Viper 2で学ぶXMLデータベース最新事情
Viper 2で学ぶXMLデータベース最新事情(1)

なぜ彼はLAMPを捨てXML DBに走ったのか


日本アイ・ビー・エム
中林 紀彦
2007/10/22

XMLデータベースという選択肢

 今回のような問題を防ぐために、Kさんはどうすればよかったのでしょうか? 実はアーキテクチャの選択の際に、「この部分は迷うことなくLAMPを選択しました」とLAMPのアーキテクチャを使ってしまったことが、データベースの設計に関するさまざまな問題の原因でした。このようなケースではMySQL(リレーショナル・データベース)よりももっと向いているデータベースがあります。そうです、XMLデータベースです。

 XMLデータベースはなぜ向いているのでしょうか? XMLデータベースはリレーショナル・データベースよりも変更に関して柔軟に対応できるからです。皆さんからは「XMLデータベースなんて数年前にはやったけど広まらなかったよね」とか、「XMLデータベースは知っているけど値段が高くてとても簡単には使えそうにないよ」といった声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。

 IBMがリレーショナル・データベースに続く第3世代のデータベースとしてハイブリッド・データベースを世に出してからすでに1年以上が経過し、もうすぐDB2 Viper 2(DB2 9.5)と呼ばれる新しいバージョンも登場してきます(2007年10月31日より提供開始)。Viper 2では、「トランザクショナルXML」と呼ばれるように、専用のXMLストレージ(pureXML™)にさらに磨きをかけています注3。しかもDB2 Express-C 9という形でフリーで利用できるものも公開されていますので、これを利用することで、サービス開始時の投資を抑えることもできます。

注3:V8までのDB2を含む従来のリレーショナル・データベースでもXMLを扱うことはできましたが、既存のデータベースの機能を利用したいわば“暫定的”な対応方法でした。XMLの格納方法は大きく2種類あり、XMLをテーブルの各列にマッピングする、シュレッディング方式と、VARCHARやCLOBといった列にそのままの形で保管する方式の2種類の方法が採用されていました。どちらの方式もそれぞれ、柔軟性とパフォーマンスのトレードオフで、両方の長所を持った本当の意味でのXMLデータベースとは呼べませんでした。

参考:従来のXML格納方式「連載:DB2でXMLを操作する(1)


XMLデータベース(Viper 2)による実装

 それでは、実際に先ほど紹介した例をViper 2を使って具体的に実装していってみましょう。

インストール

 XMLデータベースといっても特別なことはありません。以下にダウンロードとインストールに関する情報を載せておきます。これを見れば簡単にダウンロードからインストールまで行えるでしょう。ちなみに筆者の環境(Red Hat Linux Enterprise Server 5にViper2 Open Betaをインストール)では5分程度でインストールが完了しました。

データベースの作成

 これも通常のリレーショナル・データベースの作成となんら変わりはありません。ただし気を付けるべき点としては、データベースのコードページ(文字コード)です。Viper 2では、UTF-8以外の文字コードでもXML列を扱えるようになるのですが、現行バージョンDB2 9では、UTF-8のみXML列をサポートします。日本語を扱うケースでは、Viper 2以降でもUTF-8をお勧めします。これは、XMLの検索言語であるXQueryなどで日本語を扱う際に、UTF-8以外では問題となるコードがあるからです(これ以降のコマンド発行は、すべてデフォルトのインスタンス・ユーザー「db2inst1」で実行しています)。

$ db2 create database xmlsampl using codeset UTF-8 territory JP
DB20000I CREATE DATABASE コマンドが正常に完了しました。
リスト2 文字コードにUTF-8を指定したデータベースの作成



テーブルの設計・作成

 さて、MySQL(リレーショナル・データベース)のケースでは課題の多かったテーブルの設計ですが、XMLデータベースについてはまったく悩む必要はありません。要件のあやふやな今回のようなケースに関しては、すべての項目をXML列で吸収してしまいます。

 それではXMLを扱うために、XMLデータに対応したテーブルを作成しましょう。といっても特に難しいことはなく、XML列を通常のCREATE TABLE文で指定するだけです。

$ db2 connect to xmlsampl

   データベース接続情報

 データベース・サーバー                                   = DB2/LINUX 9.5.0
 SQL 許可 ID                                              = DB2INST1
 ローカル・データベース別名                               = XMLSAMPL

$ db2 "create table xmluser(id int, xmldoc xml)"
DB20000I  SQL コマンドが正常に完了しました。
リスト3 XML列を指定したテーブル作成

