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@IT[FYI] 企画:アットマーク・アイティ 営業企画局
制作:アットマーク・アイティ 編集局
掲載内容有効期限2004年12月31日

 

Linuxの真実、Windowsの真実(11)
ワークロード:可用性/スケーラビリティ

第11
座談会:システム・インテグレータから見たLinuxとWindows(後編)


前編に引き続き、実際に企業に対するシステム・インテグレーションの現場でのシステム導入や管理に携わっていらっしゃるシステム・インテグレータ、システム管理者3名の方々から、LinuxとWindowsに関するお話をうかがった。

 

■システム管理のしやすさは?

―― システム管理のしやすさという意味でUNIX/LinuxとWindowsを比べるとどうなりますか?

 
座談会参加者
■小川 貢 氏
情報システム会社勤務。グループ企業の情報システム・インフラ開発を担当。SAP/R3による大規模基幹システムから、部門レベルのC/Sシステム開発までを幅広く担当。
■渡邊 誠人 氏
社員8名からなるシステム・インテグレート会社を経営。個人商店向けの小規模システムから、中央省庁関連の大規模システム開発までを手がけた経験を持つ。また案件によっては、開発に加えシステムの導入、展開、運用までを担当している。
■斉藤 高志 氏(仮名)
情報システム・インテグレーションなどを手がけるビジネス・コンサルタント会社勤務。企業内システムのサーバ、クライアント管理、コンシューマ向けインターネット・サーバの設計運用管理、情報システムの運用設計など、UNIXからWindowsまでを含むマルチベンダ・システムの管理に造詣が深い。

斉藤氏:結論からいえば、UNIX/Linuxに精通している管理者ならUNIX/Linuxのほうが管理しやすいと感じるのではないでしょうか。こういう人にとっては、WindowsのGUIベースの管理はまどろっこしいようです。UNIX/Linuxならいっぺんにできることが、Windowsではできない、という不満をよく耳にします。

小川氏:当然かもしれませんが、これまでUNIX系のシステムを管理してきた経験があるなら、やはりUNIX/Linuxのほうが管理しやすいでしょう。管理のコツやツールの活用法などがそのまま生かせますから。

斉藤氏:SNMPなどのネットワーク監視ツールはUNIX/Linuxが強いですね。

小川氏:問題は、そういう経験豊富な管理者は非常に少ないということです。それほど経験がなくても一定レベルの管理作業が可能という意味では、GUIツールが使えるWindowsのほうが圧倒的に有利でしょう。UNIX/Linuxではこまごま知らなければならないことも、GUIツールならある程度はツール任せにできますから。

渡邊氏:管理者向けのツールとはいえ、分かりやすさも大事です。高機能なのはいいが、英語のツールなどだと、アラートが報告されていても気が付かないでほったらかしにしてしまうケースがあります。「何かエラーが表示されているが、英語でよく分からない」という相談を何度か受けたことがあります。また、オラクル・データベースのログを管理するなど、有償製品を管理するとなると、UNIX/LinuxよりもWindows環境のほうがツールは多くて充実していると思います。

小川氏:そうですね。システムの構成要素としてパッケージ製品を使う場合は、Tivoliとか、NetIQとか、最近だとMOM 2005(Microsoft Operations Manager)とか、管理ツールもパッケージ製品を使ったほうが楽に管理できるでしょう。

■Windowsを使うと、マイクロソフトに囲い込まれるのか?

―― 情報システムを開発する際、とにかく「Windows以外で」という要求は多いのですか?

 

小川氏:最近は変わりつつありますが、けっこうありますね。ひと昔前、Javaプログラマがまだ希少だったころは、UNIX+Javaベースのシステム開発は非常に高額でした。Windowsベースで作れば数分の一で開発できるような案件が、UNIX+Javaベースでどんどん発注されていました。お金をかけても「Windowsを避けたい」というユーザーは実際にいます。

―― それはどうしてでしょう。

 

小川氏:1つはマイクロソフトに囲い込まれたくないという気持ちと、あとはCodeRed、Nimdaなどのセキュリティ・トラブルがトラウマになっているということがあるでしょうか。

   
 

斉藤氏:Windows NT 3.xなどの古いバージョンでの経験が強烈に残っており、「Windowsは不安定で、定期的にリセットが必要だから」という印象を持っている人もいますね。今のWindows Server 2003は非常に安定しているんですが。

―― Windows製品を使うと、マイクロソフトに囲い込まれるのでしょうか。

 

小川氏:インターネットに対抗して、独自のパソコン通信ネットワーク(The Microsoft Network)を推進していたWindows 95くらいまでは、露骨な囲い込み戦略があったように思いますが、インターネット対応に大きく舵を切ったWindows 2000のころからはだいぶ変わったと思います。

