ICDロゴ

PHS (Personal Handyphone System)

【ピー・エッチ・エス】

最終更新日: 1999/05/19

 デジタル移動体通信サービスの1つ。家庭用コードレス電話機をそのまま屋外でも利用できるようにするという発想で考案され、1995年7月より一部の地域(首都圏および北海道)でサービスが開始された。

 このようにPHSは、家庭用コードレスホンをベースとして開発されたため、電話機端末の出力電波も10mW程度と、携帯電話機(10W〜20W程度)と比較すると大幅に小さく、容量の小さなバッテリでも長時間の通話が可能で、また携帯電話機と比較すると、小型・軽量の電話機製造に向いているという長所がある。しかしその一方では、基地局からの通話範囲は100m〜300mと狭く、通話可能エリアを広げるためには、携帯電話のそれよりもかなり多い基地が必要になる。たとえば東京23区全域をカバーするために、携帯電話の基地局は60程度でよいが、PHSでは4万程度が必要とされる。また1つの基地局での通話範囲が狭いので、自動車などで高速に移動するとハンドオーバー(ある基地局から、別の基地局に通信先を切り替えること)が多発し、事実上、安定的な通話が不可能という欠点がある。ハンドオーバーの機能自体は持っているので、移動しながらの通話は可能だが、PHS事業者の説明によれば、「徒歩程度の移動なら通話可能」ということになる。

 今述べたように、PHSでは多数の基地局が必要とされるが、基地局と公衆網の接続には広く普及したISDNのインフラストラクチャを活用しており、基地局1つあたりの設置コスト、運用コストはかなり小さい。基地局の設置コストは、携帯電話のそれの200分の1程度とされる。このように基地局の設置コストが小さいため、ビルの内部や地下鉄の駅構内などに基地が設置され、携帯電話の電波が届かないところでもPHSなら通話できるという場面も少なくない。

 PHSには、屋外で基地局と通信して通話する「公衆モード」以外にも、家庭やオフィス内に設置した親機(ホームターミナル)の子機として機能する「内線モード」や(子機同士の内線通話も可能)、親機や基地局を経由せずに、子機同士で直接通話する「トランシーバモード」がある。

 PHSの大きな特長の1つは、データ通信性能が高いことである。音声通話を前提として設計された携帯電話では、データ通信速度は9600bps程度だが、PHSではPIAFSやαDATA方式によって、1995年4月から32kbpsでの高速データ通信が可能だった。また1999年4月1日からは、NTTドコモがPHSでの64kbpsデータ通信サービスを開始、DDIポケットなどもこれに追随する予定である。

 しかし、端末の小型・軽量化、安価な通話料などで、PHSは先行する携帯電話市場に食い込むことを目論んでいたが、自動車などで移動しながらの通話が困難だったこと、携帯電話端末の小型・軽量化が予想以上に進み端末の差別化が困難になってしまったこと、携帯電話の通話料金が相次いで値下げされ、通話料的にもPHSのメリットを打ち出しにくくなってしまったことなどから、普及にはずみはつかなかった。現在では、PHSは携帯電話と競合するというよりも、高速なデータ通信能力などを活かして、携帯電話と住み分ける方向にある。

Copyright (C) 2000-2007 Digital Advantage Corp.

アイティメディアの提供サービス

キャリアアップ