S3、TransmetaベースのWebパッドを扱う子会社発足へ

2000/8/29
(08/25/00, 8:38 p.m ET) By Mark Hachman, TechWeb News

 S3は組織再編の一環として、Transmetaベースのインターネットアクセスデバイスのデザインと販売を行う社内子会社を密かに設立した。

 カリフォルニア州サンタクララに本社を置き、かつてはグラフィックス市場を独占したことのあるS3は、2つの目的を持つデジタルメディア/インターネットアクセス企業として自社を位置付ける試みを進行中。このプロセスは、自社のグラフィックスチップ事業部を同社とVia Technologiesによるジョイントベンチャーへと移行した4月に始まった。

 現在のS3は、どちらかというと家電製品企業の様相を呈している。S3では、同社が普及を支援したRio MP3プレーヤ、HomeFreeホームネットワーキング製品ライン、そしてまだ名前の決まっていないこの新しい子会社の3つがコアビジネスとなっている。この戦略は功を奏し、S3では前年度の第2四半期に5730万ドルだった売上高が、第2四半期の決算では1億3580万ドルへと伸びている。

新会社の業務開始は9月

 S3のスポークスマンによると、この新子会社はインターネットアクセスデバイスを販売することになり、業務は9月に開始されるという。

 「TransmetaベースのWebパッドをインターネットアクセスデバイスだとするのは妥当だろう」(S3のスポークスマン)

 S3はTransmetaのアーキテクチャに対応した最初の企業の1つで、Transmetaが今年の1月に行ったCrusoeプロセッサの発表イベントで自社のWebパッドの試作機をデモしている。

 S3のCTO(最高技術責任者)、Andy Wolfe氏はその時、Transmeta TM3120(モバイルWebアプライアンス用にデザインされた低消費電力チップ)を搭載し、電子ブックの閲覧、Webサーフィン、そしてデジタルビデオ処理が可能な、Linuxベースのインターネットアクセスタブレットを同社が開発中であることを明らかにしている。

 「このきょう体でこれほど多くのことを可能にする市販チップはこれだけだ」(Wolfe氏)

 しかしWolfe氏は、S3がこのデバイスに真剣に取り組むためには発展可能なディストリビューションビジネスモデルがまず必要だったともしているが、S3はそれを見つけたようだ。S3のスポークスマンは、このモデルは同社が9月に業務を開始したときに明らかにされるとし、同社の詳細な戦略に関するコメントを控えている。

 事業部ではなく子会社として運営されることにより、同社はおそらく社外からの出資を求め、独立ビジネスモデルのほか、将来的にはスピンアウトも模索できるようになる。

もともとはNumber Nineがデザインしたもの

 アナリストは、同子会社によって、1999年12月に破産申請したアドオンカードメーカーのNumber Nine Visual Technologyの買収から同社がようやく価値を引き出せるようになる、ともしている。Nineの資産は490万ドルという評価だった。グラフィックスビジネスからの撤退の一環として、S3は自社のグラフィックスカード事業を8月初めに完全閉鎖しており、表面上、S3はNine買収からほとんど得るものがなかったことになる。

 Nineの元広報担当副社長で、現在はカリフォルニア州ハーフムーンベイにある組み込みソフトウェアカーネルプロバイダーのOnCore Systemsでマーケティング担当副社長を務めるPhil Parker氏によると、TransmetaベースのWebパッドをデザインしたのはS3ではなく、Nineだったという。

 「Transmetaが使っているのは確かにそれだ。。グラフィックス市場における売上高は低下の一途で、私の親友でもあるデザイナーの1人は、このようなものを常に夢見ていた」(Parker氏)

 現在までの所、Transmetaは日立、NEC、およびソニーの各社のコミットを取り付けており、Transmetaの新規公募を引き受けるウォールストリートのある会社の情報筋によると、IBMも同チップの採用を確約したという。

 IBMの関係者から同社のコミットについて直接確認することはできなかった。

 アリゾナ州スコッツデールにあるMercury Researchのアナリスト、Dean McCarron氏は、「彼らはネットワークのエッジデバイスやインターネットアクセスネットワークデバイスでも関心を集めている」と語った。

 S3のグラフィックスチップ資産をViaに移行する処理は、契約の詳細な情報を求める台湾政府によって延期させられている。この契約では、Viaが「S3 Graphics」と呼ばれることになったS3とViaの共同出資会社の全資産を取得し、この新会社が約3億7700万ドルを現金と株式で台湾からS3に移行することになっている。しかし、S3のスポークスマンによると、これは「もう間もなく」解決されるだろうという。

 社内でのあらゆる変化によって、S3はイメージチェンジも試みている。

 S3の経営陣は、4月にグラフィックス市場から撤退する際、今年後半に社名を変更し、業務を開始するとしていた。S3のスポークスマンは新しい社名を明かさなかったが、S3はBlueIntrigue.com、SonicPeak.com、およびSonicBungee.comの各ドメイン名をすべて6月の同じ日に登録している。同社のスポークスマンによると、同社は「一度に大量の名前」を登録したという。

 同スポークスマンによると、S3が名乗らないであろう名前の1つがMozan(S3がやはり同じ日に登録したドメイン名)だという。

 「私は気に入った。とても良いと思ったが、モザンビークや、ゴジラの映画に出てくる怪獣のように聞こえたようだ」(スポークスマン)

[英文記事]
S3 To Launch Transmeta Web Pad Subsidiary

[関連リンク]
米S3ホームページ
S3がグラフィックス カード事業からも撤退(PC Insider)
PC EXPO 2000モバイル機器レポート(PC Insider)

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