―― 逆に、Linuxを使えば特定メーカーには囲い込まれないのでしょうか。

 

小川氏:ある程度以上の規模での企業利用では、メーカー・サポートのない製品を使うことは考えられません。従ってすでに述べたとおり、Linuxを選択する場合でも、RedHatやSUSEなどのパッケージを購入することになります。確かにLinuxはオープン・ソースのプラットフォームで、さまざまな開発主体が独自にソフトウェアを開発して公開し、サポートもしていますが、個別の開発主体ではなく、パッケージ・ベンダのサポートを期待するかぎり、パッケージにないプログラムを独自に持ってきてインストールしたり、パッチを適用したりすることはできません。内容やレベルは違うかもしれませんが、Linuxにしたところで、サポートを前提とするかぎり、特定メーカーに依存せざるを得ない部分はあります。

■管理者を育成しやすいのはどちら?

―― 経験が未熟な管理者を育成するという意味で、LinuxとWindowsを比較するとどうでしょうか。

 

斉藤氏:実際に何人かの部下を教育した経験がありますが、同じ時間をかけるならWindows環境のほうが成長が早いと思います。

―― それは何が違うのでしょうか?

 

斉藤氏:Windowsでは取っつきやすいGUIツールが使えるということと、サポートに関する情報が非常に豊富にあることだと思います。Linuxもインターネット上にたくさんの情報があるのですが、見るべき場所が分散していたり、日本語化されていないドキュメントが多かったりします。

   
 

小川氏:パッケージごとにサイトが分かれていて、相互リンクが徹底しておらず、用語が統一されていないですね。

   
 

渡邊氏:管理者育成にかかるコストという意味なら、私はWindowsもLinuxも大して変わらないと思っています。Googleなど強力な検索サイトの登場によって、複数のサイトにまたがる情報も比較的簡単に収集できるようになりましたから。

   
 

斉藤氏:そうはいっても、検索サイトを使いこなすのはそれほど簡単ではないでしょう。少ない工数で必要な情報が検索できるようになるという意味では、やはりTechNetやMSDNなど、情報ソースがまとまっているWindows環境のほうが効率的だと思います。

   
 

小川氏:有償製品ではありますが、TechNetやMSDNにはCD-ROM(DVD-ROM)版のライブラリがあり、これを購読してインストールすれば、ネットワークにつながなくても大量の情報から高速に目的のものを検索できるようになります。個人的には、このライブラリは大変重宝しています。

■Linux、Windowsの適材適所は?

―― 最後に、LinuxとWindowsの適材適所をお聞かせください。

 

小川氏:繰り返しになりますが、サポートのないフリーLinuxの企業導入は推奨しません。またサポートのあるディストリビューション・パッケージにしても、基幹系に導入するのはお勧めしません。実績がありませんから。

―― ファイル/プリント・サーバやメール・サーバ、DNSなど、単機能サーバで、独自のカスタマイズを行わない場合なら、Linuxという選択も有効でしょうか。

 

小川氏:そうですね。実績のあるサーバ・ソフトウェアを単機能で使い、あまりカスタマイズする必要がないならLinuxサーバでもよいでしょう。ただしシステム側に業務要件を合わせられるような会社ならそれでよいのですが、たいていの日本の会社は、何が何でも既存の業務要件にシステムを合わせようとするところが多いのが現実です。つまり、すぐには必要なくても、将来的にはカスタマイズの要求が出てくる可能性が高いということです。ですから、実際のところLinuxに精通した管理者が身近にいる場合を除けば、Linuxの導入が適しているケースというのは非常に限定的だと思います。

   
 

斉藤氏:私は、システムの監視用としてはツールも充実していてLinuxも悪くないと思っています。プラットフォームを問わずに運用管理製品を検討するとすれば、本格的な有償製品としてはHP Open View とかMOM 2005 などがありますが、フリーで使えて小回りがきき、手軽なツールが数多く存在するという意味では、フリーLinux は便利です。ただしシステムの監視用途だけに限定しますが。

   
 

小川氏:基本的には賛成しますが、そうしたツールを使いこなすには高度なスキルが必要になる点に注意しなければなりません。また英語のメッセージやドキュメントを読む機会も増えるでしょうから英語力も併せて必要になると思います。

   
 

渡邊氏:そうですね。専業管理者ではなく、パソコンにちょっと詳しいというレベルの、いわゆる「にわか管理者」にはとてもお勧めできません。特に中小規模の企業では、残念ながらこのレベルの管理者しかいないことが多いです。

 

総括 : Linux/Windowsそれぞれに適材適所がある

 情報過多の状況では、得てして行き過ぎた情報の単純化が起こりやすい。本当はさまざまな側面があるのに、一部分だけが過大評価されたり、過小評価されたりして、非常に偏った印象だけが1人歩きしてしまう場合がある。

