解説

Itaniumにまつわるナゾと次世代Itaniumの姿

デジタルアドバンテージ
2004/11/30
解説タイトル

 2004年11月9日、インテルは4代目のItaniumプロセッサとなるMadison-9M(マディソン-9エム)の開発コード名で呼ばれていた「Itanium 2」を発表した(インテルのItanium 2に関するニュースリリース)。基本的なマイクロアーキテクチャはこれまでのItanium 2から変更はないものの、動作クロックが1.6GHz(前モデルは1.5GHz)に引き上げられ、内蔵する3次キャッシュが6Mbytesから9Mbytes(1.5倍)に増やされている。これにより、既存のItanium 2-1.5GHz/3次キャッシュ 6Mbytesに対して、データベース処理業務において15%、全体的な整数演算と浮動小数点演算処理において35%の性能向上を実現しているという。

 また表「Madison-9Mのラインアップと価格」と表「Madison(旧モデル)のラインアップと価格」を見比べると分かるが、価格も若干ながら引き下げられている。ほぼ同じ性能で比較するならば、Madisonの1.50GHz/6Mbytes L3キャッシュが49万6400円なのに対し、Madison-9Mでは1.60GHz/6Mbytes L3キャッシュが21万3840円と、動作クロックが100MHz向上し、なおかつ価格は半分以下となっている。

製品名 価格
Itanium 2 MP-1.60GHz/9Mbytes L3キャッシュ
45万6400円
Itanium 2 MP-1.60GHz/6Mbytes L3キャッシュ
21万3840円
Itanium 2 MP-1.50GHz/4Mbytes L3キャッシュ
9万8280円
Itanium 2 DP-1.60GHz/3Mbytes L3キャッシュ FSB 533MHz
12万6570円
Itanium 2 DP-1.60GHz/3Mbytes L3キャッシュ FSB 400MHz
9万1900円
低電圧版Itanium 2-1.30GHz/3Mbytes L3キャッシュ
5万7240円
表区切り
Madision-9Mのラインアップと価格(1000個時)
「MP」はマルチプロセッサ構成、「DP」はデュアルプロセッサ構成がそれぞれ可能であることを表す。「L3キャッシュ」は3次キャッシュのこと。
 
製品名 価格
Itanium 2 MP-1.50GHz/6Mbytes L3キャッシュ
49万6400円
Itanium 2 MP-1.40GHz/4Mbytes L3キャッシュ
26万4000円
Itanium 2 MP-1.30GHz/3Mbytes L3キャッシュ
15万7200円
Itanium 2 DP-1.60GHz/3Mbytes L3キャッシュ
25万4280円
Itanium 2 DP-1.40GHz/3Mbytes L3キャッシュ
12万3760円
Itanium 2 DP-1.40GHz/1.5Mbytes L3キャッシュ
13万8500円
低電圧版Itanium 2-1GHz/1.5Mbytes L3キャッシュ
8万7900円
表区切り
Madison(旧モデル)のラインアップと価格(1000個時)

 このようにコストパフォーマンスが向上しているItanium 2だが、残念ながら64bitのデファクト・スタンダード・プロセッサと呼べるほどには普及していない。性能的にもPOWER5に若干水を開けられている。さらにEM64TテクノロジによってIntel Xeonが64bit化されたことから、Itanium 対 Intel Xeon/AMD Opteronという図式も見え隠れする。果たしてItaniumプロセッサ・ファミリは、今後どのような展開を見せるのか、Itaniumに関するトピックをみていこう。

Itanium 2のFSB 533MHzのナゾ

 まず、もう1度Madison-9Mのラインアップを見ていただきたい。Itanium 2 DP-1.60GHz/3Mbytes L3キャッシュにFSBが異なる2種類(400MHzと533MHz)が提供されていることに気が付くだろう。これまでItanium 2のFSBは、すべて400MHzであった。当然ながら、Intelの対応チップセットであるIntel E8870は、400MHzのFSBのみをサポートしており、533MHzのFSBには対応していない。この点をインテルに確認したところ、「Intel E8870で533MHzのFSBをサポートする予定はない」ということであった。

