ネット外のユーザーを取り込む

楽天がフュージョン買収、シナジー効果は

2007/06/19

 楽天は6月19日、東京電力が保有するフュージョン・コミュニケーションズの過半数株式(議決権比率54.27%)をすべて取得すると発表した。譲渡価額は6億7300万円。同日の記者会見で楽天の代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏は、IP電話の取り込みが“楽天経済圏”の拡大に寄与すると強調した。

 東京電力は過去約2年にわたって通信事業の売却を進めてきた。2006年には法人向けデータ通信事業のパワードコムをKDDIに売却。しかしIP電話の草分けであるフュージョンの事業はKDDIと「重複する設備が多いため、シナジー効果が出ない」(東京電力 取締役社長 勝俣恒久氏)ことから売却対象から外れた。その後複数の売却先候補が取りざたされたが、「今年に入って楽天から話があり、一番しっくりした」と勝俣氏は買収の経緯を述べた。

 三木谷氏は、今回の買収について「音声がIPに載り、Webやメールと同じように使えるようになるということ。ソフトバンクのように、大きなインフラを持って(事業を展開する)という発想はあまりない」とし、楽天による通信事業の拡大を意図するものではないことを強調した。

 今回の買収の主な目的は、フュージョンの技術とサービスを、楽天における既存ビジネスの拡大に結び付けること。「音声コミュニケーションを活用することで、インターネットに参加しない人々を取り込み、楽天のコミュニティを拡大できる」(三木谷氏)。現在ベータ版サービス段階の「楽天メッセンジャー」の正式版では、公衆電話網への接続も可能にし、オンラインユーザーとオフラインユーザーの間の通信を促進する。

 楽天のユーザーにとっては安心感と利便性の向上につながるという。「(楽天加盟店による情報漏えい事件発生の後、)カード情報は加盟店に出さないことにした。電子メールアドレスの匿名性を高めることも考えている。さらに(050番号を楽天会員に提供し、)電話番号も匿名にすることができる」(三木谷氏)。また、インターネット広告の新たな形態として、一部で注目されている“pay per call”(見込み顧客による電話1件ごとに課金する成果型広告)も、大きな成長が見込めると話す。

 一方、現在3700万人規模の楽天ユーザーをフュージョンのサービスに誘導することで、フュージョンの売り上げ拡大に貢献できるとする。

 フュージョンの2007年3月期の通年決算は、当期損益が14億5500万円のマイナス。しかし2008年3月期には黒字転換を予想しているという。

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(@IT 三木泉)

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