サーバ仮想化バトルロイヤル(1)

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ハイパーバイザの価値とは


三木 泉
@IT編集部

2008/8/8


 シトリックス:Xenは互換性のある普遍的なハイパーバイザ

 以下は、元XenSourceのCTOで、現在は米シトリックス・システムズ・バーチャライゼーション&マネジメント部門のCTOを務めるサイモン・クロスビー(Simon Crosby)氏へのインタビューからお届けする。インタビュー時期は2008年5月下旬だ。

 米シトリックスは2007年8月に米XenSourceを買収、サーバ仮想化関連技術を手に入れた。これにより、ターミナル・サービス、アプリケーション・ストリーミングに加えてデスクトップ仮想化のための仕組みを、完全に自社製品として提供できるようになった。同社の仮想化ソフトウェア「XenServer」が使っている仮想化基盤技術(ハイパーバイザ)はもちろん、オープンソースXenだ。オープンソースXenをベースとして仮想化ソリューションを提供する企業は、ノベル、オラクルなどほかにもあるが、これらは仮想化を何に適用するか、仮想化に伴う作業をどの観点から簡素化するかによって違いを見せている。

米シトリックス・システムズ・バーチャライゼーション&マネジメント部門 CTO サイモン・クロスビー氏

 Xenオープンソース・プロジェクトはケンブリッジ大学で始まった。XenSourceという企業はこのオープンソース・コミュニティをベースとした機能を活用して、追加的な機能を開発し、ビジネスモデルを築いた。Xenはエンジンであり、当社が開発するXenServerは車のようなものだ。この車はすべてオープンソースで成り立っているわけではない。

 数多くのベンダがXenをベースとして製品を開発している。彼らも車をつくっている。われわれは車をコモディティ化したいとは思わないが、エンジンはコモディティ化したいと思っている。そうすればエンジンが業界標準のコンポーネントとなり、高速で無償の偏在する仮想化が、互換性のある形で使える。

 オープンソース企業としてはおもしろいことだが、われわれはHyper-Vとの互換性を確保するためにマイクロソフトと協力している。われわれがHyper-Vを好きで、Hyper-Vを拡張するコードをマイクロソフトに提供している理由は、協力して完全に互換性のある仮想化を、顧客がどう手に入れたかにかかわらず提供できるようにすることにある。

 以前からのわれわれの狙いは、仮想化をサーバにあらかじめ組み込まれたものにすることだ。NECをはじめ、6社とOEM契約を結んでいる。製品を単にサーバのコンポーネントにすることだ。仮想化は単に機能セットであり、サーバ当たり6000ドルするようなものではない。

 従ってわれわれはこのエンジンをコモディティ化することに力を入れてきた。それによって業界内で最大限に仮想化を広めたいからだ。シトリックスのビジネスの目的はこのエンジンを企業におけるユースケース(用途)に基づいて拡張することにある。しかし、XenSource時代はスタートアップ企業であったため、コモディティ化の上にビジネスを構築することが十分なスピードで実行できなかった。

 シトリックスは次のようなことを行った。

 まず、XenServerをシトリックスの既存製品のなかに入れた。XenDesktopの一部、そしてXenAppの将来版の一部として組み込んでいる。つまり仮想化は単にあらゆるものにとっての機能になるということだ。同時にXenServer自体も、XenSource時代の古いものではなく、Hyper-VとXenハイパーバイザの双方を拡張するものに進化しようとしている。これがわれわれの方向性だ。

 これによってわれわれはマイクロソフトやほかのパートナーとともに、企業におけるとてもおもしろいユースケースをカバーできるようになる。そして、企業データセンター内における仮想化技術の採用と、一般的なデータセンターのダイナミズムを加速化することができる。

 つまり顧客がVMware(ESX)、Hyper-V、Xenのいずれかの仮想化技術を採用しており、VMの上でネイティブにアプリケーションを動作するようになっているなら、これらを仮想化して動的にデリバリできる。これはすでにXenServerで実現していることだ。

オープンなアーキテクチャを広めることが優先課題

 私は、ほかのベンダもXenを市場に送り出しているということを歓迎している。なぜなら、われわれの目的はXenをどこにでも広めることだからだ。ほかのベンダが成功することも歓迎する。車には選択肢が必要だ。人はそれぞれやり方についての好みがあるからだ。

 マイクロソフトに対しては、Hyper-Vをより良いものにするため、コードを提供している。Hyper-VはXenと同じアーキテクチャを持っているわけだが、両社の共通の目的は、このアーキテクチャを業界全体から愛されるものにし、高速で、無料で、互換性の確保された、普遍的な仮想化を提供することにある。両社は互換性をすでに実現しているが、このことが私にとっておもしろいのは、さまざまな可能性を切り開いてくれるからだ。当社が対応できるユースケースもあるし、彼らが対応できるユースケースもある。しかし、仮想マシンは互換性を保つ。そうすれば、お客様はプロプライエタリなシステムに囲い込まれることなく、乗り換えも自由に出来る。

 われわれはお客様をプロプライエタリなアーキテクチャに囲い込むことはしない。豊富なパートナーのエコシステムにより、われわれのアーキテクチャを拡張していくことができる。(マイクロソフトとシトリックスの)興味分野はそれぞれ違うかもしれないが、両社の開発に同期性を持たせることで、高速で、無料で、互換性の確保された、普遍的な仮想化は現実のものになる。

 これが現実のものになれば、だれもが恩恵を受けられる。ベンダはシトリックスだけではない。私はシトリックスが得意なことや、提供できることは何かを知っている。しかし、単なるベンダの1社でしかないことも確かだ。われわれはたいして大きなベンダではない。このアーキテクチャにとって良いことができるベンダはほかにもたくさんある。これがシステムを育てていくための正しい方法だ。

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Index
ハイパーバイザの価値とは
  Page1
マイクロソフト:Hyper-VはWindows Server 2008と一体のもの
Page2
シトリックス:Xenは互換性のある普遍的なハイパーバイザ
  Page3
ヴイエムウェア:ハイパーバイザは同じではない


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