 実は、このFSB 533MHzのItanium 2 DPは、Hewlett-Packard(HP)の1Uラックマウント型サーバ「HP Integrity rx1620-2」向けとしてラインアップされたものなのだ。現在のところFSB 533MHzに対応できるチップセットは、HPの「HP zx1チップセット」のみとなっている。ただ、HPのラインアップの中でもFSB 533MHzのItanium 2 DPを搭載するのは、HPC向けの「HP Integrity rx1620-2」だけだ。HP Integrity rx2620-2(2Uラックマウント型サーバ)などもHP zx1チップセットを採用するが、なぜかFSB 533MHzのItanium 2 DPはラインアップされていない。FSBを400MHzから533MHzに引き上げることで、システム・バスの帯域が6.4Gbytes/secから8.5Gbytes/secと広がることから、同じ動作クロックで比較しても若干の性能向上が実現するとしている。特に、HP Integrity rx1620-2がターゲットとするHPC分野においては有利に働きそうだ。

 こうしたIntelのHPへの特別な配慮は、いまに始まったわけではない。HPは、2個のItanium 2と32Mbytesの4次キャッシュを単一ドータ・カード・モジュールに搭載し、Itanium 2ソケットとピン互換を実現する「mx2デュアルプロセッサモジュール」を開発し、自社のサーバに搭載している。Intelは、mx2デュアルプロセッサモジュールを実現するため、Itanium 2のプロセッサ部分のみをHPに提供しているのだ。Itaniumプロセッサ・ファミリが採用するEPICアーキテクチャは、もともとIntelとHPが共同で開発したものである。そのため、HPは自社製品へのItaniumの搭載を強くコミットしている。同社のRISCサーバは、すべてItaniumに置き換えることを明言しているし、すでに同社のHP-UXやOpenVMSといったOSのItanium上への移植も完了している。HPへの特別なプロセッサの提供は、こうしたItaniumへのコミットに対する返礼という意味があるのかもしれない。もっともHPのサーバの一部は、NECや沖電気工業などにもOEM提供されていることから、HPへ供給すればこれらのベンダにも間接的に渡ることになる。特別な配慮というよりも、他社がIntelに対して要求していない、というのが実態かもしれない。

ItaniumにはHPC向けWindows Server 2003がリリースされない

 Microsoftは、HPC向けに「Windows Server 2003, Compute Cluster Edition(Windows Server 2003, HPC Editionと呼ばれていたエディション)」と呼ぶ、サーバ・クラスタ機能をサポートするWindows Server 2003の提供を予定している。Compute Cluster Editionは、HPCに必要な機能に絞り込み安価に提供することで、現在Linuxが主流のHPC市場でシェアを奪おうというものだ。

 ところが、Compute Cluster EditionはIA-32版、x64(AMD64/EM64T)版のみで、Itanium向けは提供されないことが明らかにされた。ただ、現在のところHPC分野では、Linuxを用いたクラスタ・システムが主流であり、Windows Server 2003, Compute Cluster Editionが提供されなくても、市場への影響は少ないものと思われる。2004年11月9日に発表されたスーパーコンピュータのランキング「TOP500」では、IA-32ベースのシステムが237システム、Itanium 2ベースのシステムが83システムと、Intelプロセッサを使用したシステムが非常に多くラインクインしている。これらのほとんどが、実際Linuxベースである。

 一部では、Itanium向けにWindows Server 2003, Compute Cluster Editionが提供されないことによって、64bitプロッサの主流がx64へとシフトするという報道もあったが、HPC市場に限ってみれば影響は軽微であると思われる(イメージ的には若干マイナスだが)。

Itanium向け新チップセットは2007年までリリースされない?

 IDF Spring 2004では、Montecitoとともに、Bayshore(開発コード名:ベイショア)と呼ばれる新しいチップセットが提供されるとしていた(「解説:64bitへ動き出したIAサーバの胎動 2. 更新されたItaniumプロセッサのロードマップ」参照)。ところがMadision-9Mの発表の前後に示されたロードマップには、「Bayshore」の文字が削られ、Montecitoと組み合わされるチップセットは既存のIntel E8870であるとされていた。これに対しインテルは、「Bayshoreの開発は継続しており、キャンセルされたわけではない」と述べており、実際のところMontecitoに対応するチップセットが何になるのかは明らかでない。

