日本のRFID業界をけん引する人々(4)

RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱する
NTTデータ


柏木 恵子
2007年2月14日


 静かにフェーズが変わってきている

――RFIDの普及は、どの程度進んでいるのですか

河西 4年前に推進室を立ち上げたときに考えたロードマップと比較すると、やはり思った以上に普及に時間がかかっていると思います。それは当時出されたほかの市場規模予測を見ても同じでしょう。コストが高いとかROIが期待されたほど出ないといった問題もありますし、技術がまだ“枯れていない”ので、使われる方がちゅうちょしている面も当然あります。

 ただし、これをもって将来性がないと見るのは早計で、外部発表されていなくてもすでにRFIDを導入している企業も多いと思います。静かに深く進んでいるという状況ではないでしょうか。

 それと、ちょっと違った視点で見てみると、例えばバーコードも電子マネーも、最初の実証実験から本格的な普及までには10年かそれ以上の時間がかかっています。RFIDが社会インフラとしてそれなりに普及するには、やはり同じようにそのくらいの時間の積み重ねは必要なのだと思います。

 今まさに迎えているキャズム(深い溝)を越えていくには、付加価値型の使い方をどんどん提案していって、単純なコスト削減とは違う意味合いで使えるということを示していかないとだめです。それが遅れれば遅れるほど、当初思い描いていた将来像からは離れていってしまう危惧もあります。

――NTTデータが提唱する「RFID2.0」とは何でしょうか

河西 NTTデータとしては、RFIDがクローズドかつ局所的な使われ方から、より社会インフラとして広く深く使われるようなパラダイムの変化を起こさなければならないという思い入れがあります。それを比喩として分かりやすくイメージして貰うためにWeb2.0になぞらえて、RFID2.0というキーワードを出しました。

 ただ、あっという間に「○○2.0」とネーミングするのがダサい行為の代名詞になってしまって、一般の方のブログでもそのように厳しく指摘されたりして落ち込んでいましたが、日本HPさんや日本BEAさんでもRFID2.0という表現を使われ始めているようなので、少し安心してそのまま使っています(笑)。

 RFID1.0と2.0の違いは、使われ方のパラダイムが変わるということだと考えてください。単なるスラップ&シップであったり、クローズドな環境だけで使われていたりしたものが、共通プラットフォームやディスカバリーサービスを介すことによって相互に情報を共有できるようになる。

 つまり、“点”で集めていた情報を“線”や“面”に展開することで、企業規模にかかわらずRFIDタグが取得した個別のデータや、それを蓄積したデータベースを通じた「集合値の利用」ができるようになると考えています。これが「eコラボレーション」です。

 また、「ハイブリッド化」も切り口になると思います。パッシブタグとアクティブタグ、温度や湿度、傾きといった各種センサーの組み合わせによって、動的に変化する情報の取得が可能になります。既存のデータとこれらの情報をマッシュアップして活用するのが、先ほど説明したコンテクスト・アウェアネスです。

 ちょっとこじつけっぽいのは重々承知ですが、パラダイムが変わることを示すためのバズワードですかね。

――RFIDはいつごろブレークするのでしょう

河西 ブレークという言葉が何を意味するのかを定義するのは難しいですね。ビジネスとしていつブレークするかという意味ならば、今日のRFIDシステムの規模は非常に小さく、ソフトウェアだけの開発では大きなビジネスになっていません。むしろ、RFIDリーダやサーバなどハードウェアに掛かる費用がソフトウェアよりも高い事例があるなど、ブレークには遠い状況にあるのではないでしょうか。

 RFIDが本当の意味でビジネスになるのは、例えば既存システムの更改において、RFIDの利用が新システムの成功のカギとして最重要に位置付けられるときということになるのではないでしょうか。そこまでいくには、個人的は少なくとも2〜3年はかかるのではないかと思います。

 そのような状況下で、実証実験に協力して頂いている企業や実際に導入されているアーリーアダプターの企業の方々には、われわれの立場からは非常にありがたい存在だと思っています。そのような企業が存在しないと、新しい技術のさらなるブレイクスルーがなされないまま衰退していってしまうからです。

 しかし、そのフェーズも終わりつつあるのではないでしょうか。これからは、利用者側も提供者側も単純な効率化を求めるだけではなく、業務プロセスそのものの変革まで視野に入れた一歩先の使い方を考えられているのは間違いありません。NTTデータもそういったことのお手伝いが今後も少しでも多くできていけばと思っています。

3/3
 

Index
RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱するNTTデータ
  Page1
強みを生かせるのは共通化のための技術開発
  Page2
コスト削減から新しい付加価値へのシフトが必要
RFIDを使うことによって新たなサービスが生まれる
Page3
静かにフェーズが変わってきている

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  RFID+ICフォーラムフィード  2.01.00.91



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