新資格制度を創設したMS、狙いは中小企業開拓か

2003/3/18

 三井物産とマイクロソフト、NTT-ME、それとパソナテックの4社は、フィールドエンジニア向けの教育資格制度「ネットエキスパート」を4月に開始すると発表した。個人向けブロードバンドサービスのセットアップ作業や、中小企業でのIP電話導入などを行うエンジニアの育成が目的。重視するのは実技とコミュニケーションスキルだ。

 資格制度で育成するのは、ネットワークの基本からハード、ソフトのスキル、IP電話や無線LANなど幅広い技術を持つエンジニア。ISPから派遣されて個人宅に出向き、ブロードバンドサービスのセットアップをすることや中小企業でのIPテレフォニーサービスの構築、VPNで事業者間システムの統合などを行うための技能を身に付けることができるという。4社は「知識労働と肉体労働の双方を行う高度技能者」を育成するとしている。

 資格試験は4月24日から順次、実施予定。4月初旬にはアビバジャパンと松下ビジネスサービスがネットエキスパートの公式トレーニングを開講する。4社も「ネットエキスパート公式全国トレーニング」を4月から実施する予定。受講料は5日間(30時間)で、20万円となっている。5日間の日程のうち、約半分をネットワーク機器の接続など実務学習に当てる。顧客との接し方などコミュニケーションスキルも学習する。実際の工事を想定したロールプレイも行う。4社では開始初年度に1万5000人、3年後に4万人の資格取得者を目標としている。

三井物産のエレクトロニクス事業開発部長 土屋哲雄氏(右)とマイクロソフト取締役の眞柄泰利氏

 三井物産のエレクトロニクス事業開発部長 土屋哲雄氏はネットエキスパートについて、「実技重視のマルチベンダ資格」と説明。既存の資格制度と対象エリアで重なるところがないために、「ほかの資格制度と補完性がある。ほかの資格を取ったエンジニアが実務技術を高めるためにネットエキスパートを取得するということも期待できる」と述べた。

 ネットエキスパートの創設は三井物産とマイクロソフトが主導した。三井物産の狙いは商社として多角的に事業展開し、IT分野での存在感を高めること。マイクロソフトはエンジニアの育成を通じて、中小企業へのITの浸透を高めることが狙いだ。

 マイクロソフトにとって中小企業市場は最重要ターゲットの1つ。会見で「(中小企業や個人ユーザーが)いかにブロードバンドのインフラを使いこなすかが課題になっている」と述べたマイクロソフト取締役の眞柄泰利氏が、同社で先頭に立って中小企業市場を開拓中だ。マイクロソフトは、地方のシステム・インテグレータなどとパートナーを組んで中小企業への営業を活発化させている。資格制度の創設もその戦略の1つ。中小企業市場の開拓は国内でビジネス展開しているほとんどのソフト、ハードベンダの課題。マイクロソフトの試みは注目を集めるだろう。

(垣内郁栄)

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