VMwareのライバルは――

再編期を迎える仮想化市場を理解する

2007/08/29

 ダイアン・グリーン氏と彼女の夫が米ヴイエムウェアの創業に携わったのはわずか9年前のことだ。この新興企業は、ハイエンドのサーバやメインフレームではすでに一般的だったハードウェアの仮想化というコンセプトを、急速に拡大しつつあったx86市場に持ち込むことを目的として設立された。

 そして2007年の今日、ヴイエムウェアはIT業界でも特に成長著しい分野のリーダーとして、ライバルの大手・中小ベンダ各社から追いかけられる存在となっている。カリフォルニア州パロアルトに本社を置くヴイエムウェアは最近、仮想化分野の再編が急速に進んだ激動の1週間を経験した。

 2004年にストレージ大手のEMCの子会社となったヴイエムウェアは8月14日、大きな期待を背に受けてIPO(新規株式公開)を実施した。同社の株価は公開初日に2倍近く上昇した。同社幹部は、これにより9億ドル以上の資金調達を見込んでいる。

 その翌日にはシトリックス・システムズが、オープンソースの仮想化技術のベンダーであるXenSourceを5億ドルで買収する計画を発表した。両社とマイクロソフトとの間には強い結び付きがあることを考えれば、この動きは業界に大きな影響を及ぼす可能性がある。マイクロソフトも「Viridian」と呼ばれる独自の仮想化ハイパーバイザーを開発中だ。

 また、シトリックスとXenSourceの買収取引は、マイクロソフトによるシトリックスの買収の前奏曲かもしれないと指摘するアナリストもいる。The 451 Groupのアナリスト、ブレノン・デイリー氏もその一人だ。

 「シトリックスは、マイクロソフトのソースコードにアクセスできるという立場を利用して10億ドル以上のビジネスを築いた。 マイクロソフトが開発中のViridianハイパーバイザーのコードにXenSourceが独占的にアクセスできることが、今回の買収を促した最大の要因だ。シトリックスにとっては、Viridianは自社の次のビジネスを構築するための基盤OSコンポーネントとなる。Windows Terminal ServerがシトリックスのPresentation Serverの基盤になったのと同じだ」とデイリー氏は語る。

 いずれにせよ、この間の動きは、仮想化市場での競争が激しさを増すとともに、企業の間で同技術に対する認知度が高まることを予想させるものだ。今後数年で仮想化分野が大きく成長する可能性を秘めていることも、こういった状況を促進するものとみられる。市場調査会社のIDCでは、2009年までに企業が仮想化技術に支出する金額は、総額で150億ドルを上回ると予想している。

 ワシントン州レドモンドに本社を置くマイクロソフトでシステムセンターと仮想化を担当するゼネラルマネジャー、ラリー・オレクリン氏は、「シトリックスによるXenSourceの買収、ならびにヴイエムウェアのIPOは、仮想化市場のダイナミックな性格を如実に物語るものだ。現在、全世界で仮想化されているサーバは5%にも満たない。つまり、この市場は生まれたばかりであり、ユーザーにとってイノベーションと可能性に満ちているということだ」と述べている。

 仮想化とは、OS/アプリケーションの複数のインスタンスを単一の物理サーバ上で動作させる技術である。当初は、x86サーバの利用率の低さに対処するとともに、データセンター内のシステムを統合するための手段として宣伝された仮想化技術だが、現在では、バックアップや災害復旧プロジェクトに役立つ手段としてみられている。また、仮想化製品は従来、ソフトウェアが中心だったが、最近ではチップメーカーのAdvanced Micro Devices(AMD)とインテルの両社がそれぞれのプロセッサに仮想化機能を組み込んでいる。

 ここ数年、Virtual IronやSWsoftといった新興企業各社がヴイエムウェアの市場支配に挑戦してきた。マイクロソフトも大手プレーヤーとして頭角を現しつつある。そして今回のシトリックスとXenSourceの結合は、さらなる競争を促すものとなりそうだ。

