Insider's Eye

急速に拡充するリアルタイム・コミュニケーション製品群

―― IM、VoIP、会議サービス製品がリリース・ラッシュに ――

Peter Pawla
2005/04/28
Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2005年5月号 p.34の「急速に拡充するリアルタイム・コミュニケーション製品群」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Microsoftのリアルタイム・コラボレーション部門(Real-Time Collaboration Business Group)は、2005年前半に企業向けインスタント・メッセージング(IM)およびWeb会議サービス製品のメジャー・アップデートを予定していることを発表した。AOL Instant Messaging(AIM)やYahoo Messengerなどの公衆IMサービス、Microsoftの企業向けIM製品「Live Communications Server」とをつなぐ新サービスなどの導入が予定されている。

 また、Windows Messengerクライアントの後継となる新しいクライアント製品「Office Communicator 2005(開発コード名:Istanbul/イスタンブール)」や、Web会議サービス製品「Live Meeting」の新バージョンも提供される予定だ。同社はこの一連のアップデートにより、成長が期待されるリアルタイム・コミュニケーション/コラボレーション製品市場でのシェア拡大を図っている。

公衆IMネットワークの相互接続を可能に

 Microsoftは、Live Communications Server2005(以下LCS 2005)と主要な公衆IMネットワークとの安全な相互接続を実現するという計画を着実に進めている※1。相互接続が可能になることで、企業のIM導入を妨げていた大きな要因が1つ解消されることになる。2005年4月に運用が開始されたサブスクリプション・サービス「LCS Public IM Connectivity(PIC:パブリックIM接続機能)」を利用すれば、LCS 2005の組織間連携の管理機能を使用して、AOLのAIMおよびICQ、Yahoo Messenger、MSN Messengerの各IMサービスのLCSゲートウェイを連携できる。LCSユーザーは、各企業の独立性やセキュリティを確保しながら、これら3つのサービスを利用して連絡先(メンバー)のプレゼンス状態(オンラインか否かなど)を確認したり、メッセージを交換したりできるようになる。また、LCSが提供するメッセージのアーカイブ機能も利用できる。しかし、初期リリースの時点では、IMサービスの連携ネットワーク上でLCS 2005の音声、画像、データ共有機能およびWindows Messengerクライアントは利用できない。これらの機能は、各企業のファイアウォール内か、仮想プライベート・ネットワーク接続上で使用する場合にのみ有効である。

※1 Microsoftのリアルタイム・コラボレーション製品の詳細については、Microsoft Office Real-Time Collaboration(英語)を参照。

 LCSの相互接続機能は、上記3つのIMサービス間の完全な相互運用性を実現するわけではないが、企業向けIM市場においてMicrosoftが優位に立つことは必至だ。ただし、この相互接続性実現のために、LCS 2005の利用に際しては、年額で1ユーザーあたり13〜15ドルの追加費用が必要になる。この収益のほとんどは、これらの3つのサービスに支払われるロイヤリティに当てられる。

Office Communicator 2005――強力なVoIPクライントに

 Office Communicator 2005は現在、ベータが終了し、2005年夏前の出荷に向けた準備が進められている。Windows 2000以降のOSにバンドルされているWindows Messengerクライアントと比較して、Office Communicator 2005は以下の点が優れている。

●音声通話サポート
 Office Communicator 2005は、Windows Messengerよりもはるかに機能的なVoIP(Voice over IP)クライアントになる見込みだ。LCS 2005とMicrosoftのパートナーが提供するPBX(Private Branch eXchange:構内交換機)と組み合わせて利用すれば、公衆電話回線やPBX内線に電話をかけることができる。また、Communicatorクライアントだけでなく、PBX内線、公衆電話回線、携帯電話からも、プレゼンス情報を確認できる。PBXゲートウェイとMCU(多地点接続装置)などパートナーが提供するほかのデータ通信機器を併用すれば、音声通話の保留や保留解除、転送が可能だ。また、ボイス・メールへの転送、VoIPユーザーおよび公衆電話交換網(PSTN)またはPBXユーザーとの電話会議、複数ユーザーによるアプリケーション共有も行える。そのほか、Communicatorクライアントは、より効率の良いWindows Media 9ベースの音声コーデックもサポートする。

