[コラム:Spencer F. Katt]
シスコのファインディング……

2005/10/18


 「なにか歴史に残りそうなことでもあったら起こしてくれ」。隣の友人にそうささやき、吾輩は席に着くやいなや目を閉じた。われわれはカリフォルニア州マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館にいた。サン・マイクロシステムズとグーグルの共同記者発表がそこであったのだ。しかし吾輩はほどなく、ある面で歴史的と言えなくもない光景を目にすることになる。ステージ上に、16世紀のスペイン王室よりも濃密な血脈のキャラクターたちが並んだのだ。

 実際、サンの国王スコット・マクニーリ自身、ステージ上のパートナー、グーグルのCEOエリック・シュミットについて、その昔、サンで一緒に働いていたと指摘し、サンのチーフ・アーキテクトでネットワーク・システム担当上級副社長のアンディ・ベクトルシャイムが、サンとグーグル両社の初期投資家の1人であることを明らかにするなど、両社の親密な関係を強調した。

 一方、会場に詰め掛けた記者たちには、“デュワーズ・プロフィール”というウイスキー・メーカーの有名な広告キャンペーンをパロって、“ドゥーワーズ(Doer's:実行者の)・プロフィール”という発表資料が配られた。それによると、シュミットの最も尊敬する人物は、ヴィント・サーフだとか。そう、インターネットの生みの親と呼ばれ、つい最近、グーグルのスタッフに迎えられた技術者だ。

 で、シュミットの最も嫌いなものが“エグゼクティブ(自分自身を含めて)”であることを知った吾輩は、激しく同意しながら、東海岸に戻るために席を立った。

 ボストンのオフィスに到着すると、銀行員の友人から電話が入った。彼の話では、FDIC(米連邦預金保険公社)が銀行およびオンライン商取引サイトの認証に関して、今後厳格な規制をかける方針を固めたもようだ。具体的には、バンク・オブ・アメリカのSiteKeyプログラムのようなマルチファンクション認証で、ログイン時における顧客の安全性向上を要求するらしい。

 電話を切ったあと、あちこちのブログをチェックしていると、いくつかのサイトで「マイクロソフトが娯楽産業向けに1回しか再生できない安価な自動消去型DVDの開発を進めている」という裏情報が流されていた。次の日、読者からのコメントボックスは当然、ビル・ゲイツを悪し様に罵る書き込みで溢れていた。が、その情報、じつはまったくのでっち上げであることが判明した。「嘘ではあるが正確だ」と、ダン・ラザーなら言ったかもね。

 その日、あるベテラン技術者から突然ランチの誘いがあり、吾輩はオフィスの自販機で買ったばかりのチェダーチーズ・クラッカーをパスすることにした。その技術者は、鍋でグツグツ煮られたアオザメを食べながら、オラクルがシーベルの買収を発表して以来、CRM業界が錯乱状態に陥っていることを教えてくれた。例えば、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフは、シーベルの従業員に対して、年内に自分の会社に移籍すればボーナス5000ドルを出す、とオファーしているそうだ。一方、オニックス・ソフトウェアは、ラリー・エリソン所有のCRMプロバイダから移行を希望する企業に最大50万ドルのクレジットを提供するらしい。

 グロテスクな鍋料理を平らげたあと、吾輩は、シスコ・システムズがネットワーク・メモリチップ・サプライヤのネモ・システムズを1250万ドルで買収しようとしていることを話題にした。技術者は「うむ」とうなずき、「もし今度また誰かが“シスコのファインディング・ニモ”(スペルは同じNemo)とか言ったり書いたりしたら、俺は速攻でアクビしてやるつもりだがね」と応じた。吾輩は「そうだな」と苦笑いし、その場をつくろったあと、中座することを詫びて、直ちに編集者に電話を入れ、今週のコラムのタイトルを変更するよう指示した。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Sun and Google: Incest R Us

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