ガートナーのITインフラ&データセンターサミット

クラウドは目的でなく手段、ビジネスをITで駆動せよ

2011/05/02

 「世の中では価値観が変わり、儲け方が変わってきている。このことをIT部門は(経営に)言っていかなければならない」――。ガートナージャパンは4月27、28日に「ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2011」を開催。ガートナー リサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は、基調講演でIT部門のリーダーに向け、奮起を促した。

 中東における革命にも強い影響を与えているTwitterなどを例に、商品についての評価も一瞬にしてネット上を駆け回るような時代になっていると亦賀氏は指摘。消費者が「安い」「早い」「より満足」を求め続ける時代に対応するには、ITテクノロジをツールとしてではなく、武器として捉え、活用していく必要があると話した。一方で、ITでは「これまでの常識を超えた大量処理が可能になった」ことにより、商品開発やマーケティングにも新たなやり方が生まれている。例えば、Twitterで発信される情報から、ある言葉についてのセンチメント分析(肯定的か否定的か)が行えるサービスも登場していると、同氏は語った。

 クラウド化の流れのなかで、すべてが社外のパブリッククラウドサービスに移行してしまうのではないかという懸念を持つ人々も多いが、ガートナーの調査では企業の76%がプライベートクラウド(社内クラウド)により多くの投資を行うと答えており、用途に応じて割り切った使い分けがなされていくだろうという。

gartner01.jpg ガートナー リサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀氏

 ビジネスの継続性のためには、ビジネス・アーキテクチャ、プロセス、ロケーションの継続的な見直しが求められる。これらへのテクノロジの影響が強まるばかりの時代には、IT部門のリーダーが「テクノロジ駆動型ビジネス」を目指して影響力を行使すべきと亦賀氏は訴えた。

 また、日本郵船のCIOを務めた経験を持ち、現在同社の技術開発と人材開発を行う子会社MTIの社長である安永豊氏は、「クラウドは目的ではなく手段」と訴えた。

 安永氏は同社の定航系基幹システム構築に関わった経験から、クラウド的なIT活用によって情報を集中化し、業務最適化を進めることが可能になったが、これによって明らかになったのは現場の重要性だったと話した。グローバルでの業務プロセス改革の必要性が再認識された。

 一方で、経営課題へのソリューションを提供すべきシステム部門については、システムを構築するという発想から、データ、情報をいかに使うかという発想への転換の必要性が痛感されたという。そこで、業務が分かり、システムを適用できるビジネスアナリストを育成し、業務改善やビジネスプロセス設計の支援・提案が行えるように努めているという。

 安永氏は、「業務革新を起こさなければならないのは誰なのか」と問題を提起した。クラウドは目的でなく手段であり、クラウドが進むほど現場の重要性が増す。経営の関心を現場に向かわせるのもITの仕事だと同氏は訴えた。

(@IT 三木泉)

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