[運用] Web Platform Installerによる速攻Webアプリケーション・インストール術― WordPressやXOOPS Cube Legacyも10分で簡単にインストール ― 1.Web Platform Installer 2.0の概要 マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部開発ツール製品部 鈴木 祐巳 2010/02/18 |
オープソースWebアプリ―ケーションを簡単にセットアップする「Web Platform Installer 2.0」とは
2009年10月、マイクロソフトはWeb Platform Installer 2.0(以下、WebPI)をリリースした。WebPIを一言で表現すれば、Web開発に必要なサーバ群(IISやSQL Serverなど)やコンポーネント、開発ツール、オープンソースWebアプリケーションを、簡単にインストールすることを実現するWindowsアプリケーションである。従来はオープンソース系のアプリケーションを利用しようとすると、自分で各サイト(アプリケーションやデータベース、PHPなどのスクリプト・エンジン)をチェックして最新のパッケージを入手し、それぞれのインストール手順に従って準備をする必要があった。インストールに先立って別のパッケージの準備をしたり、設定を済ませておいたりする必要があるなど、Windows OS+マイクロソフト製品だけを扱っていた管理者にとっては必ずしも容易な作業ではなかったといえる。そこでこのような一連の作業を自動化し、パッケージの入手からインストールまでをほぼ完全に自動化させるのがこのWebPIである。例えばオープンソースのBlogシステムであるWordPressをたった10分でインストールすることも可能である。本稿では、このWebPIの使い方について解説する。
- Microsoft Web Platform Installer 2.0(Microsoft /web)
■技術的に考えた場合のWebアプリケーションの動作
インターネット向けのWebソリューションを考える場合、システム構築のコスト削減や開発期間短縮を考えるうえで、オープソースWebアプリケーションの活用は、常に検討すべき項目であることは間違いない。実際、多くのWebサイトがオープンソースを活用して構築されている。
オープンソースWebアプリケーションを実行する環境としては、LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP/Perl/Pythonで構成されるアプリケーションの総称)が利用されることが多い。すべてオープンソースの組み合わせだ。そのため、Windows OS上でオープンソースを利用することは、何となく違和感を覚える方もいるだろう。しかし技術的には、OS、Webサーバ、データベース、アプリケーション実行エンジンの4つのスタックに分けて考えられる。
Webアプリケーションのスタック |
各スタックは、ある程度独立しているので、オープンソースWebアプリケーション利用時にも、すべてにおいて商用ソフトウェアを使うことは技術的には不可能なことではない。
■Windowsプラットフォームでオープンソースを利用するメリット
実際には、オープソースWebアプリケーションの多くは、Linux/Apache/MySQLの組み合わせ、つまりLAMP上で動作させることが多いと思う。LAMPで動作させるのは、以下の理由が挙げられるはずだ。
- コストを安価にするために無償で利用できる組み合わせで構築したい
- 実績
- アプリケーション自体がLAMPサポートをメインとしている
しかし、Windows OS上で利用するメリットや要望も、実際の声としてあるのも事実である。例えば、オープソースWebアプリケーションを基本にカスタマイズするような場合、実際に作業するPCの多くはWindowsマシンで、そのマシン上でアプリケーションの実際の動きを確認する場合や、すでに運用しているWindows Serverがあり、そのサーバ上でアプリケーションを実行したい場合などが考えられる。
■実は安価なWebサーバ向けWindows Serverが存在する
また蛇足だが、新規にWebサーバを導入する場合、コスト的な観点からもWindows Serverを利用する方が、商用Linuxを利用するよりも安価になる場合がある。マイクロソフトはWindows Server 2003以降にリリースしたサーバOSには、利用用途をWebサーバに特化したエディションを用意している。現在発売されているのは、Windows Web Server 2008 R2というエディションで、かなり安価であり、かつ、クライアント・アクセスライセンス(CAL)と呼ばれる追加ライセンスが不要というメリットがある。なお、Webサーバとして利用する場合のライセンスに関する詳細については、「マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項:Windows Web Server 2008」を参照してほしい。
- Microsoft Windows Server 2008 R2 発売に向けた製品体系、参考価格および発売日を発表(マイクロソフト プレスリリース)
- マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項:Windows Web Server 2008(マイクロソフト)
■Windowsセキュリティの現状
Windows Server 2008のセキュリティには問題があるのではないか? と過去の経験から思われている方もいるかもしれない。確かに、Windows 2000に搭載されているWebサーバであるInternet Information Server(IIS)をターゲットとしたNimdaやCode Redの経験から、Windows OSはWebサーバとして利用するにはセキュリティ的に問題があると考えるIT技術者も少なくない。しかし、マイクロソフトが2002年に宣言したTrustworthy Computing以降にリリースされた製品の脆弱(ぜいじゃく)性は、宣言以前と比較にならないほど減少しており、また、Windows Updateという仕組みにより、常に最新のOS環境を保つことができるようになり、Secure by Defaultという製品戦略(従来はより便利にという方向だった)により、以前とは比較にならないほど、Windows Serverの安全性は向上している。
Web Platform Installer 2.0とは
前置きが長くなってしまったが、WebPI についての説明に入ろう。繰り返しになるがWebPIは、Windows OS上に、Webアプリケーション開発環境を整えるための、Windowsアプリケーションである。WebPIを使ってインストールできるのは、以下のとおりである。
- Webサーバ(IIS自体やIISのアドインなど)
- フレームワークやランタイム(.NET FrameworkやPHP実行エンジンなど)
- データベース(SQL Server Express、MySQLなど)
- 開発ツール(Visual Web DeveloperやSilverlight開発アドインなど)
- Webアプリケーション(WordPressやXOOPS Cube Legacyなど)
特に興味深いのは、Webアプリケーションのインストール機能だ。何もアプリケーションやコンポーネントがインストールされていない素の状態のWindows OSに、例えばPHPベースのWebアプリケーションをインストールしようとすると、Webサーバ、PHPランタイム、(場合によっては)MySQLなどを事前にセットアップする必要がある。しかしWebPIを利用すると、インストールしようとしたアプリケーションに必要なコンポーネント・ツール群を、同時にセットアップできるのだ。手動でインストールする場合には、インストール順序を気にしたり、環境構築のために、テキスト・ベースの設定ファイルを編集したりする必要があるが、WebPIを使うとそういった作業は一切なくなるか、もしくはGUIベースでパラメータを入力するだけで、あっけないほど簡単に、Webアプリケーションをインストールできる。
カテゴリ | 名称 |
Blog | BlogEngline.NET |
WordPress(英語) | |
WordPress(日本語) | |
DasBlog | |
Subtext | |
AtomSite | |
TextCube | |
Mayando | |
Content Management System | Umbraco |
XOOPS Cube Legacy(ホダ塾) | |
mojoPortal | |
DotNetNuke | |
Kentico CMS for ASP.NET | |
Acqira Drupal | |
SilverStripe CMS | |
SugarCRM | |
Sitefinity Community Edition | |
Moodle | |
Joomla! | |
eCommerce | nopCommerce |
Galleries | Gallery |
Gallery Server Pro | |
Tools | ResourceBlender.NET |
nService | |
Amplifeeeder | |
Wiki | ScrewTurn Wiki |
Web Platform InstallerでインストールできるWebアプリケーションリスト(2010年1月26日現在) |
Web Platform Installerと連動するWeb Appギャラリー
WebPIで表示されているオープンソースWebアプリケーションは、「Microsoft /web」サイト配下にある「Microsoft Web Appギャラリー」とリンクしている。Webページ上に[Install]というボタンがあるが、WebPIがセットアップされているWindows OS環境下から、このボタンをクリックすることで、WebPIが自動起動され、あたかもWebサイトからWebアプリケーションがインストールできるようなイメージとなる。
- Microsoft Web Appギャラリー(マイクロソフト)
Web Appギャラリーの画面 |
[カテゴリ]タブをクリックすると、ブログ・コンテンツ管理(CMS)/eコマース/ギャラリー/ツール/Wikiの各カテゴリで20種類を超えるアプリケーションがリストされている。 |
