[Analysis]

大切なことは分かっているんだけど

2004/04/20

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 「ベンダの口車には乗りたくない。いい加減にしてほしい」。企業の情報システムの運用管理を効率化し、生産性を向上させるという世界標準の運用管理基準「ITIL」(Information Technology Infrastructure Library)について、ユーザー企業に聞いた際の反応だ。ベンダに対するユーザー企業の不信感は強いという私の印象はさらに深まった。

 ITILはユーザー企業に対して大きなメリットを提供する。システム運用管理のベストプラクティスにしたがって日々のオペレーションを改善し、全社の最適化を目指す。ITILは英国で1980年代に生まれ、その後世界に広がった。日本でもベンダやシステム・インテグレータ、コンサルタントファームなどが業界団体「ITサービスマネジメントフォーラムジャパン」(itSMF Japan)を2003年に設立した。

 しかし、ユーザー企業の反応はいまいちだ。上記のようにあからさまに反感を表わす企業もいる。これまでも新しいテクノロジや“世界標準”が表れるたびにベンダがユーザー企業に売り込みをかけてきた。ユーザー企業にとっては「またか」という思いが強いのだろう。実際、ベンダが展開しているITILの教育トレーニングを受講するのはベンダのエンジニア、コンサルタントが中心で、ユーザー企業の動きは鈍い。

 もっともITILは特別な運用管理方法を企業に求めているわけではない。運用管理のベストプラクティス集と呼ばれることからも分かるように、運用管理のさまざまな場面のプロセスを継続的に改善することが基本的なコンセプトだ。逆にいえば、システムの運用管理がきちんとできている企業であれば、ITILにある内容はすでに実施しているということだ。「分かりきっていることを商売にするな」という思いが先進的な企業にはあるのだろう。ただ、システムを運用管理するという考え自体が希薄な企業も多い。そのような企業の指針としてはITILは極めて有効だと思う。ベンダとユーザー企業が相互不信をなくし、適切なパートナーシップを結ぶことが大切だと思うのだが、現実はなかなか難しい。

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