オープンソースがRIA市場の起爆剤となる、ラズロCEO



富嶋典子
2005/5/21



 

RIA市場に「オープンソース」という武器を携えてインパクトを与えようとしている企業がある。米Laszlo Systems(以下、ラズロシステム)は、2004年10月に自社のRIA技術「Laszlo(以下、ラズロ)」を「OpenLaszlo(以下、オープンラズロ)2.0」として、オープンソース化した。2005年4月、オープンラズロの新バージョン“3.0”をリリースしたばかりだ。ラズロをオープンソースにした理由や今後の展開について、米ラズロ CEO兼社長のステフェン・シエシンスキー(Stephen J. Ciesinski)氏に話を聞いた。

──ラズロをオープンソース化したいきさつは?

「今回の来日で日本のRIA市場の盛り上がりとラズロへの期待の大きさを実感した」という米ラズロシステム CEO兼社長のステフェン・シエシンスキー氏

ステフェン氏 ラズロシステムが米カリフォルニア州のサンマテオでWebプラットフォームを開発するソフトウェアベンダとして創業したのは2000年です。2004年からようやくRIA(リッチインターネットアプリケーション)市場が盛り上がってきました。

 ラズロをオープンラズロ2.0としてオープンソース化したのは、2004年10月です。その理由はRIAテクノロジへのニーズが高まりつつあることと、ユーザー側の事情を考慮して判断しました。いま、企業は高価なソフトウェアの購入を避けるのが一般的ですから。

 実際、1カ月のダウンロード数は、オープンソース化前は300〜400だったのが、5000に跳ね上がりました。市場のRIAに対する興味、モラル、モチベーションを向上させる第一歩を踏み出すことができたと自負しています。

──マクロメディアがリッチクライアント開発プラットフォーム「Flex」の提供を開始したのと同じ時期ですね。

ステフェン氏 はい、よくそのような質問をされます。オープンラズロ2.0は、XMLベースのプレゼンテーションサーバ、J2EEのアプリケーションフレームワーク、Flashのクライアントインフラを利用していたため、「Flex」と競合と見なされることが多いようです。しかし、オープンソース化後に、われわれが相当なアドバンテージを握ったことは確かです。クライアントインフラに関してFlashを利用しているのは、最も使われている技術を選んだということにすぎません。また、オープンラズロ3.0へのバージョンアップ後は、アプリケーションフレームワークはJ2EEでなくとも、HTTPサーバでRIA開発ができるようになりました。

 オープンソース化の際に、「Flex」を意識しなかったというとうそになりますが、RIA市場全体の盛り上がりのタイミングがオープンソース化を後押ししました。5年前はWebは読むだけのものでしたが、いまやWeb上に複雑なアプリケーションが動いているのが一般的になっています。私は2010年にはRIA市場は100億円もの規模に成長すると考えています。オープンソース化したのですから、市場の25〜50%を獲得できるはずです。

──販売戦略について教えてください。

ステフェン氏 オープンラズロの環境は無料でダウンロードできますので、エンジニアが自社に合ったインターフェイスを開発することで、オープンラズロを自社のウェブメールや企業ポータルに活用することが可能です。ユーザー企業の開発コストを省くために、ラズロメール(参照URL)などのオプショナルコンポーネントを有料の製品として提供しています。有料のオプショナルコンポーネントは今後、種類を増やしていく予定です。大規模なエンドユーザーを抱えるISP(Internet Service Provider)向けには、オプショナルコンポーネントをソリューションとしてカスタマイズ提供をしていきたいと考えています。

──期待する市場は?

ステフェン氏 ターゲットはISPとISV(Independent Software Vendor=用語辞典)です。ISP向けの実績に米SBCヤフーのパーソナルページ(参照URL)と米アースリンクのパーソナルスタートページ(参照URL)があります。また、オンラインメディア米ZDMediaのゲームユーザーのためのページでも利用されています(参照URL)。

 ラズロシステムが提供する機能の中でも、エンドユーザーに最も喜ばれているのがWebMail機能です。

 WebMailサービス自体は古くから使われていますが、これまではローカルマシンにインストールするタイプのソフトに比べて使い勝手が悪いというのが通念でした。が、ラズロのWebMailであるラズロメールでは、その通念を打ち破りました。例えば、マイクロソフトのOutlookのようにセルの大きさを自由に変形させたり、メールをつかんでボックス間を移動させたりでき、ユーザーのWebMailへのフラストレーションをなくすことができます。

 最も先行して導入したアースリンクのユーザーにはとても好評なため、同じようにほかのISPにとっても、付加価値として十分に力を発揮していくと考えています。アースリンクのWebMailサービスは、ビジネスウィークの人気巻頭コラム(2005年4月25日号)でStephen Wildstrom氏が使いやすいとラズロの名前を挙げて記述したため、弊社への注目がさらに高まっています。

 ISV市場へも大きな期待をしています。ショッピングカートや、eラーニング、企業ポータルなど、いろいろなタイプのシステムを開発するベンダから引き合いがあり、ブログツールのベンダでもラズロの導入を検討しています。また、モバイル端末用のアプリケーション開発をしているようなISVにも、小さな液晶画面上でアプリケーションの表現を向上させるために活用されるとエンドユーザーに満足を与えることができると思います。

──オープンラズロの今後について

ステフェン氏 昨年11月以来、ユーザーコミュニティが多数作られています。彼らはバグを発見して、われわれに報告してくれたり、あるときはバグを修正して正しいプログラムを送ってくれたりもします。現在ラズロ社内の技術者は30人ほどしかいませんので、ユーザーコミュニティは歓迎すべき存在です。日本の技術者の皆さんにも期待しています。

──4月26日のラズロ3.0のバージョンアップについて

ステフェン氏 今回のラズロ3.0へのバージョンアップ(関連リリース)では、ユーザーからのリクエストに応えて、クライアントのダウンロード時間の短縮をしました。これまで、200kbytesダウンロードする必要のあったような重いタイプのデータは、50kbytesに区切って4回のダウンロード回数を重ねて素早く動くようになりました。一度ダウンロードしてしまえば、データキャッシュによりローカルPC上での操作のように扱うことができます。

 そのほか、Unicodeに対応したことで日本語が通るようになったり、これまでアプリケーションフレームワークにJ2EEを利用していましたが、J2EE環境でない、HTTPサーバにも配置(=サーバレスディプロイメントオプション)が可能になりました。

 また、4月28日にIBMのアルファワークスが、ラズロ3.0の新バージョンに対応したEclipse開発環境のバージョン2へのアップデートを発表しました(アルファワークスのリリース)。ビジュアルエディタが使えるようになったり、バグの改良などがされました。

 今後のバージョンアップでもさらなる改良をしていくでしょう。これからのラズロにご期待ください。

──ありがとうございました。

 


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