アーキテクチャ・ジャーナル

環境に優しいインフラストラクチャ設計

Lewis Curtis
2009/09/08
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本コーナーは、マイクロソフトが季刊で発行する無料の技術論文誌『アーキテクチャジャーナル』の中から主要な記事をInsider.NET編集部が選び、マイクロソフトの許可を得て転載したものです。基本的に元の文章をそのまま転載していますが、レイアウト上の理由などで文章の記述を変更している部分(例:「上の図」など)や、図の位置などを本サイトのデザインに合わせている部分が若干ありますので、ご了承ください。『アーキテクチャ ジャーナル』の詳細は「目次情報ページ」もしくはマイクロソフトのサイトをご覧ください。

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 環境に優しいデータ センター設計における廃棄物削減では、従来の IT アーキテクチャ目標が引き続き有効です。

  • IT の再利用の促進
  • IT の複雑さの緩和
  • 利害関係者の協調
  • 機能面および非機能面の最適化(システム品質の目標値)
  • 資金の有効活用

 とはいえ、低電力消費で環境に優しい IT ソリューションの設計を成功させるには、その他のシステム品質評価指標で測られる環境影響についても考慮しなければなりません。IT アーキテクトは、すべての設計ターゲットにおいて、それらの評価指標を考慮事項に入れる必要があります。これらの設計ターゲットには、たとえばネーム サービス、バックアップと復旧、管理システムとネットワークのインフラストラクチャなどが含まれます。

ビジネス目標の認識

 社内活動、顧客プロジェクト、また業界の専門家によるさまざまなグリーン化の取り組みについて調査すると、グリーン化のプロジェクトで成功を収めているアーキテクチャ業界のリーダーは、主に次の 3 つの点に焦点を合わせていることがわかります。

  • 誰または何をターゲットとするのか(あるいは、しないのか)を具体的に定める。
    - 規制機関
    - ビジネス ユニットやアクティビティ
    - 一般の人々で構成される特定のターゲット層

  • 採用する、あるいは無視する指標を具体的に定める。
    - 顧客中心の指標
    - 運用に焦点を合わせた指標
    - 一般の人々(顧客ではない)の意識を重視した指標

  • 包括的な行動計画を策定し、以下のものを利用して環境に優しいソリューションを開発する。
    - テクノロジ
    - プロセス
    - 戦略

 グリーン化の目標分析を行うのに役立つインフラストラクチャ アーキテクチャ設計アプローチは、複数存在します。

環境への影響を測るデータ: エネルギー消費と環境影響について

 データ センターは、近年急速にエネルギー消費量を増やしている産業分野の 1 つですが、その背景には、以下のような理由があります。

  • IT システムは、規模の大きなソリューションに電力を供給するため、ますます多くのエネルギーを必要としています。また、アーキテクトは、より複雑な処理要素および依存関係を持つシステムを設計するようになっています。

  • 物理サーバーによるエネルギー消費は、ここ 5 年で急増しています。

  • ソリューションが寿命を迎えるよりはるかに速いペースで、新しい IT ソリューションが次々と企業に導入されています。

エネルギー消費

 企業のエネルギー消費源および消費量が温室効果ガス(GHG)の排出に大きくかかわっているという認識は、企業間でも広まりつつあります。このような意識の高まりを受けて、現在企業では次のような数式が使用されています。

エネルギー消費の削減量
= 温室効果ガス排出の削減量
= データ センターおよびビジネスの削減された運用コスト

 アーキテクチャ モデルにおいては、よりエネルギー効率に優れたシステムを採用するとともにシステムの数を減らし、アプリケーション環境をリファクタリングして物理リソースの使用を最適化(より少ないコードとシステムでより多くの処理を実行)すること、および低エネルギー消費で GHG 排出量の少ないプロバイダーを利用することを意味します。

 通常、データ センターは次の 4 つの基本分野でエネルギーを消費します。

  • 基幹コンピューター システム(サーバー、ネットワーク、ストレージ)
  • 冷却システム
  • 配電ユニット(PDU)などの電力変換
  • 設置環境(その他のすべて、照明など)

