[Analysis]

10年単位のトレンドは「透過的コンピューティング」

2007/12/03

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 この10年余りのITの歴史について確実にいえることの1つは、ITを構成するさまざまな要素において透過性が高まってきたということだ。

 ネットワーク技術の分野では、最大のキラーアプリケーションであるインターネットのおかげで世界中に普及したTCP/IP技術や、親しみやすさを前面に押し出し、業界内の広い支持と、これに付帯する急速な価格低減効果によってあっという間に広まったイーサネットが、通信の透過性に貢献した技術の筆頭に挙げられる。これらの技術は、レイヤ3までをカバーする共通基盤として広く受け入れられ、結果として大部分の人々は通信技術の多様性について考える必要がなくなった。

 共通のネットワーク基盤のうえにコンピューティングリソースを抽象化し、透過性を目指す最新の動きとしてちょうど騒がれ始めているのは、米グーグルや米アマゾンによるアプリケーション・プラットフォーム提供サービス/プロジェクトだ。「クラウドコンピューティング」などと表現されるこの世界では、サーバやストレージが抽象化されて透過的になり、アプリケーションを開発者や利用者が登録すると、物理的にどのサーバやストレージを使っているかが分からないまま(あるいは分かる必要なく)動作するようになるとされる。ただし、サービス提供形態、品質など、エンタープライズユースを考えた場合、クラウドコンピューティングにはまだまだ分からない要素が多い。

 だが、クラウドコンピューティング的なものを実現する技術の一部は、すでにどんな企業でもその気さえあれば利用できるようになっている。サーバとストレージの仮想化は、既存の物理的な分散システムの統合に使えるのみならず、ITリソースの動的な割り当てによって物理システムの限界を超えるということを容易に実現している。

 最新のストレージにおける容量拡張は、追加コンポーネントを調達して既存のストレージシステムに接続しさえすれば、残りのほとんどすべての作業をストレージが自動的に行ってくれるようになっている。この作業のために稼働中のシステムを停止させる必要はない。

 サーバ仮想化技術でも、ある物理サーバには処理しきれない負荷を発生させる仮想サーバを、その稼働を停止することなく、ほかの余剰処理能力が十分ある物理サーバにその場で移動することがすでに可能になっている。来年にかけては、複数の物理サーバにまたがって仮想サーバの完全なフェイルオーバを実現する技術も登場の見込みだ。

 企業の情報システムについて、この10年余りで面倒になったことの1つは、悪い意味でのサーバの分散化が進んで管理もままならなくなってきたことだ。だがサーバやストレージの透過性を高める技術が、この混乱した状況を打開するためにも重要なカギになるはずだ。大切なのは、これらがいますぐにでも使える技術だということだ。

(@IT 三木泉)

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