 これでXMLが利用可能になりますので、試しにデータを挿入してみましょう。データの挿入には通常のINSERT文を使います。今回はXML列にXMLスキーマを指定していませんので、挿入するXMLは自由です。Well-formed(XML文書として整形されている)であることが唯一の条件です。ですので「すべての開始タグと終了タグが対になっている」「ルートとなるタグがほかのタグの入れ子になっていない」「入れ子になっているタグの終了タグが親タグの終了タグより後にこない」といった条件を満たしてさえいれば、XML列への挿入が可能になります。

$ db2 "insert into xmluser values (1, '<ユーザ情報><ユーザID>1</ユーザID><ユーザ名>nakapa</ユーザ名><メールアドレス>nakapa@xxx.xxx.xxx</メールアドレス><姓>中林</姓><名>紀彦</名><都道府県>東京都</都道府県><住所>渋谷区</住所></ユーザ情報>')"
DB20000I  SQL コマンドが正常に完了しました。
リスト4 XML列へのXMLデータ挿入

<ユーザ情報>
  <ユーザID>1</ユーザID>
  <ユーザ名>nakapa</ユーザ名>
  <メールアドレス>nakapa@xxx.xxx.xxx</メールアドレス>
  <姓>中林</姓><名>紀彦</名>
  <都道府県>東京都</都道府県><住所>渋谷区</住所>
</ユーザ情報>
リスト5 リスト4で使用したXML


要件の変更にも柔軟に対応

 さてMySQL(リレーショナル・データベース)のケースでは、ここで要件の変更がありました。「興味」を追加する必要が出てきましたが、あせることはありません。データを変更すればすぐに対応可能です。

$ db2 "insert into xmluser values (1, '<ユーザ情報><ユーザID>1</ユーザID><ユーザ名>nakapa</ユーザ名><メールアドレス>nakapa@xxx.xxx.xxx</メールアドレス><姓>中林</姓><名>紀彦</名><都道府県>東京都</都道府県><住所>渋谷区</住所><興味>映画</興味><興味>ドライブ</興味><興味>スポーツ</興味></ユーザ情報>')"
DB20000I  SQL コマンドが正常に完了しました。
リスト6 要件変更に対応したINSERT文

<ユーザ情報>
  <ユーザID>1</ユーザID>
  <ユーザ名>nakapa</ユーザ名>
  <メールアドレス>nakapa@xxx.xxx.xxx</メールアドレス>
  <姓>中林</姓><名>紀彦</名>
  <都道府県>東京都</都道府県><住所>渋谷区</住所>
  <興味>映画</興味>
  <興味>ドライブ</興味>
  <興味>スポーツ</興味>

</ユーザ情報>
リスト7 リスト6で使用したXML

 いかがですか。XMLデータの柔軟さが理解できますね。テーブルの構造にはまったく変更を加えずに対応が可能になりました。この方法であれば、後からどんな項目が追加されてもすぐに対応が可能になります。また構築時だけではなく、サービスの途中でも簡単に変更が可能ですので、どんどん新しい機能を加えて、より良いシステムをつくっていくことが可能になります。

 さて、第1回はいかがだったでしょうか? 最近は、リレーショナル・データベースを使うことが常識のようになっていますが、そんなことはありません。今回のケースのように、要件が柔らかかったり、構築期間が非常に短いケースなどではXMLデータベースがその柔軟性を発揮してくれますので、無条件にLAMPを選択するのではなく、Viper 2などのXMLデータベースも選択肢の1つとして入れておいてください。

 次回は、XMLデータを検索するための言語「XQuery」についてのお話です。XMLデータの検索には専用のXQueryが必要なのです。(次回へ続く)

問題の解答


WITH W1 AS (SELECT ユーザID, ROW_NUMBER() OVER(PARTITION BY ユーザID ORDER BY 興味 DESC) AS NUMBER, 興味 FROM USER2),
W2 AS (SELECT ユーザID, 
CASE NUMBER WHEN 1 THEN 興味 END AS 興味1, 
CASE NUMBER WHEN 2 THEN 興味 END AS 興味2,
CASE NUMBER WHEN 3 THEN 興味 END AS 興味3
FROM W1)
SELECT U1.ユーザID, U1.ユーザ名, MAX(興味1), MAX(興味2), MAX(興味3) FROM USER1 U1, W2
WHERE U1.ユーザID = W2.ユーザID
GROUP BY U1.ユーザID, U1.ユーザ名;


  2/2  

 Index
連載:Viper 2で学ぶXMLデータベース最新事情(1)
 なぜ彼はLAMPを捨てXML DBに走ったのか
  Page 1
・いかにしてKさんは設計変更のワナにはまったか
Page 2
・XMLデータベースという選択肢
・XMLデータベース(Viper 2)による実装


Viper 2で学ぶXMLデータベース最新事情


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