懐かしのゲームに見る十年後の価値

株式会社ピーデー
川俣 晶

2001/04/10
2002/05/31 更新

A列車で行こうMemorial Pack

 実は筆者はアートディンクの「A列車で行こう」シリーズのゲームが大好きである。最近になって、過去の作品を集めたA列車で行こうMemorial Packというパッケージが発売され、ついうっかり馬鹿な筆者は買い込んでしまった。やる暇もないというのに。

 このパッケージには以下のソフトが収録されている。

  • A列車で行こう 復刻版
  • A列車で行こう3
  • A列車で行こう3 マップコンストラクション
  • A列車で行こう4
  • A列車で行こう4 マップコンストラクション
  • A列車で行こう5 完全版ETERNAL

 これらのゲームはほとんど所有している。にもかかわらず買ってしまったのは、動作保証されたOSとしてWindows 2000が含まれていたためだ。つまり、所有していることと、それを今でも遊べることは別問題と言うことなのだ。PC-9801用のフロッピーディスクを所有していても、それは何の意味もないことなのである。正確に言えば、古いPC-9801VM2やPC-9801RA21も手元にあるので、やってやれないことはないのだが、古いマシンをいちいちセットアップする手間も面倒だ。

記念碑的な初代「A列車で行こう」

 1985年発売の初代「A列車で行こう」は、それまでになかったまったく新しいジャンルを切り開いたゲームである。ゲーム専門誌でもオリジナリティが褒めたたえられていた。アートディンクはたとえゲームのできは悪くても、オリジナリティの光るゲームメーカーであった。この評価を見た筆者は、その続編の「A列車で行こう2」が発売されたときに購入してはまった、という次第である。ちなみに、他の初期アートディンク作品としては、プログラムさせて戦わせるというコンセプトを、おそらく最初に実現した「地球防衛軍」というゲームも遊んだ。プログラムとしての完成度は低かったが、オリジナリティがあって面白かった。

 それはともかく、初代「A列車で行こう」はアクションゲーム的な要素が大きく、プレイヤーの操作する「A列車」が他の列車と接触するだけでゲームオーバーになってしまう。今となっては、あまりにシビアすぎて遊ぶのも辛い代物である。だが、あえて他社の真似をせず、まったく新しいゲームを作り出そうとする態度はあっぱれである。この志の高さが、無名のPCゲームメーカーだった同社を、現在のような立派な一流ゲームブランドに押し上げたのだろう。

PC-9801を再現した「A列車で行こう3」

 「A列車で行こう3」は、かつてCPUがV30-10MHzのPC-9801VM2で遊んだゲームなのだが、当時の画面がそのまま再現されている。Windows標準のお作法には適合しない使い勝手だが、これはこれで味がある。もともと画面サイズ固定のシステムで動いていたものなので、ウィンドウのサイズは変更できない。だがコンパクトなので、画面の片隅に開いておいて仕事の息抜きに利用するのにピッタリだ。その際、マルチタスクを意識していないソフトなので、処理が重くなると、フォアグラウンドでやっている仕事にも差し支える場合がある。これを解消するために、タスクマネージャを開いて、[プロセス]タブをクリックして、A3Win.exeの優先順位を最低にしておくとよいだろう(Windows 2000の場合)。

A列車で行こう3
PC-9801 VM2で遊んだ当時がそのまま再現された画面。画面サイズは固定で、ウィンドウ・サイズは変更できないが、画面の片隅に置いておき、仕事の合間に息抜きとして遊ぶにはもってこいだ。

遊べるようになった「A列車で行こう4」

 かつて筆者が「A列車で行こう4」のWindows版を遊んだのは、486マシンであった。そのときは、あまりの遅さと重さに絶句したものだ。スクロールなど、あまりに遅くて、なるべくスクロールさせないで遊ばなければならないほどだった。そのせいか、スクロールバーで、ページスクロールさせても画面単位ではなく、ほんのちょっとずつしかスクロールしない仕様だった。これが改善されていればよいと思って最新版を試してみたが、まったく直っていなかった。昔のままのソフトであった。

 ところが、何も変わっていないはずなのに、快適に動くのである。さすが、486とPentium 4の性能差である。世の中には、マシンが速くなると、それだけで話にならないソフトが実用ソフトに生まれ変わることがあるという好例だろう。

遠くまで見える「A列車で行こう5」

 「A列車で行こう5」は3D表示を採用した野心的な作品なのだが、広大な土地に膨大な建造物と乗り物が行き交うゲームだけに、遠くの物体は表示させないなどの制限を設定しないと遅くなりすぎて使い物にならない代物だった。だが、最近の高性能化著しい3Dビデオカードではすべてを最大に設定しても、軽々と動作した。ちなみに筆者が試したのはMillennium G450である。実際、遠くまで広がる町並みを3Dで見られないなら、このゲームの存在意義などない。そのことから考えると、実は、1996年に発売されたこのゲームが本当の意味で遊べるようになったのは、この2001年なのだと言えるかもしれない。

