変ぼうを始めたリッチクライアント・マーケット

千葉英寿
2004/10/27



企業内の業務システムをリッチクライアントのテクノロジーを活用したシステムに移行する動きに合わせて、さまざまなベンダがツールを開発し、ソリューションの提供を始めている。中でもいち早くリッチクライアントの有用性を説き、普及に努めてきたのがアクシスソフト株式会社だ。同社において、リッチクライアント・エバンジェリストとして活動しているマーケティンググループジェネラルマネージャの山形浩一氏にリッチクライアント・マーケットにおける顧客動向や顧客の抱える問題に対する同社の対処策、さらには同マーケットの今後の方向性についてお話を伺った。

――御社ではどのような経緯でリッチクライアントのソリューションを扱うようになったのでしょうか? また、御社のリッチクライアントソリューションの、ユーザーに対する訴求ポイントはどこでしょうか?

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 2001年ごろのことです。HTMLを使ってデータベースを検索/更新するような業務系システムを構築した際に、お客さまから「どうしても画面表示のレスポンスが悪い。Javaアプレットもあるが、これも遅い」という相談を持ちかけられたことがありました。“画面表示のレスポンスを速くしなければならない”という課題に直面してから、弊社のリッチクライアントへの取り組みが始まったといえます。それではどうしましょうかということで、弊社ではビジネス向けのリッチクライアントとして「Biz/Browser」を開発したわけです。当時は画面表示のレスポンスが大きな課題でしたが、ブロードバンドが進展したことで大きな問題ではなくなりました。いまはユーザビリティが大きな課題となっています。

 Biz/Browserはグラフィック系の画像処理はメインには置かず、高速レスポンスとユーザビリティを基本としています。業務系リッチクライアントの分野では、“入力生産性”、“オペレーションアビリティ”が高いことがポイントであり、これらをクリアしたうえで高速表示ができることが重要です。そのほかの必要条件は“ユーザビリティが高い”、“信頼性が高い”、“管理が容易”、“開発環境が充実している”といった点が挙げられます。業務システムの場合は特に信頼性が高く、停止しない、データがロストしないということが大きなポイントになるのです。


――リッチクライアント・マーケットは、現在どのような状況にあるのでしょうか?

Biz/Browserは業務系リッチクライアントにセグメントした製品と説明する山形氏

 この1年半で非常に伸びていると思います。私たちの予想では2008年には600万クライアントくらいになってもおかしくないと考えています。多くのベンダが参入してきていますが、他社も私たちと同様に業務系の市場を狙ってきています。Biz/Browserは、入力系のテキストや数値情報をハンドリングして、クラインアント側できちんと処理できるように作ってあって、いわゆるデザイナーらしくない作りをしています。Macromedia Flash(以下Flash)はGUIが優れていてナビゲーションがしっかりしているので“コンシューマ・エクスペリエンス”を指向していますが、私たちの場合は“エンタープライズ・エクスペリエンス”、もしくは“オペレーション・エクスペリエンス”なんです。

 そのほかのリッチクライアント技術を分類すると、Curl(カール)は分析系、Adobe Acrobat(アドビシステムズ)は申請系といった感じですね。Nexawebのようにクライアントがウルトラ・シン環境のものも出てきています。Biz/Browserは画像処理に弱いとご指摘を受けますが、Flashのようなアニメーション機能が必要であれば、SVGをサポートしているので、作ることもできます。

――顧客からは画面表示のレスポンス性能以外にどのような要望が出ていますか?

サーバとの通信は画面を定義する小容量のデータのみのため、遅い64KbpsのPHS回線でも充分な応答性能を出せるという

 お客さまの要望は「表示レスポンスの速さ」「ユーザビリティ」「開発環境」の3つに尽きます。私もお客さまによってもう少し異なる要望があるのではないかと予想していたのですが、共通しているのが現状ですね。

 Biz/Browserはバージョン3でSOAPプロトコルに対応し、バージョン4から本格的にWebサービスに対応しました。いまのところお客さまの具体的なニーズはないのですが、私たちとしては2年後には使える技術になっているだろうと予想し、先行して採用しています。2年後、3年後にBiz/Browserを選択して失敗したと思っていただきたくないので、トレンドはキャッチアップしていくつもりです。IBM WebSphereやBEA WebLogicの次期バージョンがSOA(Service Oriented Architecture)のための基盤「ESB(Enterprise Service Bus)」をサポートしています。これも良い例ですね。お客さまがいつでも使える状況環境を提供していれば、他のベンダからさまざまなサービスが出てきたときに、すぐにSOAを構築できるわけです。

 また、PDAに対応したBiz/Browserを今年(2004年)の4月に発表しました。これは、PCと同様のBiz/BrowserのメリットをPDAに提供します。PDAは画面が小さいので、PC以上に高い導入効果をもたらすことができます。開発にはPCと同様に弊社が提供するBiz/Designerを使いクロス開発ができるため、特別な開発環境を用意する必要がありません。

――リッチクライアントへの新しいニーズがお客さまから出てきていないでしょうか?

タンデムの資産を残して、リッチクライアントを導入したいというケースもあるという。「Web環境があれば、あらゆるプラットフォームがシームレスにつながります」と山形氏は語る

 あります。ある事務機器メーカーの例ですが、東京と大阪にコンピュータの拠点があり、その2拠点間は高速な通信環境で接続しています。そして、そのほかの拠点においても最低でもADSLの接続環境があるので「このインフラを生かし、ホストコンピュータを残したままWeb化したい」というご要望をお持ちでした。私たちのお客さまの場合、レガシーからUNIXもしくはLinux、Windowsにマイグレーションして、Javaで作り直すケースがほとんどです。残したとしてもパッチでCOBOLを使うぐらいですね。しかしその事務機器メーカーの場合は、ホストコンピュータはそのままにして、エミュレータの端末を全廃しBiz/Browserに置き換えたいという要望をお持ちでした。最近は同ケースの考え方をするユーザーが非常に増えています。

 ところで実は、私たちの製品やFlash、もしくはClient J Framework(富士通)のようなリッチクライアント製品を導入しているのは、実はまだメジャーアカウントの大手ばかりなんです。しかし、これからはミドルレンジの顧客が増えると予想しています。その根拠は、企業規模でいえば中堅でオフコンを利用している企業では今後リースアップが始まります。これらの企業のほとんどはWeb化の意向を持っているといわれています。ようやく本当の意味でのリッチクライアントのマーケットが広がってくると考えています。

――ミドルレンジがボリュームマーケットになるのですか?

 これは間違いないですね。生意気に聞こえるかもしれませんが、メジャーアカウントではBiz/Browserのシェアは圧倒的です。しかし、ミドルレンジを見ると4億本以上のプラグインが無償配布されているFlashは強みを持つことになります。しかし、Flashとは競合することを考えていません。協調していくことになると思います。

――ミドルレンジの顧客ではリッチクライアントにどのようなニーズがあるのでしょうか?

 基幹系と営業支援だと思います。ミドルレンジのマーケットはさらに業務アプリケーションに近いところになっていくわけですから、営業支援のパッケージや業務パッケージを提供していくことになると思います。特にオフコンのお客さまはパッケージ利用が大変多い傾向にありますから。


 

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