Web Appギャラリーでは、ブログ・コンテンツ管理(CMS)/eコマース/ギャラリー/ツール/Wikiのカテゴリに分かれ、20種類を超えるオープソースWebアプリケーションがリストされている。その中には、日本語版アプリケーションとして、BlogシステムのWordPressとCMSのXOOPS Cube Legacyなども含まれている。
■WebPIの動作の仕組みとWeb Appギャラリーへのアプリケーション投稿
WebPIでリストされているアプリケーション群は、マイクロソフト製ではないものも含まれる。PHPのランタイムや、オープソースWebアプリケーションは当然ながらマイクロソフト製ではない。また、WebPIにリストされているオープソースWebアプリケーションは、マイクロソフトが独自に用意したものではなく、開発元がWebPI用にカスタマイズしたものだ。また、WebPIからの各種インストールについても、マイクロソフトが提供する製品以外は、提供元のサイトからダウンロードする。アプリケーション提供者は、WebPI経由でインストールできる形式の圧縮ファイルを用意し、セットアップに必要な情報が記述されているXMLファイルを、Web Appギャラリーに投稿する仕組みとなっている。
Web Platform Installerの仕組み |
例えば、この後インストールするCMSの「XOOPS Cube Legacy(XCL)ホダ塾ディストリビューション(※)」は、WebPIがリリース時には、Web Appギャラリーにリストされておらず、また英語版のXCLもギャラリーに含まれていない。にもかかわらず、XCLがリストされているのは、XCLを利用したWebシステムの構築企業である株式会社RYUSが、WebPIおよびWeb Appギャラリーに適合した形式にXCLを作り替えて、RYUSのWebサイトより配布しているからだ。アプリケーションの投稿手法については、TechNetの「Windows Web アプリケーション ギャラリー」で解説されている。
- Windows Web アプリケーション ギャラリー(マイクロソフト TechNet)
※XOOPS Cube Legacyホダ塾ディストリビューション XOOPS(eXtensible Object Oriented Portal System。「ズープス」と読む)は、コミュニティ・ポータル・サイトを構築するためのオープンソースのCMS(Content Management System)システムの1つ。掲示版やブログなどを含んだWebサイト構築などに使われる。充実した機能や豊富なテーマ/パッケージ、高い拡張性などで、広く普及している。XOOPS Cube Legacy(ズープス キューブ レガシー)はXOOPSから派生したバージョンの1つであり、日本でよく使われている。このXOOPS Cube Legacyに対して、よく使われる追加モジュールを組み合わせて、すぐにサイト構築などに使えるようにパッケージ化したものがXOOPS Cube Legacyホダ塾ディストリビューションである。 |
WebPIの使用例
WebPIを使うと、実際にどのくらいの手順で作業が完了するのか気になるだろう。以下に筆者が撮影したWebPIによるWordPressのインストール例の動画を挙げておくので、参考にしていただきたい。こちらは、.NET Framework 2.0がインストールされたWindows XP Professional上に、IIS、PHPランタイム、MySQL、WordPress日本語版などをセットアップし、ダウンロード時間も含めて10分以内で終了している。
Web Platform Installer を使ってWordPressを10分でインストール |
INDEX | ||
[運用]Web Platform Installerによる速攻Webアプリケーション・インストール術 | ||
1.Web Platform Installer 2.0の概要 | ||
2.WebPIによるWebアプリケーションのインストールの実際(1) | ||
3.WebPIによるWebアプリケーションのインストールの実際(2) | ||
「 運用 」 |
- Azure Web Appsの中を「コンソール」や「シェル」でのぞいてみる (2017/7/27)
AzureのWeb Appsはどのような仕組みで動いているのか、オンプレミスのWindows OSと何が違うのか、などをちょっと探訪してみよう - Azure Storage ExplorerでStorageを手軽に操作する (2017/7/24)
エクスプローラのような感覚でAzure Storageにアクセスできる無償ツール「Azure Storage Explorer」。いざというときに使えるよう、事前にセットアップしておこう - Win 10でキーボード配列が誤認識された場合の対処 (2017/7/21)
キーボード配列が異なる言語に誤認識された場合の対処方法を紹介。英語キーボードが日本語配列として認識された場合などは、正しいキー配列に設定し直そう - Azure Web AppsでWordPressをインストールしてみる (2017/7/20)
これまでのIaaSに続き、Azureの大きな特徴といえるPaaSサービス、Azure App Serviceを試してみた! まずはWordPressをインストールしてみる
|
|