長い目を持とう

 15〜5年前のゲームを現在のパソコンで遊べるようにしたパッケージを見て思ったのは、物の価値とは時間を経てみないと分からないものもあるのだ、ということだ。特に最新のものを追い続ける立場の筆者としては感銘を受けた。今、.NETC#XMLといった新しい技術を追いかけているが、おそらく、今のこの瞬間に見える価値のほかに、5年、10年経過したときにやっと見えてくる別の価値があるに違いない。それが何かは、そのときになってみないと分からないが、少なくとも、今目に見える物だけで結論を下すのは早すぎると言うことは真実だろう。

番外・A列車で行こう2001

 以下は余談である。もちろん、筆者はこのシリーズの最新作「A列車で行こう2001」(PlayStation2版)も購入した。京王5000系が収録されたのは京王電鉄ファンとしては嬉しいことなのだが、結局のところ、このゲームは遊べない。なぜかと言えば、メモリカード1個に1データしか保存できないからだ。格好いい都市を建設して保存したいと思っても、そのたびにメモリカードを1個買わされるのでは話にならない。本来はハードディスクに保存して遊ぶべきゲームだろうが、肝心のPlayStation2用のハードディスクは未発売である。このようなせっかくのソフトを殺すような態度を取るゲーム機メーカーの態度は不誠実だと思う。ぜひとも次のA列車はPC版として発売してほしいと願うものである。

[追加(2002/05/31)]

 読者より続報が気になるという要望があったので付記する。PS2 Linuxを入手した際に、ハードディスクの全体をPS2 Linux用に確保せず空きを残して「A列車で行こう2001」のインストールを試みた。これは成功し、膨大な数のデータ保存用領域が確保できた。それだけでなく、画面のスナップショットを保存する機能が利用可能になった。これは表示画面を静止画で保存する機能である。そして、オプション・ソフトの「トレインキット for A列車で行こう2001」を追加でハードディスクにインストールすることにより、使用可能な列車の種類が大幅に増えるとともに、スナップショットで保存した画像をPCに転送する機能が利用可能になった。この機能は、イーサネット経由でPCと接続された状態で、アートディンクのサイトから提供される専用ソフトをPC側にインストールすることで稼働可能になる。この機能により、自分が作った格好いい鉄道風景をパソコン上のBMPファイルとしてコレクションできるだけでなく、自作Webページなどで利用することもできる。実際に利用した事例は、筆者の個人サイト上の昭和77年 京王電気軌道 〜A列車2001による鉄道再現の試み〜として公開している。

 なお、PCへの転送を行う際は、IPアドレスなどの設定をゲーム機側で行う必要がある。ある程度IPアドレス設定の知識が必要とされるので、ややハードルが高いかもしれない。また、PS2の世界では、ソフトごとにIPアドレスの設定を行う必要があるようで、PlayStation BB Navigatorをインストールするとまた設定、PlayOnlineをインストールするとまた設定という無意味な手間の掛かる状況になっている。容易に予測可能な手間を省けなかったあたりに、ネットワークへの経験未熟な家電メーカーの限界を見るような印象を受ける。

 最後に補足するが、PS2用のハードディスクは、2002年5月現在、「PlayStation BB Unit」という名称で販売されている。もちろん、従来どおり、このユニットには100BASE-TXのインターフェイスも含まれる。 End of Article

更新履歴
【2002/05/31】記事の最後に「その後」に関する情報を追加しました。

関連リンク
A列車で行こうMemorial Pack

川俣 晶(かわまた あきら)
 株式会社ピーデー 代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、INSTAC XML SWG 委員。1964年東京生まれ。東京農工大化学工学科卒。学生時代はENIXと契約して、ドラゴンクエスト2のMSXへの移植などの仕事を行う。卒業後はマイクロソフト株式会社に入社、Microsoft Windows 2.1〜3.0の日本語化に従事。退職後に株式会社ピーデーの代表取締役に就任し、ソフトウェア開発業を始めるとともに、パソコン雑誌などに技術解説などを執筆。Windows NT、Linux、FreeBSD、Java、XML、C#などの先進性をいち早く見抜き、率先して取り組んできている。代表的な著書は『パソコンにおける日本語処理/文字コードハンドブック』(技術評論社)。最近の代表作ソフトは、携帯用ゲーム機WonderSwanの一般向け開発キットであるWonderWitch用のプログラム言語『ワンべぇ』(小型BASICインタプリタ)。

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