人材育成セミナーで明らかになったエンジニアの条件は?

2001/4/25

 日本オラクルは、いかに優秀なITエンジニアの育成、確保を行うかを考える「IT化時代の人材育成」と題したセミナーを開催した。

日本オラクルの上席執行役員の佐藤武氏

 セミナーの冒頭、日本オラクルの上席執行役員 エデュケーションサービス本部長の佐藤武氏は、企業がエンジニアを育成するうえで問題となっている点を指摘した。佐藤氏が問題としてあげたのは、ITエンジニアに対する明確なゴールとキャリアパスの欠如、実践的でない座学中心の社員教育、行った教育の評価不足、継続的な学習の欠如、それにOJT(On the Job Training)の名を借りた放任主義の5つだ。

 この問題を克服するには、企業がITエンジニアに戦略的に技術を習得させる必要があると強調し、そのために目標の設定、分析、実行、評価というサイクルを作り出すことが重要だと、佐藤氏は指摘した。

 厚生労働省の職業能力開発局能力開発課長補佐 伊藤氏は、IT関連企業は、現在不足しているITエンジニアを確保するために、即戦力として中途採用で人材を確保していると分析。しかし、この行動が「個々の企業にとっては合理的な行動だとしても、転職者が業界をぐるぐる回っているだけで、経済全体として問題は解決されていない」と述べ、ITエンジニアの育成の必要性を説いた。

 人材の育成で企業が問題とすることの1つに、技術の急激な変化に社内教育体制が対応できないということがある。これに対して、米オラクル シニア・マネジャーのマイク・サープ氏が強調したのは、eLearningの活用だ。

 eLearningを利用すれば、従来よりも早く教育プログラムを作成可能で、すぐにトレーニングを開始できるという点だ。日々の技術革新の変化による内容の変更は、教育プログラムをモジュール化することで、一部のモジュールを修正することで、常に最新の技術教育トレーニングが実行できると力説した。

会場にいる参加者からも多くの質問が出されたパネル・ディスカッション

 ITエンジニアの評価で欠かせないことは、ITに関連する資格だ。セミナーの最後に行われたパネル・ディスカッションで話題となったのは、国家資格とベンダー資格の扱いだ。

 リコーシステム開発 取締役 高田氏は、「国家(非ベンダー)資格はあくまで技術の土台で体系的、汎用的なものであるのに対して、ベンダー資格は戦略性が高く、企業外部に対して当社がこれから何に注力するのかを明示するもので、実践的で旬の資格である」と語った。

 システム・インテグレーター(SI)によると、国家資格を社内での昇進条件としていたり、ベンダー試験などを取得した場合、奨励金などを一定期間給与に上乗せするようにしている。ただし、安易に受験させないように、合格した場合にだけ試験費用を企業負担にしたり、受験回数を制限するなどの工夫をしている。

 40歳代などのベテランのITエンジニアに挑戦してほしい資格としてSIがあげたのは、プロジェクトマネージャ試験、ISO9000の審査員資格のほか、今後試験が開始されるITコーディネータ試験であった。

 最後に、どのSIも触れていたのは、本当に欲しいITエンジニアは、経営判断ができ、顧客に提案でき、顧客と交渉できるような、テクニカル能力とヒューマン・スキルをあわせ持つ人材だという。

 オラクルでは、今回のセミナー参加者を当初100名と予定していた。しかし、実際には400名を超える参加希望者のため、会場を急きょ変更して開催した。400名以上という参加者の多さからわかるように、企業がどのようにITエンジニアを育成すればよいのか、真剣に悩んでいる姿が浮かび上がった。

(編集局 大内隆良)

[関連リンク]
日本オラクル
情報処理技術者試験センター
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