いざラスベガス、いざDEFCON CTF決勝へ(後編)

アスキーアートや単語当てゲーム、
それが「問題」だ


福森大喜/ラウリ・コルツパルン
株式会社サイバーディフェンス研究所
上級分析官
2009/10/6

 問題2:ハングマンで単語当てゲーム……ではなく

 「tucod」は単語当てゲームのようなサービスでした。バイナリを解析すると、単語リストが登録されているファイル/usr/share/dict/wordsからランダムに1つ選ばれ、その単語が何かを当てるゲームであることが分かりました。

 アルファベットを一文字入力すると、単語の中にそのアルファベットが含まれていれば表示されます。誤答すると下図のような首つり台のアスキーアートが、線1本ずつ書き加えられていきます。どうやら、ハングマンと呼ばれるゲームのようです。

Password: HANGEMHIGH!
Welcome to Hangman Blondie!
What is your name? fkmr
Nice to meet you fkmr prepare to die!

used:      "abcdefghi"
available: "jklmnopqrstuvwxyz"

current: a__e____a_i__

Your guess:
j

   ---
   | |
   O |
  /|\|
   | |
  / \|
 -----
 |   |


Blondie, you missed, Tuco has hanged.
The correct word is: appersonation.

 ただし、このゲームをクリアしても何も起こりません。ゲームの内容に惑わされずに脆弱性を探す必要があります。解析を進めると、ゲーム開始時に入力する名前の部分にフォーマットストリングバグが存在し、任意のコマンドを実行することができることが分かりました。

図3 問題のアセンブリコード部分

 では、これを攻撃してみます。

Password: HANGEMHIGH!
Welcome to Hangman Blondie!
What is your name? %p%p%p%p
Nice to meet you  0x100xa0x282230800x28223080 prepare to die!

 ユーザー名が表示されていた部分に、16進数の文字が表示されています。これはメモリの中身の一部が表示されていまして、フォーマットストリングバグの可能性を示しています。

 フォーマットストリングバグとは、書式指定子に細工した値を設定することで、任意のアドレスにデータを書き込むことができる脆弱性です。これを悪用すると、任意のコマンドを実行することが可能となります。このように、アセンブリを読んで脆弱性を探すのがCTFの基本的な流れです。

 閉幕、そして驚くべき発表

 結局10チーム中8位という結果でした。私としては、これは決して満足のいくものではありません。

 その中で韓国の大学サークルで構成されたチームが3位に入りました。最近の韓国チームの活躍は目覚ましいものがあり、今年は韓国チームが5チームも決勝に進んでいました。これは国を挙げてセキュリティ教育に取り組んでいる成果のようです。先日も韓国は大規模なDDoS攻撃を受けており、そのときはPCを開くこともできない状況に陥ったそうです。そのようなこともあり、韓国政府がサイバーテロを現実の脅威としてとらえて対策を進めているのでしょう。

【関連記事】
川口洋のセキュリティ・プライベート・アイズ(17)
米韓へのDoS攻撃に見る、検知と防御の考え方

http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/column/kawaguchi/017.html

想像以上?! お隣韓国のセキュアOS事情
http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/special/95korea/korea01.html

 また、予選では1位だったsk3wl0fr00tが決勝ではずっと最下位のままでした。このチームはDEFCON CTF決勝の常連チームなので実力は折り紙付きです。おそらく今回はやる気がなく2軍が来ているのだと思っていました。しかし最後に驚くべき発表がありました。ddtekのメンバーの何人かはsk3wl0fr00tのメンバーでもあったということです。つまり、sk3wl0fr00tはCTFに参加するふりをしながらCTF運営を行っていたというわけです。


 今回決勝に参加させてもらったことで今後の戦いの参考になる情報をたくさん得られただけでなく、技術的にもいろいろな発見がありました。そして、世界各国の優秀な技術者と知り合うことができました。

 おそらく来年は各チームが今年の内容を研究し、対策してくると思うので、さらに高度で面白い戦いになると思います。皆さんもぜひ、CTFに参加してみてください。

3/3
 

Index
予選はクイズ感覚の「超高度な知恵くらべ」
  Page1
今年も開催、ハッカーの祭典「DEFCON」
予選競技ルール――周りの人はみんな敵?!
CTFの進行は「ジョパディ!」形式
  Page2
トラブル続きの予選
「Pwtent Pwnablesの100」を追う
  Page3
「Trivialの400」にみる証明書の重要性
いざ、決勝へ

Index
アスキーアートや単語当てゲーム、それが「問題」だ
  Page1
決勝の地に到着、そこは底冷えするホテルの一室
決勝の基本ルール:「自サーバを守りつつ、攻めよ」
まずは自分の脆弱性を直すことから
  Page2
チームの戦略は
問題1:巨大なアスキーアートが実は……
Page3
問題2:ハングマンで単語当てゲーム……ではなく
閉幕、そして驚くべき発表

Profile
福森 大喜(ふくもり だいき)

株式会社サイバーディフェンス研究所
上級分析官

大手セキュリティベンダで、Webアプリケーションセキュリティ検査などに従事したあと、国内ベンチャー企業にてWebアプリケーション診断サービスを立ち上げる。IPA情報セキュリティ早期警戒パートナーシップにおいて、1年間で120件以上のソフトウェアの脆弱性を報告、2007年に第3回IPA賞(セキュリティ)を受賞。韓国のセキュリティカンファレンス「POC 2007」で日本人初のスピーカーとして講演。

2009年、グーグルの開催したNative Clientセキュリティコンテストでは、世第4位に入賞した。

Profile
ラウリ・コルツパルン

株式会社サイバーディフェンス研究所
CTO

エストニア出身。タリン技術大学で8年間Linux管理者を務める過程で、高度なセキュリティ技術と知識を習得する。2003年、欧州で開催されたZone-hのハッキングミッションを史上最速でクリア。

その後、Zone-hの中心メンバーとして、世界各国で実践ハッキングセミナーの講師を務めている。2004年よりサイバーディフェンスに参加。

セキュリティセミナーおよびペネトレーションテストに従事している。卓越したハッキング技術に加え、エストニア語、英語、日本語、ロシア語、フィンランド語など多言語を操る。

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