書評

.NET(ドットネット)とは何かを
知るための入門書3冊

デジタルアドバンテージ
2003/04/17

 

 マイクロソフトの次世代戦略をつかさどる「Microsoft .NET」というキーワードが紹介されてから、はや3年が経とうとしている。本フォーラムの記事(「初めてのMicrosoft .NET」)でご紹介したとおり、Microsoft .NETは特定の技術や製品を指すのではなく、マイクロソフトの次世代情報戦略全体を包含する、いわばスローガンのようなものだ。具体的には、Webサービス・テクノロジを土台として、さまざまなシステムが連携して情報処理を行うような情報環境を目指す。

 しかしマイクロソフト自身も、.NETをさまざまな場面で連発したため、それが特定の製品を指すものなのか(例えば.NET Enterprise Servers)、技術を指すものなのか、はたまたサービスを指すものなのか、いまなお自分の中で.NETを位置付けられないでいるユーザーが少なくないようだ。

 そこで今回は、初心者を対象としたMicrosoft .NETの入門書を3冊選び、ご紹介する。もう少し数がそろえばと考えて調べたが、今回ようなターゲットの書籍はほかには見つからなかった(検索にもれた書籍があるかもしれない。そのような書籍をご存じの方はご連絡いただきたい)。いずれも、技術者向けのホワイト・ペーパーやヘルプなどとは異なり、文章と図版類などを駆使しながら、Microsoft .NETが何かを説明しており、技術ドキュメントとは違った切り口でMicrosoft .NETを知るきっかけにできるだろう。

 ただし残念ながら、いずれの書籍も発行日がそれほど新しくなく、一部情報が陳腐化している部分があった。これは出版社の怠慢というより、書籍という媒体ではタイムリーな情報をフォローできないほど、変化が激しくなっているということが原因だと思われる。情報システム連携により、よりダイナミックな変化を促すことになる.NET時代は、こんなところからもすでに始まっているのかと感じさせられる。

■Microsoft .NET入門

アスキー書籍編集部編
アスキー発行
B5版変形 256ページ
ISBN4-7561-4113-7
2400円

 次の『よくわかる.NETテクノロジーのすべて』同様、ソフトウェア開発者を対象としたMicrosoft .NETの入門書。同書と比較すると、版型も大きく(A5版→B5版変形)、2色刷りで全体にすきっりした体裁をしている。

 本書は2部構成になっており、このうち第1部では.NETの概要から、Webサービスを構成する要素技術、.NET Framework、Visual Studio .NET(開発環境)やC#(開発言語)まで、Microsoft .NETの概要をひととおり解説する。

 続く第2部は、『Microsoft .NET完全解説』として発売されたムックの原稿を元に改定を加えたもので、.NET FrameworkやCLR、Webサービス、ASP.NET、ADO.NET、MSILなど、.NETにまつわるキーワード解説を行っている。

 読者対象はソフトウェア開発者だが、コード・サンプルの紹介などはあくまで説明の予備的な存在として最小限にとどめられているので、コード・アレルギーのある人でも問題なく読み進むことができるだろう。

 

■よくわかる.NETテクノロジーのすべて

David Chappell著/風工社 訳
インプレス発行
A5版 314ページ
ISBN4-8443-1656-7
2500円

 『Understanding .NET:A Tutorial and Analysis』の邦訳書。ソフトウェア開発者を対象として、.NET登場の背景から、.NETを構成する各要素技術を解説した書。

 本書のゴールは.NET開発者になるための第一歩を踏み出すことだが、開発者向けといっても、プログラム・コードの例示は最低限にとどめられており、教科書的な解説書として読み進むことができる。

 まずは、.NETやその中心的な技術であるWebサービスが開発された背景を説明し、Webサービスとして活用されるXMLやSOAPの概要、.NET FrameworkやCLRの概要を解説して.NETを位置付け、そのうえで、次からこれら個別の要素技術、開発環境、開発言語、.NET Framework、ASP.NET、ADO.NETの概要と機能などを章別に解説するというスタイルだ。各要素技術を1つずつ積み上げながら解説していくという教科書的なアプローチといってよいだろう。ただしこの過程では、欄外に「one point」という枠を設けて、本文解説の要点を改めて表記したり、読者の気になるポイントや周辺の話題をコラムとして説明したりと、退屈しない作りになっている。

 .NETの技術背景を基礎から学びたいと思っている開発者の方に適した解説書である。

 

■最新ドットネットがわかる

古山一夫 著
技術評論者 発行
A5版 192ページ
ISBN4-7741-1349-2
1580円

 最先端技術を、分かりやすく丁寧に解説するシリーズとして好評の「まるごと図解」シリーズのMicrosoft .NET版である。

 他の2冊は、基本的にプログラマを対象としたMicrosoft .NET入門書であるが、本書の読者ターゲットはプログラマだけでなく、プログラム・コードの読解を必ずしも得意としないマネージャ・クラスも読者ターゲットとして強く意識している点が特徴的だ。

 事実、コード・サンプルなどはほとんど掲載されておらず、概念を説明するイラストと本文により解説を進めている。「技術を詳しく説明する」のではなく、「その技術が生まれた背景は何で、その技術によって何がもたらされるのか」という、技術が持つ意味を噛み砕いて解説するというシリーズの真骨頂が本書でもみごとに再現されている。

 2部構成のうちの第1部では、本書の約半分のページ数を費やして、分散コンピューティング技術である.NETがなぜ生まれたのか、.NETによって何が変わるのかといった背景説明をじっくり行い、.NETの導入までを説明している。やや冗長にも思えるかもしれないが、これまで.NETの解説を読んでもいまひとつピンとこなかった読者は、こうした.NETの背景を十分に理解していない可能性がある。

 そして第2部では、XMLやSOAP、Webサービス、UDDIといった基本プロトコルを始め、開発プラットフォームである.NET FrameworkやC#言語などをテンポよく解説している。

 プログラム・コードを目にすることなく、.NETの基礎の基礎を身に付けたいと思う読者には最適だろう。End of Article
 

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