いよいよ始まるMSの控訴審、5つの焦点から分析

2001/2/27
(02/23/01, 8:51 p.m. ET) By Mary Mosquera, TechWeb News

 マイクロソフトと司法省との衝突が2月26日に激化する。この日、論戦を繰り広げる両者が7人の控訴裁判所判事にそれぞれの論拠を展開することになっている。

 両者の思惑は異なる。マイクロソフト側は、同裁判所がこの歴史的裁判に終止符を打ってくれることを期待しており、一方の各州や連邦政府の関係者は、世界最大規模のソフトウェアメーカーが少なくとも将来的には分割されることを期待している。

 判事が今週実際に審査するのは、マイクロソフトをアプリケーションの会社とOSの会社の2社に分割するという判決だ。これは、2000年6月7日に米国地方裁判所のThomas Penfield Jackson判事が下したものだ。

 控訴裁判所はその審査の中で、マイクロソフトに容疑がかけられている以下の3件の反トラスト法関連の違反についても調査する。

  1. OSの独占を維持するための不正行為
  2. インターネットブラウザ市場における自社の影響力を拡大するためOSでの独占的立場を利用
  3. カスタマーに選択権を与えない方法でのOSとInternet Explorerブラウザの抱き合わせ

 法律および経済の専門家全員がこれらに関連する問題に介入し、さまざまな意見を出してくれた。

■独占の維持

 ジョージ・メイソン州立大学法学部のErnest Gelhorn教授によると、独占企業に対して法が許容している行動範囲は、非常に漠然として明確ではないという。同氏によれば、独占企業による事業は、(1)過度に制限されるべきではなく、(2)商行為をおこなうための合法的な理由が必要、(3)企業の効率化が損なわれてはならない、という。だが、どこで一線を越えたのか、定義はどうなっているのか、などの点が不明瞭だとしている。

 Mayer Brown & Plattのパートナー、Donald Falk氏は、「マイクロソフトは自社の独占が過渡的なものだと語っているが、依然として90%以上の市場シェアを持っている」という。

 経済学者で、シンクタンクのHudson Instituteで規定調査ディレクターを務めるIrwin Stelzer氏は、「マイクロソフトは10年間も市場を独占してきた」という。マイクロソフトは、ハイテク市場は急速に変化するという特性があり、いつの日か自社の市場での力は弱まるだろうと主張しているが、「過渡的という言葉の定義はどこまで延長することができるのだろうか」と同氏は問う。

■ブラウザ市場独占の試み

 Gelhorn教授は、マイクロソフトが自社のOSの市場独占を利用してブラウザ市場も独占しようとしたとの嫌疑は不十分だと見ている。マイクロソフトはNetscape Navigatorの市場の中心部を奪ったかもしれないが、Netscapeがコンシューマーに食い込むチャンスを奪ったわけではないという。

■抱き合わせ

 Gelhorn教授によると、結局最も非難されている行為は、製品を抱き合わせて機能をまとめ、コンシューマーに共通したソフトウェアプラットフォームを提供したことであるという。「マイクロソフトの最も優れた技術革新は、必ずしも新技術を導入することではなく、コンシューマーにとって使いやすく技術をまとめたことだった」(Gelhorn教授)。

 Thaler Liebeler Machado & RasmussenのパートナーでComputing Technology Industry Association顧問弁護士のLars Liebeler氏は、例えば文書をコピーしてワードプロセッサに貼り付け、電子メールで送れるようにしたいというインターネットユーザーにとっては、製品の統合がメリットとなったと見ている。「この基準で考えると、政府の論拠が崩壊することはかなり明白だ」(Liebeler氏)

 是正措置と司法処置という、ほかの2つの重要な問題もこの週の裁判で審理されることになる。

■是正措置

 Gelhorn教授によると、マイクロソフトはその市場独占を合法的に獲得したが、裁判所は本格的な審問も行わずに同社の分割を命令したという。

 行動規制は通常、合法的な独占企業の反競争的商慣習を修正するために行われるものだ。その上で、もし控訴裁判所が分割命令を差し戻すような場合は、判事が審理を地方裁判所に差し戻して行動是正措置を委ねるだろうと予測する。「Jackson判事はかなり無遠慮に発言を繰り返してきた。Edwards裁判長がそれを認めることはおそらくなく、ほかの判事の手に委ねられることが最も可能性の高い結果だ」(Gelhorn教授)

 一方、Falk氏の見方は異なり、その裁判所が同社を細かいところまで規定して管理する必要がないために、分割の方が好都合かもしれないという。「これは、アプリケーションとOSの両方の分野にとって、競争を考える刺激になる」(Falk氏)

■司法処置

 マイクロソフト側は、Jackson判事がマスコミに発した偏見のかかったコメントにより、裁判手続きは台無しになったと主張している。Falk氏によると、司法処置の権限を持つと思われるEdwards裁判長は、この問題に熱心な関心を寄せると予想している。「裁判所がマスコミにコメントすることを支持する意見が多いとは思えない」し、問題はマスコミに話した内容ではなく、マスコミと会ったことをどの程度重視するかだという。

[英文記事]
Judges To Unravel Complex Microsoft Appeal

[関連リンク]
マイクロソフト

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Microsoft、分割命令に対し再び挑む (TechWeb/@ITNews)

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