年末商戦の目玉は引き続きPC、だが…

2000/10/24
(10/20/00、 12:02 p.m ET) By Mark Hachman、 TechWeb News

 今年のクリスマスにPCを購入する人はいるのだろうか?もしいるとすれば、それはすでにPCを持っている人だろう。

飽和状態の米国PC市場

 PC市場が一層の飽和度に達する中、ベンダー各社は今年の年末のマーケットはいわゆる「2台目」PC、もしくは子どもを含む家族のための予備マシンが主導すると予想している。

 そこで、PCメーカー各社は、これらのPCにホームネットワーキングパッケージを組み合わせたり、特定のソフトウェアやハードウェア周辺機器を組み合わせて、ビデオ編集やPCオーディオをの流行を利用しようとするだろう。だが、決め手となる売れ筋PCはないという。

 アナリストやOEM各社の幹部によると、家庭用に2台目のPCを購入するのに、コンシューマーは必ずしもバーゲン品を探し回るわけではないという。ホームPCの購入者は直接子どもに与えるマシンとしては必ずローエンドのもの購入すると見ているが、その半分は自分用にハイエンドのマシンを購入して、古くて遅いマシンを家族全員用として使うと見ている。

 米国の小売りPCの売り上げを追跡調査するPC DataでPCアナリストを務めるStephen Baker氏は、「現時点では、ほとんどの場合が2台目のコンピュータもしくはアップグレードのための購入になると思われる。米国市場は現時点で50〜60%にまで飽和している。これらの新しいカスタマーを掘り起こすことは非常に難しくなりつつある」と語った。

 需要の落ち込みが指摘されるなか、調査会社のIDCは、米国の年末のPC販売は依然として昨年よりも高い割合で伸びると予想している。米国のPCメーカーは1999年の第4四半期に1250万台のPCを販売したが、これは1998年比で15.7%増だった。IDCは今年、米国のPC販売が昨年同期比で17.1%伸びて1460万台に達すると予想している。

 PCの売り上げは10月に入ってから徐々に伸びるが、年末商戦は感謝祭の翌日である「暗黒の金曜日」に幕を切ると予想されている。Gatewayが先日行った第3四半期決算の電話会議では、CFO(最高財務責任者)のJohn Todd氏が、同社の繁栄シーズンは11月15日に始まるとしている。

値段より機能を重視する消費者

 PCメーカーは、5年前頃から始まったPCの年末商戦を完全に把握しているといわれている。Hewlett‐Packard(HP)やCompaq Computerなどの小売りベンダー各社は、魅力的なデザインや付加価値を付けてベンダー各社を惹きつけ、直販ベンダーのOEM各社は独特の買い物客を魅了する。

 たとえば、Dellのホーム/小規模企業向け製品担当技術エバンジェリスト、Brian Zucker氏によると、Dell Computerの従来の強みは、品質の高いPCを低価格や優れたサポートと組み合わせて販売することだったという。

 「何が欲しいのか分かっているならばわれわれから購入してもらいたい」と語るZucker氏によると、Dellは今年、コンシューマーは家庭用に2台目PCの購入を検討中と見ており、同社はワイヤレスハブで2台をネットワーク化することをコンシューマーに提案する方針だという。しかし、このソリューションは高価なものになる。ワイヤレスアクセスポート、3枚のPCアドオンカード、そして関連ソフトウェアが付属する3Comのワイヤレス「スターターキット」はDellのWebサイトで1328ドル95セントとなっている。これは、Pentium III/800 MHzマシンのDimension 4100の本体価格(モニタ別)よりも高い。

 Dellの経営陣はさらに、サラリーマンがオフィスにあるDellのPCのパフォーマンスに感動し、同じようなDimensionデスクトップやほかのモデルを家庭用にも購入してくれることに期待している。Dell Dimensionsの早期購入者は10月27日まで150ドルのディスカウントキャンペーンを活用することができる。

 だがアナリストによると、店内をさまようコンシューマーの興味をつかむのは一般的に小売りPCベンダー各社の役目になっているという。そして、この点に関してHPのスポークスマンは、「ビジネスの推進力となるのは必ずしも最新かつ最高の技術ではない」と語った。

 アナリストは、1000ドル未満PCの市場もまずまずだが、コンシューマーは喜んで「良いものにはもっとお金を出すだろう」という。「バリューPCの真価は799ドル近辺にあるが、1000〜1300ドルの価格帯の商品も人気を獲得しつつある」(Baker氏)

 1000ドルPCは昨年の6月以来、米国小売市場の約3分の1を安定して占めているが、600ドル未満の市場は42%から22%へと劇的に縮小した。この数字は、直販ベンダー各社の純粋なスピードに対する心理ではなく、価値と仕様を強調するというPC小売りベンダーのメッセージの発展が役立っている。

