INTEROP TOKYO 2011 プレSHOWレポート

ネットワークのパラダイムシフトが見えてきた


三木 泉
@IT編集部
2011/6/7
6月8日よりINTEROP TOKYO 2011が開催される。「Best of Show Award」へのノミネート結果を基に、ネットワーク/クラウドの新たな潮流を俯瞰してみよう。(編集部)

 2011年6月8日より開催の「INTEROP TOKYO 2011」には、ネットワーク/クラウドの新たな潮流を反映し、震災後の新たなニーズに対応するさまざまな製品やサービスが登場する。毎年恒例のBest of Show Awardへのノミネート結果から、これを俯瞰してみよう。

 なお、未発表のため、ノミネートされていてもここでは紹介できない新製品もあることをあらかじめお断りしておく。

イーサネットスイッチのパラダイムシフト

 インターフェイス速度とポート密度の向上はまだまだ重要だが、それ以外には差別化が難しくなってきているのではと思われていたイーサネットスイッチに、新たな世代の製品が登場しつつある。

 コンセプトとしては主要スイッチベンダの多くが発表し、それぞれ推進する技術を使って製品化を進めているが、中でもいち早く発売され、すでに本格的な導入事例を蓄積しつつあるのがブロケードコミュニケーションズシステムズの「Brocade VDX 6720シリーズ データセンター・ファブリック スイッチ」。「大企業向けネットワークインフラ構築製品」カテゴリでノミネートされている。STPを排除し、スイッチ間接続ではツリー状ではなく、インターネットにおけるルータ間接続のようにフラットで、まさに「ファブリック」的な接続形態を可能にしている。

 また、新たなスイッチをネットワークに参加させる際に、管理者が設定する必要がないというのも非常に大きい。ほかのスイッチとネットワーク構成のミスは起こりにくいし、単一障害点をなくす構成を容易に実現できる。

 接続の変更も簡単だ。例えばデータセンターで仮想マシンが増加し、サーバ間およびサーバ/ストレージ間の帯域を増大しなければならなくなったら、スイッチ間の接続本数を増やすだけで帯域を拡張することもできる。仮想マシンがライブマイグレーションで移動しても、VLAN IDなどを追随させるようなことも可能だ。

 同じ大企業向けネットワークインフラ構築製品カテゴリには、以下の製品がノミネートされている。

 F5ネットワークスのアプリケーション・デリバリ・コントローラ(負荷分散やSSL処理などを行う製品)には、ボックスタイプ(固定タイプ)の「BIG-IP」に加え、シャーシにブレードを装着するタイプの「VIPRION」という製品があった。このVIPRIONに、中規模向けとして新たに加わったのが「VIPRION 2400」。従来のVIPRIONは「VIPRION 4400」と改称された。ニーズに応じて、ブレードを追加購入することで容量を随時拡張できる点が1つのポイント。今年中には、VIPRION 2400/4400のCPUを論理的に分割して使う「vCPU」という技術も提供の予定。

F5ネットワークスの中規模向けアプリケーション・デリバリ・コントローラ「VIPRION 2400」

 アラクサラネットワークスの「ボックス型10GbE多ポートスイッチ AX3830S」はサーバラック単位で設置(「トップ・オブ・ラック」と呼ばれる)が可能なスイッチだ。ポート密度が非常に高い。1Uサイズで10Gbpsイーサネットを44ポート備える。すなわち、ほかの条件さえ満たせれば、ラックにサーバをフルに搭載して接続できる。消費電力は最大250Wであり、ポート数に比較して非常に少ない。

 ジュニパーネットワークスの「XRE200 External Routing Engine」は、同社の大容量スイッチ「EX8200」2台をまとめて仮想化し、同社のいう「Virtual Chasis」を実現できる製品。

ネットワークの仮想化、ネットワークのための仮想化

 「中小企業向けネットワークインフラ構築製品」カテゴリでノミネートされたリバーベッドテクノロジーの「Cloud Steelhead」は、同社のWAN最適化製品を仮想アプライアンス化したもの。クラウドサービス(IaaS)上に容易に設置して、企業拠点との間のトラフィックを最適化するなどの目的で利用できる。月額課金ベースの料金体系も、特徴の1つ。

 アラクサラネットワークスの「AX3605S」は、1Gbpsイーサネット×24、10Gbpsイーサネット×6を収容可能なスイッチ。ボックス型スイッチだが、シャーシ型スイッチの「AX6000S」と同様な、ネットワーク仮想化機能(VRF機能)を実装した。IPv6に関してはVRF機能でIPv6ユニキャストとIPv6マルチキャストに対応。このためIPv6完全対応の仮想化ネットワークがボックス型スイッチで低コストに構築できるという。

 シスコシステムズの「Cisco Catalyst 3560-C/2960-C シリーズ コンパクトスイッチ」はデスクトップにもおけるダウンリンク8ポートのボックス型スイッチ。PoEパススルーに対応した機種もあり、IP電話機などへの給電を上位スイッチのPoE給電機能を使って実現できる。

シスコシステムズの8ポートのボックス型スイッチ「Cisco Catalyst 3560-C」

 「キャリア/SP向けネットワークインフラ構築製品」カテゴリでは、日商エレクトロニクスが「Citrix NetScaler SDX」をエントリし、ノミネートされた。これは1台のハードウェアに、最大16の仮想インスタンスとして、NetScalerを稼働できる製品。SSL処理などは専用チップで高速化できる。事業者がマルチテナント・クラウド/ネットワークサービスで使うのに適している。

