[Analysis]

はてな的な会社で、はてな的に働く?

2006/04/04

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 @ITがスタートした2000年は、ほぼ10年間続いた不況状態から日本経済がようやく脱却する兆しが見え始めた年だった。経済不況化においてIT産業の営業担当者が最も敏感に反応したのは、顧客企業のシビアな情報化投資額であり、それゆえ、提案内容を象徴する最大のキーワードは「TCOの削減」だった。メインフレームやオフコンを、クライアント/サーバ型のPC環境に移行する技術がはやったのは、偶然ではないのかもしれない。しかし、経済環境の復活と並行して、ITの技術トレンドは新しい顔を見せ始めた。ワールド・ワイド・ウェブが企業情報システムを構築するための重要な要素となり、それに合わせて、さまざまな技術が生み出された。オープンソースという考えが普及し、開発スタイルに革命的な変化が訪れ始めたのもこのころのことだ。

 いわゆるシステム・インテグレータといわれる企業は、いまでも日本のIT産業界を担っている。これらの企業は顧客からシステム構築の注文を受け、要件通りに構築する受託開発が業務の中心だ。Webシステム開発の時代であっても、受託開発というIT業界のビジネスモデルにはあまり変わりがない。プログラマかシステムエンジニアかITエンジニアか、呼び方はさておき、彼らの多くが受託開発の環境下でいまだに厳しい仕事に従事していることにも変わりはない。IT産業への就職希望者が、ITという一見華やかに語られるイメージとは裏腹に、実はそれほど多くないのは、労働環境の過酷さがいまだに改善されないという現実があるからなのだろう。

 しかし、ITエンジニアに対する厳しいイメージは、少しずつだが緩和しつつあるという気配を感じる。梅田望夫の「ウェブ進化論」(ちくま新書)のような本が世に出て、広く読まれているということは、ワールド・ワイド・ウェブをめぐるさまざまな状況(技術論も含めて)が、社会的な認知度を高めているということの証だといえる。この本ではグーグルという企業の極めてユニークな在り方を、次世代のIT企業の雛型(ひながた)として提示しているが、日本でもすでに「はてな」や「mixi」「GREE」のような企業が新たな「IT系企業」として活躍している。

 知り合いのIT系書籍編集者がある時いった。「いま、日本の多くのITエンジニアは、はてな的な会社で、はてな的に働くのにあこがれていると思う」。「はてな」の部分をグーグルやWeb2.0に置き換えても同じことだ。

 ネットバブル時に勃興(ぼっこう)したいわゆるITベンチャー(楽天やライブドア、サイバーエージェントなど)と、「はてな的企業」との間には、インフォメーション・テクノロジーというものに対する根本的な態度の違いがある。前者はテクノロジーをビジネスの道具として利用し、後者はテクノロジーそのものをビジネスにしている。ITエンジニアにとって、どちらの種類の企業で働くことが幸福か、そもそも、両者を比較することにどれほどの意味があるのか議論が分かれるところだが、ITを巡る状況が、これまでとは異なるパラダイムへと突入しているのは確かである。

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