 HPのホームPCシリーズで国際プロダクトマネジャーを務めるEric Bone氏によると、今年のHPの営業努力は3つのメッセージに集約されるという。同社では引き続き、インターネットにアクセスするための最高の手段としてHPマシンを売り込んでいく。

 「今日、人々がPCを購入する誘因の第1位は依然としてインターネットへのアクセスなのだ」(Bone氏)

 今では必須となった柔軟なカラーラインナップで引き続きカスタマーを惹きつけながら、HPはデジタルイメージング(静止画や編集可能なビデオ)も売り込んでいる。

 PCベンダー各社は、カラーラインナップをはじめ、Apple ComputerのiMacのセールスポイントを餌食にしようとしていることを率直に認めている。AppleはAirMacワイヤレスネットワーキングハブやiMovieムービー編集ソフトの普及でも先鞭を付けている。ところが、この市場を開拓したAppleが問題を抱えているのだ。同社は9月終わりに、重要な買い物シーズンに向けて売り上げの鈍化を警告した。ここ最近の数週間でペースが回復したかどうかは明らかではない。

 一方のHPは、既にPinnacle Studio DVソフトウェアを既存のPavilionデスクトップに搭載して販売している。Bone氏によると、基本的なデジタルイメージング機能をサポートするWindows Meに、すべてをパッケージングすることが同社の目標だという。

 HPのMusicMatchソフトウェアも コンシューマー向けのPCオーディオに対応するようデザインされており、同社はオンラインデジタル写真共有用のソフトウェアを提供している。同社はまた、ユーザーが自分のCDを焼けるようCD-Rドライブの推進および搭載を一貫して進めてきた。

ますます重視されるデザイン性

 Bone氏は外観も重要だと語る。「コンシューマーにとって、いかにきょう体のデザインが重要かということは1年ほど前に認識したつもりだ。もし価格が同じで、スピードなども同レベルであれば、コンシューマーは見かけが良いきょう体を選ぶだろう」(Bone氏)

 Gatewayは、OfficeMaxの店舗内のキオスクに置かれ、従来の小売店舗に近いGateway Countryという店舗を自社で構えるとともに、自社で直販ビジネスも展開するというユニークな立場にある。HPやDellなどのベンダー各社同様に、Gatewayもデジタル音楽革命を中心に狙いを定め、既に定評のあるPhotowareやMusicwareといったバンドル製品を売り込んでいる。

 同社はGateway Country店舗を利用してコンシューマーに購入前に製品を試すよう勧めていく。たとえば、Gatewayの店舗で開催された一連のPCゲームトーナメントは、同社の力を証明し、コンシューマーがソニーのプレーステーション2のようなゲーム機ではなく、ゲーム用にPCを購入することを納得してもらうのに役立つだろう。

 Gatewayのコンシューマー製品マーケティングディレクター、Mike Ritter氏は、「技術とハードウェアを提供するだけでなく、その背景にある長所の理解を助けることがわれわれの計画であり戦略だ」と語った。

 ベンダーによると、市場で特定のPCが成功を収める保証は全くないので、さまざまなストレージ、メモリ、マイクロプロセッサ、および周辺機器をうまく組み合わせて最も大きなカスタマーベースのグループを満足させるのだという。もし、Windows MEのニーズを満たすことが最大のカスタマーベースなら、結果的には各マシンは最低でも128MバイトのRAMを搭載することになる、ということだ。

 IDCのPCアナリスト、Roger Kay氏は、「依然として、コンシューマーは基本的にパフォーマンスか、PCの発展した利用法でPCの購入を決定すると思っている」と語り、購入者の大部分は依然として初めて購入する人々になると予測していることを加えた。「マルチメディアのパフォーマンスに関心を持つだろうが、フロントのアプリケーションのパフォーマンスを落とすことなくバックグラウンドアプリケーションを実行するパフォーマンスにも関心はあるだろう」(Kay氏)

Pentium 4の影響なし

 PC DataのBaker氏は、AMDとIntelベースのPCが半々近くでシェアを分け、ローエンドにおけるAMDのシェアも拡大するものと予想しているという。Advanced Micro Devices(AMD)は、同社の古くなったK6-2がIntelのCeleronとライバル視されていなかったため、ローエンドPCでは存在感が薄かった。

 同様に、アナリストやベンダー各社は、情報筋によって11月20日への正式な延期が伝えられたPentium 4の影響も少ないだろうという。ベンダー各社は、同チップはハイエンドの製品専用で、一部の超エリートユーザーにしか魅力はないのではないかと見ている。

 DellのZucker氏は、「われわれにとって影響は少ないだろう。これは、コンシューマーに販売する単なる1つの製品に過ぎない」と語った。

 GatewayのRitter氏は、「われわれはPentium 4をニッチ製品だと考えている」と語った。

[英文記事]
'Replacement' PCs to Dominate Holiday Sales

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