シマンテック インドCTOがVM対応ストレージを説明

仮想マシン環境の意外な欠点

2007/11/06

 「シマンテックもそうだが、現在多くの企業では、仮想マシン技術の導入によってデータセンターの最適化が進んでいる。スペースや電源コストの節約、ハードウェアコストの削減といったメリットがあるからだ。しかし、仮想マシンには、集中管理ストレージのコストが増大するという短所もある」

 11月2日に行われたSymantec Visionに合わせて来日したシマンテック インドCTOのバサント・ラジャン氏が11月5日、シマンテックリサーチラボ(SRL)で開発を進めているいくつかの技術について説明した。この中で同氏は、仮想マシンの普及にともなって浮上するであろう課題に触れ、その解決案を紹介した。

symantec01.jpg シマンテック インドCTO バサント・ラジャン氏

 例えば、1台の物理的なマシン上に複数の仮想マシンを構築した場合、NASやSANといった集中管理型ストレージに、仮想マシン単位でOSやアプリケーションが格納される。仮想マシンの数が増えれば増えるほど、必要とされるストレージ容量は拡大し「多くのコストがかかることになる。これが、今の仮想マシン方式のマイナス面だ」(ラジャン氏)

 これに対し現在、VM対応ストレージ(VMAS)という、ストレージを効率よく利用するための技術を開発しているという。VMASは、ストレージプールと仮想マシンの間で動作するソフトウェアだ。複数の仮想マシンをスキャンし、共通のファイルは全体で1つだけ保存し、異なるファイルのみを各仮想マシン単位で格納する。ユーザーからは各仮想マシンがそれぞれ固有のファイルを保有しているように見せながら、ストレージを効率よく利用できるという。

 また、共通のファイルを抜き出して保存することで、パッチ適用も1つのファイルに対してのみ行えばよくなる。仮想マシンごとにパッチの管理を行う必要がなくなるため、運用管理の負荷を下げることにもつながるという。

 もう1つ興味深いのは、仮想マシン向けのバックアップツールだ。現行のバックアップツールでも、複数の仮想マシンに対しまとめてバックアップを取ることは可能だが、リストアを個別に行うことはできず、すべての仮想マシンをまとめて戻すことになる。しかし、これは管理のニーズにそぐわない。

 「バックアップは一度にまとめて行いながら、仮想サーバ単位の個別のリストアを実現する。シンセティック(合成的)なバックアップイメージによって、仮想マシン1台ごとのリストアを可能にする」(ラジャン氏)

 これが実現されれば、より柔軟なフェイルオーバーが可能になる。物理サーバから仮想サーバへ、あるいは逆に仮想サーバから物理サーバへ、あるいは仮想サーバどうしで……といった具合に「あらゆる組み合わせが実現できる」(ラジャン氏)。この技術を災害対策(ディザスタリカバリ)に適用することも可能だ。

 ラジャン氏は、仮想化によってシステムを柔軟に構成できるようになる反面、管理の手間が増大する可能性に触れ、「仮想マシンのライフサイクル管理を支援していきたい」と述べている。

 なお同氏は説明会の中で、ほかにもいくつかの技術に言及した。セキュリティ分野では、ファイルシステムをバイパスして直接セクタを読み取ることで、rootkitによる偽装を回避する「RAWディスクウイルススキャン」や「レピュテーション」に基づくマルウェアの検出といった技術を開発し、実装しつつあるほか、データセンター向けに、アノーマリ方式によって設定ミスを自動的に検出できるような技術を開発しているという。

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(@IT 高橋睦美)

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