解説

ブレード・サーバ市場、急成長の理由

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2007/04/10
解説タイトル

 Gartnerの調査によれば、2006年のサーバの世界市場において、ブレード・サーバが著しい成長を見せているということだ(Gartnerのニュースリリース「Gartner Says Worldwide Server Shipments Experienced 9 Percent Growth, While Industry Revenue Posted a 2 Percent Increase in 2006」)。報告によれば、金額ベースで前年比36.5%増、出荷台数ベースで33.0%増になったという。サーバ市場全体では金額ベースで2%増、出荷台数ベースで約9%増なので、ブレード・サーバが急成長していることが分かる。

 ブレード・サーバは、登場した当初は注目が集まっていたものの、いわゆるネットバブル崩壊後であったこともあり、すぐに話題に登らなくなってしまった。ブレード・サーバ専業のベンチャー企業も、次々と撤退もしくは大手サーバ・ベンダに買収されることとなった。では、なぜいま再びブレード・サーバが注目され、著しい成長を見せているのだろうか。ここでは、その背景とブレード・サーバの課題について解説する。

ブレード・サーバを利用するメリット

 IAサーバ・ベースのブレード・サーバの歴史は比較的浅く、2001年にRLX Technologiesがブレード・サーバのコンセプトを発表し、その後、TransmetaのCrusoeを搭載したブレード・サーバ・システムを出荷したことから始まる。この時期、ほかのベンチャー企業もブレード・サーバに参入しており、2001年から2002年がブレード・サーバ元年ということになる。ちなみにRLX Technologiesは、Compaq Computerからスピンオフした人々が中心となって設立したブレード・サーバ開発ベンダで、2004年末にはハードウェア事業から撤退し、ブレード・サーバ向けの管理ソフトウェアの開発に注力するとしていた。2005年10月には、Hewlett-Packard(HP)に買収されている。

 1Uサイズや2Uサイズの高密度サーバは、登場してすぐにサーバのフォームファクタとして一般化した。ブレード・サーバは、現在のところそこまでには至っていないが、前述したとおりシェアは急増している。それにはいくつかの理由が挙げられる。

 ブレード・サーバは、「サーバ・ブレード」と呼ばれるプロセッサやメモリを搭載したサーバの基板のほか、以下のようなコンポーネントで構成される。

  • エンクロージャ
    サーバ・ブレードを保持すると同時に電源や冷却ファン機能を提供するケース
  • パッチ・パネル(端子盤)/インターコネクト・モジュール
    エンクロージャ内でサーバ・ブレードなどのコンポーネント同士を相互に接続するための一種のバックプレーン
  • LANスイッチ・モジュール/SANスイッチ・モジュール
    ネットワーク接続用のコンポーネント。エンクロージャに内蔵される
ブレード・サーバ・システムの構成要素
ブレード・サーバ・システムは、エンクロージャにサーバ・ブレードや電源ユニット、LANスイッチ、SANスイッチなどを搭載して構成される。

 ブレード・サーバ導入の最大のメリットは、仮想化技術と管理ソフトウェアを組み合わせることで、プロセッサ・リソースなどを必要に応じて柔軟に各アプリケーションへ割り当てることができる点にある。もちろん、従来のサーバであっても同様のことは可能だ。しかし、ブレード・サーバ・システムならば、同じサーバ・ブレードが複数搭載されていることから、OSイメージが共通化できるなど、より管理や運用が容易になるというメリットがある。また、プロセッサ・リソースが足りなくなったら、サーバ・ブレードを追加するだけで対応できる。ブレード・サーバが登場した当初に比べ、仮想化技術と管理ソフトウェアの進歩したことで、こうした柔軟なシステム構成が可能になり、ブレード・サーバ本来の特性が生かせるようになってきたのだ。