環境モニタリング

 測定できないものを管理することはできません。そのため、企業では適切な環境測定ソリューションが必要とされています。環境のモニタリングによって消費と出力を測定し、実用的な指標を策定し、予測を立てることが必要なのです。

 以下のテクノロジによって、データ センター要素のエネルギー消費と熱出力を測定することができます。

  • 回路メーター(データ センター ゾーン領域やラックのグループ)
  • 電源タップ メーター(システムのグループまたはラック)
  • プラグ メーター(単一の物理システム)
  • 基板コントローラーのエネルギー消費量測定(単一の物理システム)
  • 外部の熱センサー測定(所定の階またはラック エリア)
  • 内部のサーバーの熱測定(単一の物理システム)

拡張可能なアーキテクチャ

 環境への影響に配慮するアーキテクチャは、拡張可能でなければなりません。ほとんどの環境測定インターフェイスは各ベンダー独自のものであるため、IT アーキテクトはそれらの通信モデルを統合して、拡張可能な通信アーキテクチャを構築する必要があります。測定のインターフェイスやテクノロジが進化しても、ソリューションを標準化および拡張できれば、複雑さの増大は避けられます。

 効率的な環境測定環境を設計するには、既存のサービスを活用する、機能的に分断された環境を統合することが不可欠です。

  • 独自のエネルギー API サービス。ほとんどのベンダーは、測定デバイスとのインターフェイスに独自の API モデルを使用しています。エネルギー測定アーキテクチャは多くの場合データ センター間で異なっているため、規模の大きな企業では、独自開発されたインターフェイス環境が複数存在することもあります。そのため、データ センターやテクノロジの壁を越えて適用できる、信頼性の高い設計基準を設定する必要があります。

  • エネルギー消費の通信バス。独自開発された多種多様な環境測定インターフェイス システム(および異なるバージョン)が混在しているため、企業は共通の通信バスを構築し、さまざまな測定システムおよびレポート システムに対応する共通のインターフェイス モデルとして環境モニタリング ソリューションを構築する必要があります。

  • エネルギー消費データの集約ゾーン。これは、頻繁に更新されることを念頭に置いて設計される、共通のデータ収集リポジトリです。この領域は、複数のデータ センターから環境データが集められるポイントとなります。

  • 構成管理データベース(CMDB)環境。名前が示すとおり、CMDB 環境には、主に静的な(ほとんど更新されない)システム構成情報が保存されます。構成上の決定が環境指標に与える影響を把握するには、この情報を測定システムと関連付けることが必要です。

  • GHG/ 環境測定基準。ほとんどの企業は、GHG の影響を測定するアルゴリズムを既に設定しているか、現在定義を進めています。通常、この数式はエネルギーの消費源と消費量に基づいています。ただし、環境ライフ サイクル アセスメント モデルの規模は、キャップ アンド トレード プログラムが成熟することで、さらに拡大される可能性があります。
     多くの場合、測定パラメーターへの影響の範囲は、企業の環境ライフ サイクル アセスメントを基に決定されます。ただし、これらの数式は、既存の環境測定環境とゆるやかに関連付けておく必要があります。これは、測定基準の変更にも対応できるようにするためです。

  • データ センターのカスタム データ ソース。共通の環境測定環境を設計する際には、しばしば、そのソリューションに不可欠な特殊なデータ ソースも含まれます。たとえば、特定のデータ センターのエネルギー価格やエネルギー源、運用に関連するロジスティック データ、データ センター共通のパフォーマンス データなどがあります。通常、これらのシステムは共通のインターフェイス基準と統合するより、別個に管理する方がよいでしょう。

  • 環境影響のプレゼンテーション モデル。さまざまなユーザーの状況を表すプレゼンテーションの集約ポイントです(図 1)。アーキテクトは、アーキテクチャの原則内で多様な設計オプションを活用して、このタスクを達成できます。

図 1: 共通の環境測定環境の設計


 INDEX
  [アーキテクチャ・ジャーナル]
  環境に優しいインフラストラクチャ設計
  1.ビジネス目標の認識/エネルギー消費と環境影響
    2.包括的な設計アプローチ/インフラストラクチャ環境の分割
    3.プレゼンテーション層/ビジネス層/情報リソース層の最適化
    4.環境に優しいアーキテクチャ設計のベスト・プラクティス

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