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IFRS最前線(21)

NY上場にIFRSを採用した三井住友FG、その理由は

原 英次郎
ダイヤモンド・オンライン客員論説委員
2011/8/22

2010年11月に、ニューヨーク証券取引所に上場を果たした三井住友フィナンシャルグループ。予想に反してIFRSの方が資本、純利益とも日本基準を上回った。その理由は何かを読み解いてみる。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年12月28日)。

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繰延税金資産が
大きく増えた理由

 もう1つ、両基準の違いが大きかったのが、繰延税金資産(表の9)である。簡単に言うと、繰延税金資産とは、その期には税務上は損金として認められないが、将来、損金として認められると、それだけ課税所得が減ることによって、税も減らす効果がある費用のこと。

 税を減らすと見込める分を、繰延税金資産として、資産に計上する。そして、実際に損金として認められ、税の減額が実現すると、その分、繰延税金資産を減らす。

 日本の場合は、繰延税金資産の計上限度額は、将来の最長でも5年間にわたって発生する課税所得の範囲内をメドにするとされている。これに対して、IFRSでは、将来、確実に収益(課税所得)をあげることができるのであれば、期間を限定せずに、繰延税金資産を計上することができる。

 つまり、IFRSでは、繰延税金資産の計上のための見積り期間に上限がない。その結果、2010年3月期では、IFRSの方が日本基準より繰延税金資産が大きくなり、これに対応して資本(主に利益剰余金)が5328億円押し上げられた。

 IFRSでは、過去の年度に税効果の利益剰余金の押し上げ分を既に取り入れた形になっているが、日本基準でも一定期間内での回収(税金の減額)が見込まれるようになり、繰延税金資産の計上が可能になると、結局はIFRSとの間の資本の額の差異が縮小する。

 今回公表された両基準の違いに基づく資本、当期純利益の差、および新たな概念である包括利益を、どう評価したらよいのか。2010年10月21日に、三井住友FGがIFRSベースの財務諸表を公表しても、株価は上にも下にも大きな変動は示さなかった。資本の差額、約5000億円を大きいと見るのか、小さいと見るのかも含めて、市場もまだ、両者の違いを消化しきれていないと言えるだろう。

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