 またブレード・サーバ・システムは、モジュラー構造を採用しており、メンテナンスが容易であるというメリットもある。LAN/SANスイッチが内蔵可能なタイプの製品ならば、ケーブル配線が不要なので、エンクロージャにサーバ・ブレードを差すだけで稼働可能になる。故障時の交換でも、サーバ・ブレードの電源をオフにして新品と交換し、電源をオンにするだけでよい(実際には交換後、管理ソフトウェアによるソフトウェアのインストールや設定などが必要になる)。一般的なラックマント型サーバとは異なり、サーバ・ブレード自体に電源ケーブルやLANケーブルなどを抜き差しする必要がないので、故障時の交換にかかる時間が非常に短時間で済むというメリットがある。

 さらに最近注目されているのが、ブレード・サーバが比較的低消費電力である点だ。原油価格の高騰や地球温暖化の影響などもあって、コンピュータの消費電力や発熱を気にする企業が増えてきている。現実的な問題として、コンピュータの消費電力が増え続けているため、データセンターの電力供給が追い付かなくなっているということもある。ブレード・サーバは、高密度で実装されていることから、低消費電力のプロセッサなど低消費電力の部品が採用されている。またブレード・サーバ・システムは、電源ユニットや冷却ファンなどを複数のサーバ・ブレードで共有していることから、タワー型やラックマウント型のサーバに比べてその分の電力消費が少なく、低消費電力化が実現できる。一般的なAC-DC電源ユニットの電力変換効率は70%程度、性能の高いものでも80%程度といわれており、サーバを構成する要素の中でも電力消費の大きな部品の1つである。それを共有化することでも、電力消費が抑えられているわけだ。

 ブレード・サーバが登場した当初は、3Uサイズのエンクロージャに20枚のサーバ・ブレードが搭載可能といった製品もあり、高密度化による省スペース化が、ブレード・サーバ・システムの最大のメリットといわれてきた。しかし最近のブレード・サーバ・システムは、6Uや10Uといった高さのエンクロージャにサーバ・ブレードが8枚から16枚搭載できる程度だ。ここ2年ほどで高密度化よりもブレード単体の性能向上へのシフトが進み、1U当たりの搭載可能プロセッサ数は減少する傾向にある。それでも、1Uラックマウント・サーバよりも高密度を実現しており、省スペース性は未だにブレード・サーバのメリットの1つとなっている。

レード・サーバの標準規格化が普及を促進するか?

 しかし、ブレード・サーバがサーバの標準的なフォームファクタとなるためには、さらなる普及が必要だ。しかしそれには大きな課題がある。ブレード・サーバの標準規格化だ。

 前述のようにブレード・サーバ・システムは、サーバ・ブレード、エンクロージャ、パッチ・パネル、LANスイッチ・モジュール、SANスイッチ・モジュールなどのユニットによって構成されている。これらは、各ベンダ独自の形状や仕様となっており、互換性がない。場合によってはベンダ内においても、世代が異なったり、モデルが異なったりすると互換性がなくなることがある。現在、互換性が維持されていても、次の世代では仕様が変更されてしまうという可能性もある。その場合、独自規格であるため代替製品を選ぶことができないというリスクもあるわけだ。

 エンクロージャやSANスイッチ・モジュールなどは、比較的高価な部品のため、システムの更新に際して、これらが持ち越せないことが、ブレード・サーバ・システムのコストパフォーマンスの悪さにつながっている。また独自仕様であるため、ベンダがラインアップしていないものが搭載できず、結果として柔軟性のないシステムになっていたことも、ブレード・サーバの普及にブレーキをかけている。当然ながら、独自仕様の製品は競争が起こりにくく、価格も高めとなりやすい。

 このような課題に対して、すでに2002年9月17日の時点でIntelとIBMがブレード・サーバの標準化で協業を発表している(インテルのニュースリリース「IBMとインテルがブレード・サーバーで協業」)。その2年後の2004年9月6日には、協業の成果としてIBMのブレード・サーバ「eServer BladeCenter」の設計仕様を公開し、標準規格化がやっと動き出している(インテルのニュースリリース「IBM eServer BladeCenterの設計仕様を公開」)。しかし、結果として現在のところブレード・サーバの標準規格団体の設立や、デファクト・スタンダードの確立といったことはなく、標準化の動きは2年半も止まったままだ。

