Spencer F. Katt

盗難ラップトップの情報提供にビール一生分

2007/11/12


 辛抱強く待ち続けた筋金入りのレッドソックスファンである吾輩だ。先週しばらくの間、ヤンキースファンの友人たちに鼻持ちならない横柄な態度を取ったことも、神様はきっと許してくれるだろう。わがボストンのチームが4年ぶり2回目のワールドシリーズ制覇を達成したのだ。「こうして黄金時代は作られていくのだよ」と、吾輩は歓喜の涙をぬぐいながら、“来年もがんばろう”という掛け声に新しい意味付けがなされたことを喜ばずにはいられないのであった。

 しかし、ベースボールシーズンが終わり、ピンと張り詰めたような冷気が町を包むようになると、吾輩の心の中で再び南の暖かい日差しを求める回遊性の本能がうずき始めた。そして吾輩は、そよ風が心地よいフロリダ州セントピーターズバーグに降り立った。そう、知る人ぞ知るウィキペディア財団の本拠地だ。この際、ウィキペディアの創立者、ジミー・ウェールズに話を聞くのも悪くない、と思い立ったわけである。彼はいまもウィキペディアの福音を広めようと精力的に活動しており、ウィキペディア財団は世界中の執筆者がそれぞれの国の言語で記事を共同編集するオープンな百科事典を維持するため広く寄付を募っている。

 ウェールズによると、ウィキペディアは全世界の7000言語のうち、わずか250言語にしか展開されていないという。彼は近く、ローカル言語でウィキペディアを展開するためのワークショップ「ウィキペディア・アカデミー」(同財団主催)に出席するため、南アフリカに出向く予定だ。「おお、これから春を迎える地域ではないか」と、吾輩が喜び勇んでトラベルコーディネータに連絡したのは言うまでもない。

 「もっと多くのアフリカ系言語にウィキペディアを展開し、それらの言語を話す人々にもグローバルな知識の共有に積極的に参加してもらいたい。それがまた、その言語の存続を助けることにもなるのだ」と、ウェールズは力説した。

 ウィキペディア財団の取材を終えたあと、突然、ニュージーランドの友人から電話が入った。同国の小さなビールメーカーが、盗まれたラップトップを発見した人に懸賞金と魅力的な副賞を提供すると発表して、大変な騒ぎになっているそうだ。クラウチャ・ブリューイングというビール醸造所は、重要な研究データと財務データが含まれたラップトップを取り戻すために、情報提供者に生涯にわたってビールを提供するという。同社の計算によると、一生分のビールの量というのは、毎月12本に相当するらしい。

 ラップトップは10月15日の夜間、窃盗犯によって持ち去られたという。現時点で懸賞金とビール一生分を手にした人は、まだいないそうだ。しかし、クラウチャ・ブリューイングのWebサイトによると、今回の懸賞金と副賞がメディアに大きく取り上げられたことで、創立3年目の醸造所にとっては、ビール樽に換算できないほど大きなパブリシティになったとか。

 ローカルのメディアが取り上げたあと、この話題は瞬く間に全世界を駆けめぐり、盗難被害にあった小さな、しかし野心的なビールメーカーは、どうやらその損失を打ち消して余りある大きな利益を得たようだ。

 一方、カリフォルニア州バークレーから届いたメールによると、カリフォルニア大学の研究者たちは、直径が人間の毛髪の1000分の1というカーボンナノチューブでラジオを作る研究を進めているらしい。このナノチューブラジオが受信した最初のFM放送は、研究所の隅から発信されたデレク・アンド・ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」とビーチボーイズの「グッド・バイブレーション」だったそうだ。バッテリーとヘッドホンがあれば、オールディーズでご機嫌になれるわけだ。すばらしいじゃないか。それでエアギターもかき鳴らせるのかな?

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