IPv4アドレス枯渇の日を前に
WebプログラマのためのIPv6入門

おがわ あきみち
2011/1/31

IPv4アドレスが枯渇の日を迎えます。この記事では、これまでこの問題にあまり縁のなかったWebプログラマ向けに、IPv4アドレス枯渇とIPv6移行にともない生じる課題について説明します。

 迫るIPv4枯渇の日

 間もなく、IPv4アドレスが枯渇の日を迎えようとしています。これまで拡大を続けてきたインターネットも、1つの節目を迎えます。

IPv4 Address Report(http://www.potaroo.net/tools/ipv4/)では計算ミスからか、一足早く枯渇の日が到来した

 IPv4アドレス枯渇とIPv6への移行は、ネットワークとしてのインターネットに直接関わっているインフラ系エンジニアには非常に身近な話題でしょう。しかし、その他のIT系エンジニアにとっては、あまり実感が持てない問題だと思います。

 そこで今回は、Webプログラマの皆さん向けに、IPv4アドレス枯渇とIPv6への移行とは何なのか、どんな課題が生じるのかを紹介しようと思います。

 IPv4アドレス枯渇に関する誤解

 まずはIPv4アドレス枯渇そのものについてです。

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 しばしば誤解が見られるようですが、IPv4アドレスが枯渇したからといって、いまのインターネットが停止するわけではありません。単に、いままでよりも「拡大が難しくなる」だけです。これは大事なことですので、よく覚えておいてください。

 IPv4アドレス枯渇問題はしばしば「アナログ放送の停波」に例えられます。けれど、日本でのアナログ放送停止とIPv6への移行とでは、問題の構造が根本的に異なります。アナログ停波後は、基本的にアナログ放送の受信はできなくなります。ですがIPアドレスの場合、IPv4アドレスの在庫が枯渇しても、IPv4での通信ができなくなるわけではありません。IPv4はIPv4のまま、今後もかなり長い期間、運用され続けるだろうと思われます。ですから、必要以上に大騒ぎする必要はありません。

 ただしインターネットは、IPv4枯渇後も引き続き拡大し続けていくことでしょう。その拡大のために、IPv6への移行が促されるようになります。IPv4のインターネットを継続しつつ、新しいIPv6のインターネットが普及していくことによって、2つのインターネットが同時に利用される形になります。

図1 v4枯渇にともない、2つのインターネットが重なって運用される時代に

 この「2つのインターネットが同時に利用されていく」ということが、今後のWebアプリケーション運用に際して重要なポイントだと思われます。

 インターネットが2つになったときの注意点とは?

 IPv4とIPv6の両方のネットワークが運用されるようになると、これまでと何が変わるのでしょう。何に注意しなければならないのでしょうか?

 Webサーバの運用まで話を広げると非常に細かくなりますが、今回は「Webプログラマ」という視点で考えたいと思います。

アクセスログの扱い

 まず最初に浮上する問題は、アクセスログの扱いです。2つのネットワークが運用されると、IPv4とIPv6のアクセスログが別々のものとして保存される可能性があります。そうなると、いままでは1個所で行えばよかったアクセスログ解析を、2種類同時に行わなければならなくなります。

 しかも、IPv6のアドレス表記はIPv4とは大きく異なります。そのため、アクセスログ解析スクリプトを新たに書かなければならない場合もありそうです。

 もう1つ厄介なのが、IPv6の逆引きに関してです。IPv6では一般的に、128ビットのアドレスのうち64ビットを、セグメント内の機器を表すために利用しています。この条件下で何も考えずに逆引きアドレスを設定しようとすると、例えば1つの家庭用に2の64乗個の逆引きアドレスを設定しておく、というような極端な用意が必要になります。それを契約個数分設定するとなると、逆引きデータベースは膨大な大きさになるでしょう。その手間を考え、逆引きを設定しない環境が多く登場するかもしれません。

  

Webサーバの設定

 もう1つはWebサーバの設定に関してです。

 IPv4とIPv6、2つのネットワークでの運用が一般的になるまでには、さまざまな苦労があると予想されます。例えば、IPv4とIPv6用のWebサーバが別々に動作している環境では、デバッグ時にIPv4版とIPv6版の問題を勘違いする可能性があります。間違いで無駄に時間を浪費するなど、作業の工数が上昇しそうです。

 そのような問題を避けるために、トラブルシューティングの方法に工夫が必要になるでしょう。エンドユーザーから「うまく表示されないんですけど」というクレームが来たら、まず「お客様はIPv4でお試しですか? それともIPv6でお試しですか?」と尋ねるという状況が発生するかもしれません。

 さらに、DNSによる名前解決で利用するIPバージョンと、実際の通信を行うIPバージョンが異なる場合も考えられます。ここもまた切り分けが必要になるでしょう。

 

WebプログラマのためのIPv6入門
迫るIPv4枯渇の日
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インターネットが2つになったときの注意点とは?
  ISP規模でのNATに関連する変化
v4、v6両方を意識しつつ環境変化への対応を
「Master of IP Network総合インデックス」


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