●統合されたユーザー・インターフェイス
 デザインは抜本的に変更され、Active Directory(AD)、Exchange、Outlook、およびMicrosoftのWeb会議サービス製品「Live Meeting」との連携が強化される。主な機能としては、AD、Exchange、Outlookからアドレスを検索する機能や、Exchangeのスケジュール情報を基にしたプレゼンス情報の設定といったルール設定機能などがある。また、簡単なテキスト・メッセージを作成してほかのユーザーにより詳しいプレゼンス情報を伝える機能も提供され、例えば、「4月1日まで休暇。不在中はjdoe@XXXXX.comに連絡を。」というメモを残すことができる。

 LCS 2005およびPICがMSNの公衆IMサービス.NET Messenger Serviceと連携するため、CommunicatorクライアントはWindows Messengerと異なり、MSN .NET MessengerのIMプロトコルをネイティブにはサポートしない。従って、ユーザーが.NET PassportとADの2種類のIDを持つ必要がなくなり、会社側はユーザーの公衆IMサービスへのアクセスを制御しやすくなる。また、CommunicatorではExchange 2000 IMプロトコルもサポートされなくなる。現在では、Exchange 2000 IMプロトコルに代わり、LCSが採用しているSIP(Session Initiation Protocol)やSIMPLE(SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)が利用されるようになっている。

 Communicatorの価格やライセンスに関する情報は発表されていないが、Windows Messengerと異なり無料では配布されず、単体製品として販売されるか、Officeにバンドルされる可能性が高い。Communicatorと同等の機能を持つWebクライアントと、LCS 2005用のWindows CEクライアントおよびWindows Mobileクライアントが、Communicatorの後にリリースされる予定だ。

LCS 2005 SP1――新しいプレゼンス機能

 2005年4月、MicrosoftはLCS 2005 SP1をリリースする。SP1では、通常の修正プログラムだけでなく、新機能も提供される予定だ。また、PICおよびCommunicatorを利用するには、このLCS 2005 SP1が必須となる。SP1の新機能には、以下のものがある。

●プレゼンス情報の拡張
 SP1では、LCS 2005に保存できるプレゼンス情報が拡張される。Communicatorの音声接続番号や状態情報のほか、より詳しいプレゼンス情報を伝えるためのテキスト(メモ)も保存できる。

 また、新しいプレゼンス状態として「do not disturb(応答不可)」が追加された。これは、ユーザーがオンラインではあるが応答できない状態であることを示す。

●スピムの制御
 電子メールと同様に、IMユーザーにも営利目的の不要なメッセージが送りつけられる可能性がある。SP1には、このいわゆるスピム(SPIM:IMを介して送られるスパム)を阻止する機能がいくつか盛り込まれる(機能の詳細は不明)。PICを導入する場合は、これらの機能は特に重要だ。

Live Meeting 2005――Web会議機能を底上げ

 Web会議サービス「Live Meeting」はアップデートされ、名称がLive Meeting 2005になった。Live Meeting 2005を使用すると、例えば、音声テレビ会議の一環として、Webを介してプレゼンテーションを行ったり、出席者のフィードバックを得たりすることができる。Live MeetingのようなWeb会議サービスは、会議のための出張を省く手段として、着実に支持を集めてきている。Live Meeting 2005では以下の点が強化されている。

●すべての印刷可能ドキュメントを表示
 これまでLive Meetingを介して出席者に提示できるファイルはPowerPointスライドのみだったが、Live Meeting 2005ではAdobe Acrobatドキュメントを始め、あらゆる印刷可能ドキュメントを提示できる。PowerPointファイルについては、画面の切り替えやアニメーションなどのエフェクトが有効になる再現性の高いスライド・ショウを実行できるようになった。