Intelのサーバ向けプロセッサのロードマップ

 2007年にリリース予定のTukwila(Itanium)とIntel Xeon MP(開発コード名は明らかにされていない)で、ItaniumとIntel Xeon MPのプラットフォームが共通化されることが明言されている。Bayshoreがキャンセルされてしまうと、新しいItanium向けチップセットは、2007年まで提供されないことになる。とはいえIntel E8870は、Montecitoでも利用可能であることが明らかにされていることから、BayshoreがキャンセルされてもItaniumの出荷に直接影響を与えることはない。しかし新しいチップセットがリリースされない、ということが市場にマイナス・イメージを与えるのは間違いないだろう。IntelがItaniumをフェードアウトさせようとしているのではないか、という疑念も生みかねない。

 またMontecitoから導入が予定されている仮想化技術である「Silvervaleテクノロジ」では、ファームウェアやチップセットの対応も必要とされていることから、Intel E8870では有効化できない可能性もある。IntelがBayshoreをキャンセルしたのかどうかについては、もうしばらく様子を見る必要があるだろう。もしBayshoreがキャンセルされたのならば、IntelにおけるItaniumの位置付けは微妙なものになるかもしれない(64bitプロセッサのEM64Tへのシフトが強まる可能性が高い)。

[追記(2004/12/01)]
 Intelの副社長兼エンタープライズ・プラットフォーム事業本部長のアビ・タルウォーカー(Abhi Y. Talwalkar)氏が12月1日に開催されたプレスミーティングの席上で、Bayshoreの開発がキャンセルされていることを公式に認めた。同氏によれば、「Itaniumプロセッサを搭載するサーバを販売しているベンダは、自社でチップセットを開発しており、Bayshoreに対する需要がない」ことを理由として挙げた。またインテルの担当者によれば、Silvervaleテクノロジはプロセッサとファームウェアの対応によって実現可能であり、Intel E8870でも有効化できるとした。

見え始めた次期Itaniumの姿

 2005年後半にリリース予定の次期Itanium(開発コード名:Montecito)では、デュアルコアが採用されるなど、大幅な変更が行われる。Montecitoは90nmプロセスで製造され、24Mbytesの3次キャッシュが内蔵される。動作クロックは明らかにされていないが、2GHz前後まで引き上げられると予想されている。現在、Intelが公開しているMontecitoの性能は、Itanium 2(Madison-9M)の1.7倍程度となっている。しかし、デュアルコア化とマルチスレッド対応、3次キャッシュの増量、動作クロックの向上などにより、2倍以上の性能向上が実現する可能性もある。

 Montecitoでは、いくつかの機能拡張が行われる予定だ。前述のように仮想化技術の「Silvervaleテクノロジ」、プロセッサの消費電力(温度)と動作クロックを動的に変更することで性能と信頼性の向上を図る技術の「Foxtonテクノロジ」、キャッシュの信頼性を向上させる技術の「Pellstonテクノロジ」などが導入される。さらにサーバ・プロセッサ版のスピード・ステップ・テクノロジともいえる「デマンド・ベース・スイッチング(DBS)」により、プロセッサの負荷に応じて動的に消費電力を引き下げることも可能にする。インテルによれば、DBSによれば20%の消費電力の削減が可能だとしている。

 このようにMontecitoでは、大幅な機能拡張が行われる。性能面でのジャンプアップも期待されている。2005年後半になれば、x64対応のWindows Server 2003もリリースされ、対応アプリケーションも徐々にそろうころである。つまり64bitプロセッサの覇権をめぐる本格的な戦いが始まるわけだ。Intelにとっては、ItaniumとIntel Xeonという社内競合と、AMD OpteronとItanium/Intel Xeonという2つの戦いに決着をつけなければならない。システム管理者にとっては、どのような決着を見せるのかを見極めた64bitプロセッサへの投資が必要になるわけだ。性能のItaniumか、それともIA-32からのスムーズな移行が可能なx64か、どちらが主流になるのだろうか。記事の終わり

  関連記事 
64bitへ動き出したIAサーバの胎動 2. 更新されたItaniumプロセッサのロードマップ
 
  関連リンク 
新しいインテル Itanium 2プロセッサ搭載プラットフォームを発表
 
目次ページへ  「System Insiderの解説」

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)
- PR -

イベントカレンダー

PickUpイベント

- PR -

アクセスランキング

もっと見る

ホワイトペーパーTechTargetジャパン

注目のテーマ

System Insider 記事ランキング

本日 月間
ソリューションFLASH