 IntelとIBMの推進している標準規格にしても、LANスイッチ・ベンダやSANスイッチ・ベンダの一部は対応製品をリリースしているものの、賛同する大手サーバ・ベンダは現れていない。

 この状況について、Intelのサーバ戦略の担当者である副社長兼ジェネラル マネージャー サーバ プラットフォーム グループのカーク B. スカウゲン(Kirk B. Skaugen)氏に2007年3月27日に開催された記者説明会の席上で質問したところ、「ブレード・サーバの標準規格については、数カ月以内に発表できる。20種類程度の標準デザインを提案し、これをベースにエコシステムを構築することになるだろう」との回答を得た。20種類程度の標準デザインというと、標準規格としては種類が多いように感じるが、搭載するプロセッサなどによってデザインが異なると考えられるので、サーバ・ブレードのサイズやエンクロージャのラインアップはそれほど多くないものと思われる。

 水面下では、現在も標準規格化の作業は進行していたようで、その成果も近々見ることができそうだ。しかしこの規格に、どのサーバ・ベンダが賛同するのかは現時点では明らかでない。少なくもHewlett-Packard(HP)は、ブレード・サーバの標準規格化の話が持ち上がった当時から、IntelとIBMの2社による標準規格化には反対の姿勢であった。HPは、独自にLAN/SANスイッチ・ベンダを巻き込んでエコシステムを構築しており、それを捨ててIntel/IBMの規格に乗るとは考えにくい。

 Dellは、ブレード・サーバ自体にあまり積極的でなく、現在もPowerEdge 1955の1製品をラインアップするのみである。Dellの場合、業界標準の技術を他社よりもいち早く、安価に提供するという戦略なので、ブレード・サーバのように標準化されていない製品は優位性が見出せないという面があるのだろう。IntelとIBMによる標準規格案が、本当に業界標準となるのであれば、Dellはその規格に賛同する可能性も否定できない。NECや日立製作所、富士通といった国内サーバ・ベンダについても、様子見という段階のようだ。

 Gartnerの調査によれば、現在のブレード・サーバのシェアは、IBMが41.1%、HPが32.5%を確保しており、両社でほぼ70%を超える寡占状態にあるということだ。寡占を支える一方のHPが、Intel/IBMの標準規格案を採用しない限り、業界標準規格化は難しそうだ。ただ、Intel/IBMとHPの2種類の規格に集約されるのであれば、ブレード・サーバの普及を阻害する最大の要因はある程度緩和されることになる。その後は、両者によるデファクト・スタンダードの争いとなり、どちらかが勝者となり決着を見ることになるだろう。

 メンテナンス性の高さや、仮想化技術や管理ソフトウェアとの組み合わせによる動的なリソース配分など、ブレード・サーバならではの機能は魅力的だ。しかし多くのユーザーにとって、ブレード・サーバは魅力的であるものの、独自規格の製品を導入するリスクを超えるほどではないようだ。また価格面でも、通常のラックマント・サーバに比べてシステム価格が高くなってしまう点も、導入をためらわせる一因となる。

 しかし標準規格が確立し、手ごろな価格になれば、サーバ市場において1Uサイズや2Uサイズのラックマント・サーバ以上のシェアを確保できるかもしれない。これまで以上に低消費電力や管理性の高さが求められている現在、ブレード・サーバは最適なシステムだからだ。まずは、Intel/IBMの標準規格案がどのようなものなのか、そしてそれを採用する大手サーバ・ベンダが現れるのかが、標準規格化へのファースト・ポイントとなりそうである。ブレード・サーバの導入を検討している場合でも、まずその動きを見てから決めた方がよさそうだ。記事の終わり

  関連リンク 
Gartner Says Worldwide Server Shipments Experienced 9 Percent Growth, While Industry Revenue Posted a 2 Percent Increase in 2006
IBMとインテルがブレード・サーバーで協業
IBM eServer BladeCenterの設計仕様を公開
 
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