 Linuxは間違いなく優れたOSの1つだ。開発経緯から、UNIX環境で培かわれてきたサーバやツールの多くが移植されており、インターネット/イントラネット向けメール・サーバやWebサーバとして高い実績を誇っている。Windowsネットワークのファイル共有プロトコルであるSMB(Server Message Block)に対応したSambaを利用すれば、Windows NT 4レベルのファイル・サーバをLinuxで実現することも可能だ(第1回〜第3回)。

 さらにサーバ・ソフトウェアばかりでなく、Microsoft Office製品とのデータ互換性を持つデスクトップ・アプリケーションのOpenOfficeも登場し、クライアント用OSとしてLinuxを活用できる可能性も広がりつつある(第5回)。

 しかもLinux関連のソフトウェアは、ほとんどが無償で公開されており、必要ならソース・コードを入手して中身を確かめたり、その気になればコードを独自に変更したりできるとされている。こうしたLinuxの特徴は、ことごとくWindowsのような商用ソフトウェアの常識を翻すものだ。表面的には「高機能で開かれた無償OS」と捉える人がいるのも無理はない。

 しかしこのLinuxを企業に導入して利用しようとしたときには、さまざまなハードルを乗り越え、気付きにくいリスクやコストなどについてもじっくり考える必要があることが分かった。

 サポートを前提としないかぎり、雑誌の付録CDなどからLinuxを入手できることも事実だが、企業導入において、サポートのないOSを利用することは考えられない。万一の障害発生時などにサポートを受けたければ、有償のディストリビューション・パッケージを購入する必要がある。これには安くない出費が必要だ。

 またソース・コードを入手し、手を入れることもできなくはないが、高度な専門知識なしでは到底不可能であるし、第三者のサポートを期待するのなら実行すべきではない(オリジナル版になってしまい、一般的なサポート情報などが適用できなくなる)。こうした事情から考えて、現実の企業導入では、ソース・コードを参照する必要性はほとんどないものと思われる。

 これらについて十分な検討を行わずにLinuxの導入を急ぐと、設定が正しく行えなかったり、管理不能に陥ったり、予想外にTCOが増大したり、既存のネットワークやデータ資産との互換性に問題が生じたり、将来的なスケーラビリティの確保が困難になったりする。

 Linuxの欠点を過小評価する傾向は、特にWindowsユーザーに強い。確かにWindows OSは有償製品であり、基本的にはソース・コードの変更も容易ではない。しかし代わりにWindowsには、各種サーバ機能(ファイル/プリント・サーバ、Webサーバ、DNSなど)やシステム管理機能(Active Directoryや各種管理ツール)など、サーバの導入や運用で必要となる基本機能がパッケージ化されている。ソース・コードを容易に変更できるかどうかは、ほとんどの企業導入において影響がない。しかもその代わりとして、さまざまな技術情報やセキュリティ・ホールを解消する修正プログラム、各種無償ツールなど、マイクロソフトからの手厚いサポートが受けられる。両OSの絶対的な評価は簡単に下せないとして、少なくとも両者の常識は大きく食い違っており、一方の常識を他方に安易に当てはめて評価するのは間違いのもとである。

 Linux、Windowsとも、それぞれに優れた長所があり、それぞれに注意すべき欠点がある。両OSには適材適所があるということだ。システムのベース・プラットフォームとしてどちらを選択するかは、両OSが持つこれらの特徴と、システムの用途や環境などを照らし合わせて、長期的な視点を持って慎重に決断する必要がある。この際の選択のポイントについては、本シリーズで詳しく述べてきた。本シリーズが適切なシステム構築の一助になれば幸いである。

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<バックナンバー>
◆ インデックスページ 「Linuxの真実、Windowsの真実
◆ プロローグ 「LinuxとWindows。その本当のコストとリスクを評価するために
◆ 第1回 「ファイル/プリント・サーバの基本機能比較
◆ 第2回 「ネットワーク管理に不可欠なディレクトリ・サービス
◆ 第3回 「Linuxの本当のTCOを考える
◆ 第4回 「LinuxはWindowsより安全か?
◆ 第5回 「Office互換ソフトの実力とリスク
◆ 第6回 「Webサーバ・プラットフォームとしてのLinuxとWindows
◆ 第7回 「大規模Webホスティング・サービスでシェアを広げるWindows+IIS
◆ 第8回 「Webアプリ開発プラットフォームとしてのLinux+フリーJavaとWindows+.NET
◆ 第9回 「可用性、スケーラビリティを備えたシステム開発
◆ 第10回 「座談会:システム・インテグレータから見たLinuxとWindows(前編)
◆ 第11回 「座談会:システム・インテグレータから見たLinuxとWindows(後編)

 


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