個別機能の先出し開始、オラクル次期アプリの成否は

2006/3/4

 「それぞれのよいところを統合する。ベスト・オブ・ベストだ」。米オラクルのアプリケーション開発担当 シニア・バイスプレジデント ジョン・ウーキー(John Wookey)氏は3月3日、「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」で講演し、オラクルの会計年度で2008年度(2007年6月〜2008年5月)にも出荷する予定の次世代アプリケーション「Oracle Fusion Applications」(OFA)を紹介した。ウーキー氏はOracle Fusion Applicationsの関連コンポーネントも紹介し、開発が順調に進んでいることを強調した。

米オラクルのアプリケーション開発担当 シニア・バイスプレジデント ジョン・ウーキー氏

 OFAはオラクルの業務アプリケーション「Oracle E-Business Suite」と、買収したPeopleSoft、JD Edwards、Siebel、Retekなどのアプリケーションを統合する次世代製品。ウーキー氏は「それぞれのベストの機能を採用し、標準技術ベースで開発する」と説明する。ウーキー氏は「EBSは財務会計、PeopleSoftは人事、JD Edwardsはリーン生産に強みがある」などとして、OFAの優位性を強調した。

 OFAを表現するキーワードは3つ。1つ目は「ビジネスのいまを見極めて迅速で正確な意思決定をサポートする」。OFAはビジネス・インテリジェンス(BI)やビジネス・アクティビティ・モニタリング(BAM)が組み込まれる予定で、「即時対応を可能にするリアルタイムなオペレーション分析」を実現するという。講演ではPeopleSoft Enterprise CRMのオペレーショナルダッシュボードがデモンストレーションされた。

 2つ目のキーワードは「業務要件への高い適応性と柔軟な接続性の確保」だ。具体的にはSOAを全面的に採用し、「ビジネスニーズに応じて、アプリケーションフローを柔軟に変更できる」ようにするという。ウーキー氏はPeopleSoftのHCM(Human Capital Management)製品、オラクルのアイデンティティ管理製品を組み合わせた従業員の入社手続きシステムのデモを行った。

 3つ目のキーワードは「低いTCO」。OFAではインストールが自動化、個別適応が可能になる。また、個別アップグレードにも対応し、システム全体のダウンタイムを短くする。セルフサポート、セルフチューニングの機能も実装するという。

 OFAは2008年度に登場する予定だが、2007年度には個別コンポーネントを発表する予定だ。ウーキー氏はそのうちの3コンポーネントを紹介した。EBSやPeopleSoftで利用できるXMLベースのレポートライブラリや、各製品のコンポーネントを登録できるWebサービスリポジトリ、Siebel製品向けのビジネスプロセス管理(BPM)製品などだ。いずれも2007年度に提供を始める予定。ウーキー氏は「OFAの前段階としてコンポーネントを出していきたい」と語った。

米オラクルのアプリケーション事業・日本担当シニア・バイス・プレジデント&ゼネラルマネージャ ディック・ウォルベン氏

 基調講演に先立ち登場した、米オラクルのアプリケーション事業・日本担当シニア・バイス・プレジデント&ゼネラルマネージャ ディック・ウォルベン(Dick Wolven)氏は、日本でのアプリケーション事業拡大のために、350人からなる「100%アプリケーション特化の営業部隊をつくり、選任担当者を育てる」と語った。営業部隊は「アプリケーション事業統括」の名称で、3月1日付で設立した。

 日本オラクルはデータベース事業からの収益が大半で、アプリケーション事業の規模はまだ小さい。大規模向けERPでSAPが大きなシェアを持っていたり、国産のソフトウェアベンダも強みを発揮しているためだ。ウォルベン氏は「日本ではデータベース事業が大変に強く、それに支えられていた面がある。しかし、違う収益源も見つけないといけない」と語る。新しい営業部隊は顧客との直接対話やパートナー戦略の強化を図る方針。ウォルベン氏は特に「顧客との緊密性が要になる」として、「パートナーと協力して顧客との緊密な関係をつくりたい」と語った。

(@IT 垣内郁栄)

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