●会議通話の制御
 発表者やほかの出席者と会話をする必要がある場合は、従来どおり別の音声会議サービスを併用しなければならない。しかし、Live Meeting 2005では、MCI、BT、InterCallなどの通信会社の音声会議サービスを利用して会議を行う場合、Live Meetingのユーザー・インターフェイスから出席者の会議通話の状態(どの出席者が接続しているかなど)を確認したり、出席者の音声通話を有効または無効にしたりできる。

●VoIPによる音声配信
 前のバージョンと異なり、Live Meeting 2005では、Managed Event Servicesを利用することなく、インターネットを介して発表者の音声をストリーミング配信するオプションが組み込まれる(Live Meeting では、Managed Event Servicesにより、関連パートナーのストリーミング・サービスが利用できるようになってい た)。

●Officeとの連携強化
 Office 2003アプリケーションとの連携が強化される。例えば、Live MeetingのセッションをOfficeアプリケーションから開始できるようになる。また、Outlookとの双方向の同期機能を提供するプラグインも機能強化され、会議のスケジューリングやオフライン時であっても会議出席依頼を出せるようになる。出席を了承すると、会議および接続情報が自動的に出席者の予定表に書き込まれる。

●サポート言語の追加
 同一会議内での複数言語利用をサポートするローカライズ版として、中国語(繁体字および簡体字)版、英語版、フランス語版、ドイツ語版、日本語版、韓国語版、スペイン語版が、新たに提供される。

 Live Meeting 2005の価格は、据え置かれている。

2006年もWeb会議機能の強化を継続

 Microsoftは2006年にも、LCSとLive Meetingの会議機能の強化を予定している。

●Live Meeting 2006
 双方向の音声および画像通信機能がサポートされる予定だ。出席者は会議中に、別の電話回線を利用しなくても直接インターネットを介し、ヘッドセットとWebカメラを使用して発表者やほかの出席者と会話できるようになる。

●LCS 2006
 Live Meeting 2006と同様のグループ会議機能が組み込まれ、Live Meetingとの連携が強化される。LCS 2005では3者以上の間で通話や画像通信、データ共有を行うには、サードパーティの多地点接続サービスを追加する必要があったが、LCS 2006ではこのような有料サービスを利用しなくても、Live Meeting 2006の会議機能の多くを利用できるようになる。End of Article

[コラム]
IM、VoIP、会議サービス製品のロードマップ

 2005年は、Live Communications Server(LCS)とLive Meetingのいずれの製品にも、大きなアップデートが予定されている。まず、2005年4月には、PIC(パブリックIM接続機能)サービスが導入される予定だ。このサービスを利用すると、LCSと公衆IMサービス(MSNの.NET Messenger ServiceやAOL IM、Yahoo Messengerなど)間での安全なインスタント・メッセージング(IM)を実現できる。PICを利用するには、同時期にリリースが予定されているLCS 2005 SP1が必要になる見込みだ。

 2005年夏には、新しいOffice Communicatorクライアント(開発コード名:Istanbul)がリリースされる予定である。同クライアントは無料のWindows Messengerクライアントと比べて、特に音声通話と一般の電話システムへの接続性が優れている。リリース形態は、Windows Messengerと異なりWindowsにバンドルされるのではなく、Office Systemアプリケーションの1つとして提供される可能性が高い。

 Live Meetingも2005年3月にメジャー・アップデートがリリースされた。新しいLive Meetingでは、Officeとの連携強化や、サポート言語の追加などが行われている。

 2006年には、Live Meetingに双方向のインターネット通話およびインターネットの音声およびビデオ画像の通信のサポートが追加される。また、Live Meetingの会議機能がLCSに組み込まれる予定だ。LCSに会議機能が組み込まれれば、2005年12月31日にメインストリーム・サポートが終了になるExchange Conferencing Serverの穴を埋めることができるだろう(有償の契約サポートを含め、Exchange Conferencing Serverの延長サポートは、2010年12月31日に終了予定)。

 
Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。

関連リンク
  「Office Communicator 2005」および「Live Communications Server 2005のアップデート版」の発表に関するニュース・リリースの抄訳(マイクロソフト)
     
 「Insider's Eye」


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