リッチクライアント導入事例(2) Page 1/3

Accessの操作感を再現した“OpenLaszlo”

吉田育代
2006/3/30
本連載では、リッチクライアントを導入した企業の事例を紹介していく。なぜその製品を選択したのか、バックエンドはどのようなシステムなのか、何を解決/実現したかったのか、導入企業から生の声を聞き出してレポートしていこう。(編集部)
サマリー

人材の再就職支援で業界大手の株式会社パソナキャリアアセットでは、求職者と求人企業の接点を見いだす情報管理能力が経営資源だ。全国の拠点ごとに設置された商談管理システムをネットワーク越しに全社で共有したいというニーズを満たすため、オープンソースのリッチクライアント製品である「OpenLaszlo」を使った新システム開発に踏み切った。Accessをフロントエンドに採用した旧システムをWebアプリケーション化する際、最大の懸念事項はユーザーインターフェイスを変更せずに済むか。そこでOpenLaszloの出番となった。



    拠点間での情報共有が困難だった
クライアント/サーバ型商談管理システム

 パソナキャリアアセットの主たるビジネスは、企業人の再就職を支援することにある。再就職支援とは、企業の早期・希望退職制度利用者の再就職活動を支援するものである。具体的には、キャリアカウンセリング、求人情報の提供、応募書類や面接のアドバイスなど、求職活動に関するさまざまなノウハウを提供する。

企業データ(2006年3月現在)
株式会社パソナキャリアアセット
設立:1993年12月
資本金:2億830万円
従業員:290人
事業内容:再就職支援事業/人事コンサルティング事業/教育・研修事業/求人Webサイト事業

 パソナキャリアアセットには、短期間での再就職を成功させるために、営業担当者が利用する商談管理システムがある。当初はMicrosoft Accessをベースに構築されており、東京、名古屋、大阪、福岡の4つの営業拠点にそれぞれ導入されていた。同社の営業活動は、基本的には地元密着型だが、時には地域を越えた情報コミュニケーションも必要になる。例えば、東京と大阪の両方に本社を構える企業にアプローチする場合、東京と大阪の営業担当者は、どちらがどのように動くか事前によく意志の疎通を図っておかなければならない。あるいは、商談そのものは本社で進めるが、実際に再就職支援の対象となるのは名古屋や福岡の支社の社員だったりすることもある。そのようなとき、名古屋や福岡の営業担当者は、東京で行われている商談状況を把握してから相手先を訪ねる必要がある。

 これまで情報を見る必要に迫られたときは、それぞれの拠点にあるAccessベースの商談管理システムをVPNネットワーク越しに参照していた。しかし、ネットワークを介したアクセスは非常にパフォーマンスが悪いうえに、同時接続ユーザー数に制限があるために、誰もが見たいときに見られるという状況にはなかった。それは同社の営業担当者に大きなストレスを引き起こしていたという。電話などでもやりとりしてはいたのだが、お互い不在がちであるため、自分が望むときに望む情報が手に入るというわけではなかった。

 「地域を越えて、いつでもどこからでもお互いのデータベースにアクセスできる環境がほしい」

 
パソナキャリアアセット
経営企画室長 斎木洋成氏
 

 営業担当者からの要望に応えて、パソナキャリアアセットでは、まずWebベースのグループウェアや営業支援システムの導入を検討した。ところが、これらの汎用アプリケーションは営業担当者には受け入れられなかった。というのも、これまで積み上げてきた独自の情報管理スタイルにまったく合致しなかったからだという。

 「再就職支援の営業活動というのは、定型情報の入力や一般的なプロセス管理でカバーし切れるものではないんですね。顧客企業との商談の中で生じる微妙なニュアンスをどうやって拾い上げるか。細かな言葉の端々に表れる雰囲気、しぐさや態度などといった計量化できない部分も情報としてデータベース化していくには、文章中心の自由入力欄をどれだけ活用できるかにかかっています。こういった繊細な情報を企業内で共有できているところがパソナキャリアアセットの強みなのですから、システムがこれを阻害しては本末転倒です」と、パソナキャリアアセット 経営企画室長 斎木洋成氏は語る。

 このように特定業務に特化した情報管理には、自由度の高いこれまでの商談管理システムでなければ使えない。また、高度な交渉力や情報管理能力を必要とするため、同社の営業担当者は長い経験を積んだベテランが多いということもあり、新システム導入で大幅なユーザービリティの変更が生じた場合、営業担当者への教育コストも無視できなかった。つまり、同社にとっては、システムのイメージは従来のままにWebアプリケーション化することこそがソリューションだったのである。

  1/3

 INDEX

リッチクライアント導入事例(2)
Accessの操作感を再現した“OpenLaszlo”
Page1
拠点間での情報共有が困難だったクライアント/サーバ型商談管理システム
  Page2
Flexなみの機能を評価してオープンソースのOpenLaszloを選択
  Page3
従来と変わらぬ機能のアプリケーションをWeb上で実現したOpenLaszlo




HTML5 + UX フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

HTML5+UX 記事ランキング

本日 月間