインストールして販売するものについては、ほとんどの場合最初から組み込まれている。そしてもちろん、まもなく発売されるWindows Vistaでは、.NET Frameworkの最新版(Ver.3.0)が標準コンポーネントとして組み込まれて提供される。

 こうした.NET Frameworkランタイムの普及に加え、マイクロソフトは、自社サーバ製品の.NET対応を進めている。社内情報共有サーバのSharePoint Portal Server 2003/WSS(Windows SharePoint Services)は、すでに.NET対応アプリケーションであり、最新版データベースのSQL Server 2005でも、.NET対応言語(C#やVisual Basic 2005など)でストアド・プロシージャを記述するなどが可能である。またグループ・ポリシー管理コンソール(GPMC)のように、.NET Frameworkを利用する管理ツールも増えてきている。

 内外のパッケージ・アプリケーションの.NET対応はこれから一層進むものと思われるが、Windowsベースの業務アプリケーション開発では、すでに.NETテクノロジを採用するケースが主流になりつつある。.NET Frameworkでは、強力なメモリ管理やセキュリティ管理といった低レベルの機能に加え、業務アプリケーションの開発工数を大幅に削減可能な高度なアプリケーション・フレームワーク(業務アプリケーション開発に利用できる汎用サービス群)などが提供される。また開発生産性の高い最新の開発環境(Visual Studio)上で、C#やVB、C++など、さまざまな言語も利用できることから、機能性や信頼性の高い業務アプリケーションを低コストで開発できるというメリットがあるためだ。

 このように、ソフトウェア開発者にとって、“.NET”はすでに身近な存在だ。少なくとも新規のソフトウェア開発において、使い勝手もよく生産性の高いVisual Studioを開発環境として選択するのはもはや当たり前になっている。また、.NET Frameworkが提供してくれる高度なサービスに慣れてしまうと、もはや昔の環境には戻れないという話も開発者からよく聞く。ソフトウェア開発における.NETは、実用段階に入って久しいといってよいだろう。

 しかし、開発されたビジネス・アプリケーションを展開し、運用するシステム管理者にとって、“.NET”が身近な存在かといえば、そうとはいえない状況だ。もちろん存在は知っているし、恐らく自分自身は便利に使っていたりするのだが、いざ.NETベースの業務システムを導入しようとか、クライアントPCに組織的に.NET Frameworkを展開しようなどというと、ネガティブな意思表示をする人が多いのではないかと思う。

 本当に問題なく動くのか? 既存のアプリケーションの稼働に影響を与えないのか? 信頼性は? そもそも、.NETを採用するメリットはどこにあるのか? などといった疑問を持っている管理者は少なくない。過去において、新しい技術や製品を採用した結果、苦労を強いられた経験のある管理者ならなおさらだ(残念ながら、こういう経験を持つ管理者は多い)。「開発者にどんな利点があるのか知らないが、自分には関係がない。やっと落ち着いて問題なく動くようになったシステムなのに、どうしてまた寝ている子を起こすようなことをしないといけないのか?」。

 事実昨今では、情報システム開発において、開発者が.NETの採用を強く要望したにもかかわらず、運用担当者側からブレーキがかかって採用が見送られるというケースも発生していると聞く。何もやみくもに.NETを持ち上げるつもりはないが、.NET対応アプリケーションの普及は時代の流れである。システム管理者としても、新しい.NETとはどのようなもので、どんな利点があるのかを把握し、.NET採用の可否を正しく評価できるようにしておきたいところだ。

システム管理者の視点で.NETを眺めてみよう

 マイクロソフトは、自社のWebサイトなどで大量の.NET関連情報を発信している。しかし米Microsoftの英語情報も含め、ほとんどのドキュメントはソフトウェア開発者を対象にしたものばかりで、システム管理者を対象に、.NETテクノロジを分かりやすく解説したものは非常に少ないのが実情だ。知ることができなければ、安心して使うことなどできようもない。

 今回開設した「.NET管理者虎の巻」のコーナーの目的は、システム管理者に対し、.NETへの理解を深めてもらうことである。同じ.NETの解説であっても、開発者向けとシステム管理者向けでは着眼点や説明方法は大きく違うはずだ。このため当コーナーでは、開発者向けとしてはすでにあふれている.NET関連情報を、システム管理者の視点から見直していこうと思う。

 コーナー第一弾となる今回の「システム管理者のための.NET入門」では、.NETの必要性と技術概要についてまとめてみたい。.NETはなぜ必要なのか? .NETによって何が可能になるのか? .NETとは具体的にどのようなテクノロジなのか? などといった基本的な疑問について、管理者の視点から眺めてみよう。

 「知らないから使わない」という消極的な態度ではなく、.NET対応システムの価値を正しく評価し、システム管理者の立場から、採用可否の議論に積極的に関与できる「.NET管理者」になるための一歩として活用いただければ幸いである。

 

 INDEX
  システム管理者のための.NET入門
第1回 なぜ.NETが必要なのか?
    1.変化に柔軟に対応できる情報システム
    2.これからの情報システムに何が必要なのか?(1)
    3.これからの情報システムに何が必要なのか?(2)
 
目次ページへ  「システム管理者のための.NET入門」
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