 シトリックスの顧客は同社の動きを歓迎しているが、XenSourceの技術をベースとした仮想化環境に移行する準備が整っていない顧客もいるようだ。

 サンフランシスコにあるAppCentral Technologiesのクリストファー・ブーンCEOは、「われわれはフリーウェアとオープンソースを好んでいる」と話している。「以前に XenSourceを検討したこともあるが、われわれはマイクロソフトとパートナーシップを組んでおり、同社の無償の仮想化技術を利用している。この分野では業界再編が大きく進むものと予想している。EMCによるヴイエムウェアの買収、そして今回のIPOの成果は、市場がこの種の技術を求めていることを示すものだ」。

 一方、Citrix Presentation Serverのユーザーであるテネシー州チャタヌーガのBlueCross BlueShieldでは、XenSourceへの移行を検討しているという。

 「Presentation Serverとヴイエムウェアの導入は、大成功とはいかなかった」と話すのは、BlueCross BlueShieldのWindows/ネットワークインフラグループでサーバーチームのリーダーを務めるマイク・プルウィット氏だ。「マルチコアプロセッサを搭載したブレードサーバを購入するくらいのコストに見合うような数字が得られなかった。彼らが製品をチューニングして、もっと優れた成果が得られるようになれば面白いのだが」と同氏。

 仮想化市場に参入する企業が増えるのに伴い、プルウィット氏のようなユーザーにとっては選択肢の幅が広がるだろう。しかしヴイエムウェアは、ライバルの追撃を許すつもりはないようだ。ヴイエムウェアのダイアン・グリーン社長によると、今回のIPOは同社の知名度向上に貢献するという。同社が株式を公開して数時間後に行われた米eWEEKの取材でグリーン氏は、「これは当社の知名度を高める素晴らしいイベントだと考えている。われわれは当社のソフトウェアに誇りを持っている。当社のソフトウェアは顧客の間で大好評だが、そのことを人々に知ってもらうことが、われわれにとって最大の課題の1つだ。今日のイベントは、その点で大きな貢献をすると期待している」と語った。

 ガートナーのアナリスト、トム・ビットマン氏によると、ヴイエムウェアは事業強化につながる買収対象を探すだけでなく、IPOで調達した資金の一部をコンサルティング部門の新設に投入するのが賢明だという。ヴイエムウェアはIPOで成功したが、同社を取り巻く競争環境はますます厳しくなっている。ライバルベンダー各社は、Xenハイパーバイザーを採用することで、ヴイエムウェアに代わる低価格の選択肢をアピールしている。

 しかし何といってもヴイエムウェアにとって最大のチャレンジとなるとみられるのは、「Microsoft Windows Server 2008」とViridianハイパーバイザーだ。Viridianは年末までにベータ版が登場する見込みだ。

 「この5〜6年間、ヴイエムウェアはほとんど競争にさらされたことがない」とビットマン氏は話す。「最初の本格的な競争が起きたのは、Xenベースのオープンソース製品を開発するベンダが出てきたときだ。そして年内にはマイクロソフトのViridianのベータ版が登場する。マイクロソフトの製品はヴイエムウェアを脅かす存在になるだろう。それにマイクロソフトは管理技術も大幅に改良した」。

 フロリダ州フォートローダーデールに本社を構えるシトリックスの最高戦略責任者、ウェス・ワッソン氏によると、同社はXenSourceの買収でヴイエムウェアの競合企業のリストに入ることになるという。

 シトリックスは1年近く前から、デスクトップのレベルとデータセンターの両方で自社の仮想化技術の勢力拡大を目指してさまざまな方策を検討してきた、とワッソン氏は話す。

 XenSourceの買収により、シトリックスはデスクトップの仮想化とクライアントへのアプリケーション配信の分野を強化できるだけでなく、データセンターにも進出してこういったサービスを顧客に提供できるようになるという。

 「あらゆるネットワーク上であらゆるユーザーにあらゆるアプリケーションを配信できるようになりたい」とワッソン氏は語る。さらに同氏によると、 シトリックスとXenSourceの両社は、マイクロソフトならびにヒューレット・パッカードと緊密な関係を築いており、これは Windowsが動作するx86サーバの市場でアドバンテージになるとしている。

原文へのリンク

(eWEEK Scott Ferguson, Peter Galli)

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