[Analysis]

メガトレンドとしてのサーバ仮想化

2006/07/19

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 IAサーバの仮想化技術とその実装は急速な進展を遂げており、今後のITシステムにおける基盤を担う存在になりつつある。日本ヒューレット・パッカードは、2007年における国内案件の約20%がサーバ仮想化に関連するだろうとしている。IBM、NEC、富士通などにとっても、サーバの仮想化はITプラットフォーム戦略の中核に位置しているといっていい。サーバ仮想化は、IT業界においてベンダとユーザーの利害が完全に一致する数少ない例の1つといえるかもしれない。

 ITシステムベンダにとってサーバの仮想化は、少なくとも2つの点で大きな意味を持つ。1つはサーバ統合による利益率の改善。コモディティ化が進む部門サーバレベルのマシンから、最新の高性能あるいは高集積なサーバマシンにユーザーを誘導することで、マージンの向上を図ることができる。もう1つは製品差別化の促進。サーバの仮想化にストレージの仮想化などを組み合わせたシステム全体としての仮想化を、どのように導入・管理がしやすく堅牢・高性能な仕組みとして提供していくかについては、各社の工夫の余地が大いに残されている。ベンダにとっては、ハードウェアや管理ツールの差別化を図れる新たなフロンティアとなっている。

 NECや富士通が自前のサーバ仮想化技術を開発していることは、過去のクローズドな世界への回帰と受け止められるかもしれない。しかし、本質的にサーバ仮想化技術はソフトウェア(少なくともアプリケーション)とハードウェアの間の一枚岩の関係を切り離すものであり、仮想化技術でユーザーを囲い込むことはまったくの論理矛盾となってしまう。

 ユーザーにとってのサーバ仮想化のメリットは各所で喧伝(けんでん)されているので、ここでは大部分を割愛し、2、3のポイントだけを改めて指摘しておきたい。

 サーバ仮想化技術を用いて情報システム部門にサーバを統合した場合、業務部門におけるアプリケーション構築要求が発生するたびに新規ハードウェアを調達する必要がなくなるほか、既存のソフトウェアイメージを即座に再利用して一部改変を加えることにより、新たなアプリケーションを構築できるようになる。これは、迅速な新規アプリケーションの立ち上げにつながる。

 また、各アプリケーションが必要とするCPU処理能力やストレージ容量は、当初から的確に予想できるわけではない。物理的なシステムを懸命に予測して余分に調達するよりも、論理的にシステムリソースを割り当て、ニーズに従ってその割り当てを拡張していく方がはるかに効率的だ。アプリケーション運用開始後に、アプリケーションの重要性が増した場合には、より堅牢なハードウェアへ乗り換えるのも容易になる。

 サーバ仮想化技術のおかげで、ハードウェアの調達とアプリケーション利用は切り離して考えることができるようになる。そして、どの業務部門がどれくらいのシステムリソースを利用するか、どういうサービスレベルを求めるかに焦点が移る。こうして、「ITとビジネス要求の融合」というIT業界のうたい文句は、少しでも現実化していくはずだ。

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