DBとアプリの間を埋めるミドルウェアを開発

組み込みDBのエンサークが管理工研と提携

2007/08/23

　組み込みデータベース開発のエンサークと管理工学研究所は8月23日、ビジネスパートナー契約を締結したと発表した。管理工学研究所は、携帯電話向けのアプリケーションフレームワーク「kdFrame」を、エンサークの主力製品である「Device SQL Framework」を活用して開発していく。年内にはフレームワークと、その応用である全文検索ミドルウェア「kdSearch」をリリースする。

直販からパートナーとの協業へ

　エンサークのDeviceSQLは組み込み機器に特化した小型のデータベース製品。フットプリントが24〜50KB程度と小さく、組み込み向けの機能を多く持つ。例えば、処理向上のための機能として、開発自体にはSQL文を使い、それをプリコンパイラでC言語に変換する機能や、内蔵メモリと揮発メモリに対して配置するデータを最適化するといった機能を持つ。また、ユニークな機能として、センサーやネットワークから入力されるストリームデータをレコードとして扱い、SQL文で直接処理する機能も持つ。携帯電話やデジタル家電、通信機器、車載機器、医療機器、FA機器などで2004年以来、すでに500万台に搭載されているという。

　エンサークはシリコンバレーに本社を置くが、日本市場での売り上げが全社売り上げの75％を占める。その日本において、今後同社がシェアを広げるため、エンサーク 代表取締役社長の阿部哲也氏は、「これまでは直販を中心に販売してきたが、特定の業界をよく理解するパートナーとの協業が、もっとも必要だと感じていた」とし、今回の提携の意義を説明する。

　組み込み機器ではデータベース部分から各社が独自にコーディングするような例が現在も多い。阿部氏によれば、こうしたアプローチでは、データベース処理に相当する部分だけで、UIやロジックと同程度のコードが必要になるという。携帯電話をはじめとする小型機器の高度化、複雑化が進み、開発期間の長期化が問題となっている現状を考えると、今後はPCやサーバ同様に、OS、ライブラリ、ミドルウェア、アプリケーションといった垂直分離が進むだろうという。

まずはケータイ向け全文検索エンジンAPIを提供

　「データベースは高速・正確にデータを提供するのが目的。しかし、アプリケーションの目的は例えば電話帳を使うこと。そのズレは“インピーダンスミスマッチ”と呼ばれ、これまでPCやサーバの世界では問題となってきた。同じことが、組み込み機器でも現実の問題となってきた」。そう話すのは、管理工学研究所 モバイル事業部 マーケティング・企画担当課長の大久保潤氏だ。

　管理工学研究所は、これまで約20年にわたってPC向けデータベース製品「桐」を開発してきた実績と、Symbian OSを日本語化した実績から、携帯電話向けにDeviceSQLをアプリケーションから使いやすいようにするミドルウェアとしてkdFrameを作成する。

　特に必要とされるのは、マルチタスク処理への対応だという。例えば、電話帳を編集中に電話がかかってきたときに、その電話帳アプリケーションは、データをどう扱うべきかということで現場は頭を悩ませているという。kdFrameは、単にSQLを隠蔽するラッパーではなく、アプリケーションの排他処理や、アプリケーションごとのデータ変換などを行う。あるアプリケーションがデータを操作したとき、その結果を別のアプリケーションで表示するために再描画させる仕組みも用意する。

　kdFrameは、全文検索、アドレス管理、スケジュールの3つのジャンルで、それぞれ「kdSearch」「kdAdress」「kdSchedule」の3製品を用意する。kdSearchはメール、カレンダ、メモ、オフィス文書をはじめ、閲覧済みのWebサイト（HTMLキャッシュ）も検索対象とする。kdSearchのAPIを使ったアプリケーションの実装例として管理工学研究所は「DigiBrownie」を開発予定だが、このAPIを使って、どのような機能を実装するかは携帯端末メーカー次第だ。例えば、子どもに持たせる端末向けに、望ましくないコンテンツやメールのやり取りをしていないかを監視するような機能も実装できるだろう。

　当面、両社は携帯電話をターゲットとするが、今回のパートナーシップによる協業は「携帯電話だけに限らない」（エンサーク 代表取締役 阿部哲也氏）としている。

（＠IT 西村賢）

情報をお寄せください：

＠ITメールマガジン　新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます（無料）