[富士通ソリューションフォーラム2002開催]
「新しいハードウェア環境を楽しんでもらうことを提案する」と富士通

2002/8/1

 富士通は7月31日より3日間、都内で自社イベント「富士通ソリューションフォーラム2002」を開催中だ。初日、基調講演を行った同社 代表取締役社長 秋草直之氏は、「発想の転換が必要。技術革新により使い勝手の向上したハードウェア資源を使ったIT高度活用時代を提案していく」と述べ、同社の戦略を語った。

富士通 代表取締役社長 秋草直之氏

 秋草氏は、インターネットの世帯普及率が6割を上回り、企業のインターネットへの接続率は97%に達したことに触れながらも、「本当にITは浸透しているのか?」と問い掛ける。例えば米国では1989年から10年間、IT投資は3.9倍、雇用は15.3%増加したが、事務職に関しては8.4%減とマイナスとなっている。対する日本の同期間の統計を見ると、IT投資は2倍と米国の伸びの半分、雇用は12.7%増加し、そのうち事務職は17.9%も伸びているという。「本来必要ではない人たちが増えているのではないか? CADやSCM、短期開発などの施策をせず、人件費などのコストが安い中国などへ生産拠点を移すことしかしていないのではないか」(秋草氏)。

 富士通はこのところ、現在日本が抱えるITの課題として、技術革新のスピードにユーザーが追いつかないというギャップを挙げている。秋草氏は「CPUやファイル容量、通信速度はめまぐるしく向上しているにも関わらず、実際の環境は相変わらず制限されたものになっている。このギャップを埋めるような、総合的な提案が必要だ」と語る。

 ハードウェアのリソースがふんだんにあるという新しい環境を最大限に生かすことは企業の競争力にもつながるという秋草氏は、「アプリケーションにもブレークスルー(突破、躍進)が必要」と続ける。アプリケーションに関しては3つの面で革新できるという。領域、使い方、作り方の3つだ。新しい領域には、エンターテイメントのほかに、eラーニング、医療など生活/社会に関わるもの、ストリーミング技術を利用した社内放送やアウトソーシング、コラボレーティブなエンジニアリングなど企業向けがある。

 同社はこれまで、半導体などの技術、プラットフォーム、サービス(プロダクト)と、それぞれの事業を分けて位置付け、連続したバリューチェーンの構築を図ってきたが、今後はますます事業間の融合が進むと見ている。そのため、ソリューションの展開としては、アプリケーションとデバイス、ネットワーク、サーバ、OS、ミドルウェアを融合した形へとシフトさせていく。その一例として、同社のミドルウェア「Interstage」では、アプリケーションの負荷を吸収するような機能を持たせ、ユーザーはアプリケーション開発のみに集中できるようにしていくという。また、半導体に関しては、半導体の中にアプリケーションが入るシステムオンチップ(SOC)が今後ますます進むという。

 具体的な今後の方向性として秋草氏は、作らないアプリケーション、つながるアプリケーション、止まらないインフラの3つを示す。特に、1つ目の作らないアプリケーションとは、パッケージと部品化の2つで実現する。パッケージではERPの「GLOVIA」を世界に展開しており、米デルコンピュータのSCMに用いられるなど順調に推移しているという。「唯一の日本初のグローバルなERP」(秋草氏)。ソフトウェア部品化に関しては現在、ソフトウェアコンポーネントを専業とする会社を国内に3社、中国に1社設立し、コンポーネントの構築、組み立てから流通に関してを模索しているという。「ソフトウェアは人に頼るわけにはいかない。工業的なソフトウェア開発の実現に向け挑戦していく」と秋草氏は語る。また、インフラに関しては、サーバ、ストレージ、ネットワークの3つを統合管理するというコンセプト「TRIOLE」を提唱し、IAサーバ「PRIMERGY」など製品への反映を開始している。

 同氏は最後に、「ITの高度活用が日本の競争力を創出する。企業、行政、学校に新しいハードウェア環境をもっと楽しんでもらえるよう提案していきたい」と述べ、スピーチを締めくくった。

 1935年の設立から67年が経過し、顧客数は世界に17万を誇る。日本のトップITベンダの1社として君臨してきた同社だが、ここ数年は順調とはいえない状況が続いている。さきの7月26日に発表した今年度第1四半期も、売り上げ、経常収益ともに前年同期比マイナスとなっている。囲い込み主義を捨てオープン化へ移行し、さらにはEJBやグリッドコンピューティングなど先進技術にも取り組んでいるが、それらを収益に結び付けていくという点での模索は続いているようだ。

(編集局 末岡洋子)

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