日商エレクトロニクスからノミネートされた「Citrix NetScaler SDX」

 ジュニパーネットワークスは同社のエッジルータ「MXシリーズ」用の100Gbpsイーサネットモジュール「100GE DPC」をまもなく販売開始する。Tシリーズ100GE PICとは異なり、エッジでの利用に最適化されているという。100Gbps×1、10Gbps×2で構成。電力消費は1Gbps当たり2Wを切るという。

 「ネットワーク・ソリューション」でノミネートされたNTTコミュニケーションズの「Arcstar Universal One」は、クラウドソリューション「BizCITY」に直結のネットワークサービス。5月10日に提供を開始した。クラウドに対応したVPNを、4つのプランから簡単にイージーオーダー設計できるという。アクセス回線は標準で二重化。ネットワークサービスとクラウドサービスをワンストップで運用できることも利点だ。

 NECの「次世代データセンターネットワークソリューション プログラマブルフロー」は、マルチテナント・クラウドサービスの事業者向けに、テナントごとの通信制御のためのネットワーク製品と、SI支援を提供するソリューション。OpenFlowを実装した世界初の商用製品である「UNIVERGE PFシリーズ」を活用している。

NECのプログラマブルフローの概念図

 日商エレクトロニクスの「多機能統合型ファイヤーウォール『SRX210/240-SMF』ならびにJunos SDKを用いたプログラマブルアプリケーション開発ソリューション」は、ジュニパーネットワークスのサービスゲートウェイ製品「SRX210/240-SMF」に、ジュニパーのネットワーク製品のOSであるJunos OS上のSDKを用いて開発したアプリケーションを組み合わせたソリューション。日商エレクトロニクスが、顧客の要件に合わせ、ネットワークへの自動接続や一元管理機能を追加開発できるという。

ストレージはインテリジェンスで進化する

 「PC・サーバ・ストレージ・周辺機器」カテゴリでは、デルが「Compellent Storage Center」をエントリしている。Compellentはデルが最近買収し、中〜大規模のストレージとして位置付けている製品。高度な自動階層化管理機能を特徴としている。

 SASドライブ、FCドライブ、SSDを1台の筐(きょう)体に混在構成し、データはアクセス頻度に従って自動的にこれらの間で移動させることができる。ハードディスクドライブでは、外周のほうがシークタイムが速いため、アクセス頻度の高いデータは同一ドライブ内でもできるだけ外周に配置するなどの工夫も施されている。シン・プロビジョニングでは、実際にデータが書き込まれないかぎり、物理的な容量を要求しない仕組みとなっている。このため、シン・プロビジョニングを適用するために、物理容量を確保するという、ある意味で本末転倒なことをしなくて済むようになる。

デルが中〜大規模のストレージと位置付ける「Compellent Storage Center」

 同カテゴリでノミネートされた富士通の「次世代(100Gbps)超高速伝送用光バックプレーン」は、参考出品だが、100Gbpsポートを多数収容するような将来のネットワーク機器、ストレージ、そしてサーバのバックプレーンのあり方を模索したもの。光直収によるバックプレーンで、現実的なスペース/エネルギー効率の実現を目指している。

 NECの「スケーラブルHAサーバ Express5800/A1080a」は、基幹システムに向けた高可用性サーバ・シリーズの最新製品。診断機能、障害時の詳細ログ生成機能、そして障害時にも継続稼働を実現する可用性保持機能が特徴。新製品は7Uのサイズに、XeonE7-8800/4800を最大8基搭載できる。メモリは2TBまで搭載可能。

 「モバイル・ワイヤレス製品」カテゴリでノミネートされた富士通の「STYLISTIC Q550」は、Windows 7を搭載した法人向けのスレート端末。10.1インチ画面で重さ約730g。バッテリは約10時間の駆動が可能という。法人向け運用サポートサービスでは、24時間/365 日対応、海外サポートなども提供。

Windows 7を搭載した法人向けのスレート端末、「STYLISTIC Q550」

 シスコシステムズの「Cisco Aironet 600 シリーズ OEAP(Office Extended Access Point)」は在宅テレワーカ―やモバイルワーカー向けのアクセスポイント。自宅やホテルのブロードバンドルータに接続するだけで、オフィスとの間にVPN接続を自動的に確立する。無線接続に加えて有線接続のポートも備え、IP電話機などの接続に使える。

 「モバイル&ワイヤレスソリューション」でノミネートされたマクニカネットワークスの出展する「McAfee Enterprise Mobility Management」は、業務で使用するスマートデバイスのセキュリティを確保する管理製品。WiFi/VPNやパスワード設定などのポリシー配布、ポリシーを満たさない端末の接続拒否、端末の遠隔ロック、データの遠隔消去などが可能。

 
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Index
INTEROP TOKYO 2011 プレSHOWレポート
ネットワークのパラダイムシフトが見えてきた
Page1
イーサネットスイッチのパラダイムシフト
ネットワークの仮想化、ネットワークのための仮想化
ストレージはインテリジェンスで進化する
  Page2
クラウドは管理・運用に焦点が移行
セキュリティは可視化、未然防止がますます大きなテーマに

「Master of IP Network総合インデックス」


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