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連載:M&A新時代へ(1)

IFRSで変わる成熟産業「M&A」のルール

岡俊子
アビームM&Aコンサルティング株式会社
2009/8/28

これから日本に適用されるIFRSは企業のM&Aにどのような影響を与えるのか。連載第1回ではIFRSがM&Aを「増加」させるのか、それとも「減少」させるのかについて解説する(→記事要約<Page 3 >へ)

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IFRSで国内M&Aも増加

 IFRSは実質的には上場会社を対象としています。ということは、IFRS適用によって「増加」する可能性があるのは、上場企業が関与するクロスボーダーM&Aだけでしょうか。国内の中堅・中小企業においてはIFRSの影響はないのでしょうか。

 業界再編が起こっている業界では、裾野の業界や周辺業界も再編に巻き込まれることは必至です。そのためIFRS適用後、クロスボーダーM&Aが増加すると、国内の中堅・中小企業にもM&Aの波は押し寄せてくるでしょう。

 ただ、国内の中堅・中小企業については、まず、国内において、業界再編のM&Aの波が押し寄せ、その後で、クロスボーダーのM&Aに進展していくのではないかと考えられます。

 従って、これまで国内市場しか視野に入っていなかった国内中堅・中小企業においても、中長期的には、グローバルで業界の動向を注意深く見守り、さらにM&Aとどう向き合っていくかについて検討することが必要となります。

 以上、IFRSが適用されることがわが国の企業にとってどのような意味を持つのか、さらにIFRSはM&Aを「加速」させる可能性を持っていることについて話を進めてきました。

 IFRSとM&Aの関係といえば「のれん」です。次回は、「のれん」の処理方法がM&Aにどのような影響を与えるのかについて論じます。

筆者プロフィール

岡 俊子(おか としこ)
アビームM&Aコンサルティング株式会社
代表取締役社長

アビームコンサルティング 戦略事業部長を兼任。明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科、青山学院大学大学院法学研究科の非常勤講師のほか、対日投資有識者会議、M&A研究会等の政府委員会の委員などを務める

要約

 これから日本に適用されるIFRSは企業のM&Aにどのような影響を与えるのか。第1回ではIFRSがM&Aを「増加」させるのか、それとも「減少」させるのかについて解説する。

 M&Aのプロセスで財務諸表の役割は極めて重要になる。だが現在、日本の上場企業の多くは、日本の会計基準に基づいて財務諸表を作成し、開示している。そのため外国企業にとっては、日本企業の実態を理解することは簡単ではない。外国企業は日本の会計基準を理解したうえで財務諸表を読んだり、日本の会計基準で作成された財務諸表を自国の会計基準に翻訳することが必要となり、コストと時間がかかる。これは、日本企業が外国企業を買収する場合でも同様だ。

 M&Aでは、経営の実態が分からない会社を買収することは大きなリスク。そのため、このコストを時間をかけられるのは程度規模が大きく、体力のある会社に限られてしまうというのが現状だ。

 IFRS適用は世界の上場企業が同じモノサシで企業活動の成果を報告することを意味し、他国の会社の経営実態が明らかになり、M&Aのハードルがこれまでと比較して低くなる。

 またM&Aにおいては、デューデリジェンス(資産査定)という対象会社の実態を調査するプロセスが欠かせない。IFRSが適用されると、デューデリジェンスに必要とされる時間やコストを削減することができる。買収コストの引き下げにもつなげられるだろう。

 ビジネスはすでにボーダレスの時代に入っており、そこにIFRSが導入されることは、会計基準もついにはボーダレスになることを意味する。そしてこの動きはクロスボーダーM&Aを加速させる可能性がある。

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